今回は『ホテルライクな家とは?モダンスタイルとの関係やつくり方を解説』というテーマでお話していきます。
コロナ以降、様々なテイストがSNSを通じて拡散されてきました。
有名なところで言えば「ジャパンディ」です。

日本テイストの中に北欧要素を加えた、そのようなテイストを「ジャパンディ」と言いますが、そういったテイストが流行っています。
また、部分部分にはなりますが、軒と天井の素材を統一して繋げてみたり、

コンセントやスイッチを極力目立たない位置に設置してみたり、

カーテンのない空間をつくってみたりなど、細かい部分を取り入れて、それぞれ思い思いのきれいな空間をつくってきたというのが、ここ数年の流れだったかと思います。
ただ一方で、ジャパンディをはじめとしたテイストは、どこか寂しくてシンプルすぎるという側面もあったわけです。
あとは単純に、そういうテイストを見慣れてしまったというのもあったと思いますが、だからこそここ最近流行っているのが、華やかさや豪華さのある「ホテルライク」とよばれるテイストになるわけです。

そのため「自分も新しく家を建てるんだったら、ホテルライクな空間にしたいな」と思われている方が増えているように思います。
ただ残念ながら、ホテルライクには明確な定義がないのです。
ですので、真似しようと思っても真似しにくいような、モヤモヤっとした感じになってしまうのです。
実はSNS上で拡散されている「ホテルライク」というテイストは、なんとなくの雰囲気でホテルライクらしいものをホテルライクと言っているだけなのです。
ですので今回は、そういう抽象的で曖昧な「ホテルライク」の本当の意味やつくり方を共有していきます。
インテリア様式は時代と地域の掛け算
「ホテルライクな空間をつくりたかったのに、全然ホテルライクになっていない」となることもあります。
まずは大前提として、「ホテルライク」というテイストは実は世の中には存在しません。
ネットミームなのです。
感覚で「ホテルライクっぽいもの」を「ホテルライク」と言っているだけなのです。
なぜなら、インテリアにおける様式、つまりはファッションでいう「〇〇系」というようなものは、その時の時代と地域の掛け算によってでき上がるものだからです。
これがどういうことなのかというと、例えばモダンスタイルとよばれるものは、モダニズム以降に世界中で流行ったものになります。
ですので、モダニズム以降の時代と世界中という地域の掛け算で成り立っています。
米国ミッドセンチュリー
1950年頃のアメリカで生まれたのが米国ミッドセンチュリーです。
そして、2000年代のブルックリン区で生まれたのが「ブルックリンスタイル」になって、日本の裏原ブーム時代に代官山で生まれたのが「カフェ風インテリア」となるわけです。
このような感じで、インテリアの様式というのは、その時代と地域の掛け算によってでき上がるものなのです。
ジャパンディ
最近流行っていたジャパンディは?という話も出てくると思うのですが、正直起源については諸説あります。
ただ一説によると、ジャパンディの起源は1860年代頃まで遡ると言われています。
このことは「Japandi Living」という海外の雑誌に掲載されていることなのですが、

具体的にお伝えをすると、1863年に鎖国を解いて間もない日本を訪れたデンマーク海軍のウィリアム・カーステンセンという人が、日本の文化に深く魅了され、帰国すると同時に自身の経験をもとに「Japans Hovedstad og Japaneserne」という本を発表したのです。

それを見た北欧のデザイナーたちは、まだ見ぬ日本の魅力を自ら確かめるために日本へと渡り、そこで日本独自のわびさびの美意識と、ミニマリズム、自然の素材、シンプルさを大切にするデンマークのヒュッゲな暮らしとの間に共通点を見いだして、以来、北欧のデザインは和の美学の影響を受け始めるようになったと書かれているのです。
「日本ってこんなに海外に影響あるの?」と感じた方もいるかもしれませんが、実際にデンマークを代表する家具デザイナー、ポール・ケアホルムは、日本の空間に馴染むような家具をつくっていたという話もあるくらいで、

それもあり、以前「ポール・ケアホルム展 in 京都」というのが「両足院」というところで開催されていたりもしました。

ポール・ケアホルム展は定期的に開催されていて、私も結構参加しているため、ポール・ケアホルム展のヴィンテージ家具や現行品を直接目にする機会が多いのですが、ポール・ケアホルムの家具は、どのテイストにも合わせられるような万能性があるのです。

しかも、海外の家具は大体外国人の体型に合わせてつくられたものになっていて、サイズが大きかったり、意外と座り心地が悪かったりするのですが、ポール・ケアホルムの家具は日本人の体型にもマッチしていて、とても使い心地がいいものになっています。
こういう経緯を知っていると、実はジャパンディというテイストは、海外発祥のものではなく、日本が海外に影響を与えた結果生まれたものというのがわかるのです。
こういう東洋の文化が西洋のデザインに影響を与えるということは、決して珍しい現象ではなく、例えば19世紀後半〜20世紀初頭にかけて、ヨーロッパでは日本の美術工芸ブーム「ジャポニズム」がフランスを中心に巻き起こりました。

そのさらに前の17世紀〜18世紀には、中国の美術様式である「シノワズリ」がヨーロッパを席巻し、今でもイギリスのウォールペーパーブランド「de Gournay」などがそのデザインを取り入れ続けています。

あとは、洋服でもLOUIS VUITTONの模様は、もともと日本の唐草模様がベースになっているという話も有名です。

そのような感じで、実は意外と日本は海外に影響を与えているのです。
何にせよ、インテリアの様式というのは、その時代と地域の掛け算によってでき上がるものになります。
ホテルライクという言葉が広がった理由
では、肝心のホテルライクは?という話なのですが、結論、ネットミームなのです。
ネットミームとは、インターネット上で拡散される画像・動画・テキストなどのコンテンツが、人から人に模倣・改変され急速に広まっていく現象を指す言葉なのですが、実はもう何年も前から、積水ハウスの賃貸部門であるシャーメゾンがやたらホテルライクというワードにこだわって、間取りの提案や設備仕様の提案をしていたのです。
例えば、このような感じのものです。


業界人からすると、いかにも積水ハウスの展示場によくあるテイストだなという感じなのですが、これをホテルライクとして、積水ハウス側はずっと昔から提案し続けてきたわけです。
これに加えて最近ですと、ヘーベルハウスも「FREX asgard」という新商品を出して、ホテルライク感のある内装ができることをPRしていたりします。

ヘーベルハウスはこの新商品を出したおかげで、最近すごく人気になってきています。
ただ、積水ハウスのテイストもヘーベルハウスのテイストも、厳密にはこれはホテルライクではなく、モダンなのです。
モダンスタイルなのです。
ホテルライクというテイストは存在しないわけです。
ではなぜ「ホテルライク」という言葉が誕生したのかというと、多分ですが、よくわかっていない住宅営業マンの説明を受けたお客さんが「あ、これがホテルライクというテイストなんだ」と、間違った解釈をしてしまって、その間違った解釈のまま「このテイストがホテルライクなんです!」と、いろいろな写真や動画をネットで拡散した結果それが定着することになった、ネットミームなのではないかと思っています。
この手の話は本当によくある話で、よくわかっていない住宅営業マンや、住宅系のインフルエンサーも「ホテルライク」と「ジャパンディ」がごちゃ混ぜになって説明していたりしますし、そもそもジャパンディが何かもわからず、雰囲気で説明をしていたりもします。
それもそれでアリなのかもしれませんが、解釈が曖昧ですと曖昧な内装にしかならないですし、見る人が見ると、内心「これはホテルライクでも何でもないテイストなんじゃない?」と思ってしまうわけです。
では、本当はどういうもののことを「ホテルライク」と言うのか、そして、皆さんが思い描くホテルライクは、どのようにしたらつくれるのか、それをこれから詳しく解説していきます。
ホテルライクの本当の意味とは
ホテルライクの本当の意味ですが、これは「ホテルっぽい内装」のことです。
そのままの意味です。
つまり、ホテルっぽい何かさえ室内に加えれば、それはもうホテルライクなのです。
「いやいや、そんなの言われても抽象的でわからん」という感じだと思いますが、実際これ以上の回答はないのです。
なぜなら「ホテルライク」とよばれる内装の正体は「モダンスタイル」だからです。
つまり、モダンスタイルを忠実に再現し、そこにどこかのホテルらしいアイテムを加えれば、皆さんの思い浮かべるホテルライクになるのです。
モダンスタイルとは
そもそもの話として、モダンスタイルとは何なのか、これを掘り下げてお話をすると、まず建築において「モダン」とは「モダニズム」という言葉が省略されてできた言葉になります。
というのも、産業革命以前は職人の手作業でものづくりが行われていましたが、それゆえに装飾性に富んだものが良いとされ、お金を持っている王族貴族だけがものを独占するような状態でした。
そこからフランス革命と産業革命が起き、ものの大量生産が可能になったことから、一般人もものが手に入るようになったわけです。
ただ、大量生産をするためには、大量生産するのに適した形というのが存在していて、職人の手作業で緻密につくられたものではなく、もっと直線的でシンプルな形状のものにせざるを得なくなったのです。
皆さん、なかなか想像しにくいと思いますが、何でもかんでも機械でつくれるわけではないのです。
仮に機械でつくれたとしても、人間の手作業でつくられているものと比較をすると、風合いが全然違ってくるわけです。
例えばペルシャ絨毯は最たる例で、あれは人間の手作業で緻密にシルクやウールを混ぜて、きれいな柄を絨毯でつくるから高いのです。

もちろん機械でも、ある程度の柄でしたらペルシャ絨毯も再現できなくはないですが、再現できる柄に限りがあり、テンションといってものすごい圧をかけてつくってしまうので、本物と比べるとどうしても風合いが違うのです。
そのような感じで、ペルシャ絨毯のように手作業でつくっていくものではなく、大量生産が可能になったことから、直線的でシンプルな形状のものが増えていったわけです。
ただし、大量生産をする都合上、安定性と均一性のある素材を使わなければならなかったのです。
安定性も均一性もない素材では、品質もバラバラで安定的に大量生産できません。
ですので、安定性と均一性のある素材、つまりは工業的につくられた素材がメインで使われることになったのです。
具体的には、
- 合板
- コンクリート
- 鉄
- スチール
- ガラス
- プラスチック
- タイル
これらの素材になります。
そして、これらの素材が使われているテイストが、モダンスタイルなのです。
先ほどお見せした、一般的にホテルライクと言われている積水ハウスとヘーベルハウスの内観写真を見ていきましょう。
積水ハウス
まずは積水ハウスですが、床も壁もタイルが使われています。

また、室内の壁はビニールクロス、さらに家具のスツールですが、足にはスチールが使われています。
スツールの天板は無垢ではなく、もちろん合板です。
ということで、これは工業的につくられた素材がメインで使われているため、典型的なモダンスタイルになるわけです。
では、どこがホテルでライクな印象を演出しているのかというと、ソファです。
ソファが肉厚でベッドっぽいですし、どこかホテルのロビー感を感じます。
さらに、普通の建売にはないような非日常感を感じることができます。
このあたりが影響して、ホテルでライクな印象を出しているのではないかと思います。
ただ、「ホテルライク」なんていうスタイルはなく、このテイストはモダンスタイルにホテルをイメージさせるようなものを取り込んだだけの内装です。
ヘーベルハウス
続いてヘーベルハウスです。

正直、先ほどの積水ハウスの画像とヘーベルハウスのこの画像とで比較をする場合、インテリアのことを知っている人からすると、ヘーベルハウスの方が上だと感じると思います。
というのも、モダニズムの原則として、工業的につくられた素材を使う以外にも「色や形で楽しむ」というのがあるのです。
それを意識してもらえると、変わった形状の赤っぽいソファがあったり、黄色っぽいダイニングチェアがあったりして、色や形を楽しめるような家具のセレクトになっています。
ですので、よりインテリアに対して理解の深い人がしつらえた内装なのかなというのが見て取れるのです。
ただ何にせよ、こちらも工業的につくられた素材がメインで使われていることから、結局のところ「モダンスタイル」には変わりないのです。
どことなくソファが肉厚でベッドのようで、さらにはホテルのロビー感があったり、普通の建売にはない非日常感を感じることができたり、そういうのがあるので、ホテルライクと言われているだけなのです。
ヘーベルハウスのこの内装の正体も、ただの「モダンスタイル」です。
ホテルライクのつくり方
正直「ホテルライク」というテイストは、皆さん自身でもつくれると思います。
まずはモダンスタイルをつくればいいわけです。
モダンスタイル、つまりはモダニズムというのは、装飾性を排除した空間になります。
具体的には、
- 照明を間接照明にする
- ダウンライトは最低限にとどめる
- 収納をすべて埋め込み式にする
- テレビ、テレビボードは使わない
- プロジェクターを採用する
- ハイドアを使う
- ドアの枠をなくす
- 垂れ壁を排除する
- 巾木、幕板をなくす
- 家全体の壁の色を一色にする
- 窓枠を目立たせないようにする
- 照明のスイッチ、コンセントを目立たせないようにする
- カーテンを使わない設計にする
- ロールスクリーンを埋め込み式にする
- キッチンを目立たない位置に配置する
- レンジフードを目立たせないようにする
- エアコンを目立たない位置に設計する
- 換気設備を目立たせない位置に設置する
- 玄関土間部分を打ちっぱなしにする
- 階段部分のささら桁をなくす
- 階段手すりをシンプルな形状のものにする
- 床材は基本的に1種類のみ使う

これらを取り入れて、まずは装飾性のないシンプルな空間をつくり上げます。
そしてその上で、安定性と均一性のある工業的な素材である、
- 合板
- コンクリート
- 鉄
- スチールガラス
- プラスチック
- タイル
以上の素材を活用して、内装やインテリアを決めていきます。
これでベースとなる、装飾性のないシンプルなモダンスタイルをつくることができます。
そこから、寄せたいテーマに合わせたホテルっぽいテイストを加えます。
例えば日本っぽいホテルテイストでしたら、アマン東京のような素材、具体的にはクリのフローリングや黒いタイルなどを使って、そこにホテル感が出るボリュームのある家具を置けば、日本風のホテルライクが完成します。

また、アマン東京は結構和に寄せたテイストになるので、少しだけ洋に寄せた空間にしたいのであれば、リッツカールトン福岡のように和のテイストの中に大きなカーペットを入れて、部分部分に大理石、もしくはそれに近いセラミックなどの素材を入れることで、少しだけ洋に寄せた和のホテルライクが完成します。

また、アジアンチックなホテルライクにしたいのであれば、アジアンさを感じられるようなチークやトウを入れればいいわけですし、

もう少しラグジュアリー感を出したいのであれば、ブルガリホテルのように、昨今流行りの色味を取り入れた内装にすればいいわけです。

ちなみに、コンラッド大阪のようなホテルの内装が、皆さんの思い浮かべるいわゆるホテルライクになると思うのですが、積水ハウスやヘーベルハウスの内装でも説明したように、これはモダンスタイルにホテルっぽい要素を加えたスタイルになります。

このような感じで、原理原則がわかっていれば、皆さん自身で理想のホテルライクテイストに仕上げることが可能なのです。
これがホテルライクのつくり方なので、ぜひ参考にしていただければと思います。
ホテルライクな家とは?モダンスタイルとの関係やつくり方を解説のまとめ
今回は『ホテルライクな家とは?モダンスタイルとの関係やつくり方を解説』ということで、ここ最近流行のホテルライクについて、川上から川下の方まで解説してきました。
ぜひ参考にしていただいて、家づくりにお役立てください。
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