今回は、私の紹介でこれから建築になるお客さんの家の間取り、これを紹介していこうと思います。
今回紹介する間取りですが、本当に究極と言っても過言ではないくらい、クオリティの高いものになっています。
それでいて建物の坪数は32.89坪なので、展示場のような60坪、70坪あるような非現実的な大きさではないわけです。
ですので、多くの人にとって参考になると思いますし、建築的な美しさとはどういうことなのか、この辺りも感じ取っていただけるのではないかと思います。
絶対に参考になると思うので、これから家づくりをされる方はぜひとも最後までご覧ください。
「ゴロゴロ、ダラダラできる家」がテーマの間取り例
今回紹介する間取りはこちらです。
先ほどもお伝えした通りで、32.89坪の間取りとなります。
そして今回の間取りのテーマは『ゴロゴロ、ダラダラできる家』です。
というのも、私は昔から間取りをつくるときは、最初にテーマを決めて、あとは基本的に設計士の方に丸投げをするのがベストですと皆さんにお伝えしています。
ここ最近はハード面の話ばかりしてきていたので「そんなの初めて聞いた!」という方もいると思います。
簡単に説明をすると、例えば間取りをつくる時
- LDKは20畳ほしい
- 回遊動線にしてほしい
- ファミリークローゼットをつくってほしい
といったように、私たちはどうしても各論めいたことを並べてしまいがちなのです。
しかしそれをやってしまうと、パズル合わせのような間取りづくりになってしまって、どこかで見たことがあるような極々平凡な間取りにしかならないのです。
もっとストレート、かつわかりやすくお伝えするのであれば、合理を突き詰めていくと、マンションのような当たり障りのない間取りにしかならなくなるということです。
マンションの間取りは、誰がどう見ても使いにくいということは無いですよね。
そのようなイメージです。
もちろん「それがいい!」という方はそれでもいいですが、だったらわざわざ高いお金を出してまで注文住宅を買う意味はないですよね?
そこに住む家族のみが使いやすい間取りをつくること、これこそが注文住宅の本質なのです。
どこにでもあるような間取りにしないようにするためにも、基本的にはテーマを決めて後は設計士に丸投げした方が、自分達の想像を超えた良い間取りがつくれます。
今回のお客さんは、私がお伝えしたことをしっかりと実践してくれて、『ゴロゴロ、ダラダラできる家』これをテーマに決めてくれました。
そこから家づくりをスタートさせて、でき上がった間取りがこちらになります。
すごくいいですよね。
究極にレベルの高い物件に仕上がったなという印象です。
そんな『ゴロゴロ、ダラダラできる家』がテーマの今回の間取りですが、平面図で皆さんにお伝えできるポイントが5つほどあります。
どれも美しい建物を建てる上で必要なポイントになるので、できれば全て頭に叩き込んで、ご自身の家を建てる際に活用いただければと思います。
33坪の間取りポイント1:あちこちに居場所を設けてある
まず1つ目が『あちこちに居場所が設けてある』ということです。
というのも、よく見てもらえればわかるのですが、この間取りにはたくさんの居場所が存在します。
メインの開口部付近
メインの開口部付近に関しては、縁側のような形で使用できます。
ですので、日に当たりながら庭を眺めてボーっとする、ということができます。
特に建築業界では『窓際には居心地の良さが宿る』とよく言われます。
そのため、わざわざヌックと呼ばれる篭れるスペースを窓際につくる人もいるくらいです。
ですので、この間取りは窓際の居心地の良さ、これを最大限引き出している、そんな間取りになっているわけです。
縁側のような場所とLDKを隔てる段差
人によっては「え、家の中に段差があるの?」と思われる方もいると思います。
確かに老後のことを考えると…という話もあるとは思うのですが、そもそも老後、段差も登れないような足腰の弱さは相当ヤバイ状態だと思います。
老後のことを考えるなら段差を気にするより、まずは運動と食事ですよね?
ですので、個人的には段差があることに関しては特に問題に思っていません。
むしろ段差があることによって空間にメリハリができて、住み心地の良い空間ができるとさえ思っています。
事実、今回の縁側のような場所とLDKを隔てる段差は、腰掛けスペースとして使えるだけではなく、意匠的にも非常に美しい空間構成になっていますよね?
ですので「段差=悪」ではないのです。
段差を上手く活用できれば、居場所もできて非常に美しいメリハリのある空間をつくることができます。
LDK
LDKは一段下がった形でつくられています。
これによってLDKというスペースにこもっているような感覚になるので、落ち着きを得られつつ、居心地の良い居場所をつくれているのです。
感覚的には電車に乗るとき、席の端っこに座ると落ち着きますよね。
あのような感覚に近い落ち着きを得られるイメージです。
また少し話がそれはしますが、今回の提案は、LDKに椅子を置くのではなく、ヨギボーで生活をするという提案になっています。
というのも、この家に住む予定のご夫婦は読書が趣味なのです。
ですので、いろんな所で本が読めるようにということで、ヨギボーを使う提案となっているわけです。
確かにヨギボーを使えば、その場その時の気分で移動して、LDKのいたる所で本を読むことができますよね。
さらに窓際に移動して日にあたりつつ、庭の景色を楽しみながら読書をするということもできます。
もう誰がどう見ても、とても心地の良い空間構成になっているというのがイメージできるはずです。
「もうすばらしい!!」この一言に尽きる提案です。
あまりの良いプランなので、私の説明がヒートアップしてきて、どんどん話が脱線していきそうなので話を戻しまして、とにかくこんな感じでLDKを下げることで落ち着きを得られつつ、居心地の良い居場所をつくることができているわけです。
話をいったんまとめると
- メインの開口部付近
- 縁側のような場所とLDKを隔てる段差
- LDK
これら3つの要素が上手く絡み合ってあちこちに居場所ができている、というのが最初にお伝えする1つ目のポイントでした。
このように1つの空間を多義的に使えるというのは、コンパクト化しつつある現代の住宅において、非常に重要な考え方であると思っています。
皆さんもぜひともこちらのポイントは忘れないでいただければと思います。
33坪の間取りポイント2:開口部を絞っている
続いてこの間取りの2つ目のポイントは『開口部を絞っている』ということです。
そもそも論として、窓は視界が抜けているところに設置するというのが大原則になります。
もう少しわかりやすく言い換えれば、遠くの景色が見えるところに窓を設置するということなのですが、これは既に亡くなられてしまった有名建築家の永田昌民(ながた・まさひと)さんも言っていたことで、遠くが見えるということは、つまりは阻害するものがないので日当たりが良く、風も抜けるということなのです。
そのため例えば今回の間取りのように、1階部分はメインの開口を大きくとってそれ以外は窓をつけない、こういう窓の配置をした方が日当たりが良く、風が抜ける間取りをつくれるわけです。
また窓をたくさんつけないことによって、室内の壁面がきれいに残ります。
これにより室内の意匠性が上がります。
昔からお伝えをしていますが、壁はインテリアです。
ないがしろにしてはダメなのです。
さらに無駄な窓をつけないことで、昨今重要だと言われている住宅の断熱性能の向上、これにもつながります。
そのため遠くの景色が見えるところに窓を設置して、それ以外は設置しないという考え方に基づいた窓の設置方法は、見た目的にも機能的にも非常に利にかなった方法となっているわけです。
一方で窓をたくさんつけてしまうと室内が明るすぎて、陰影のない、味気ない空間になってしまいます。
それに加えて、当然断熱性能も落ちることになります。
窓の設置の仕方は設計士のレベルが一番出るところでもあるので、皆さんも十分に注意してください。
ちなみに余談ですが、時々、というかけっこうな割合で、風を室内に取り入れるための窓を設置しようと考える人がいます。
しかしその考え方はNGです!
絶対やってはいけません。
33坪の間取りポイント3:南側を完全に閉じている
続いてこの間取りの3つ目のポイントは『南側を完全に閉じている』ということです。
これに関してはお気づきの方もすでにいらっしゃると思いますが、今回の土地は北側立地の土地なのです。
北側立地の土地での建築は、本来なら南側に開口を設けて、そこから光を入れようとするのです。
しかしそれをやってしまうと、非常に住みにくい家になってしまうのです。
なぜなら、北側立地の土地の場合、南側に建物が建っている、もしくは今後建つ可能性があるからです。
もう少し詳しく説明をすると、北側立地の土地で家を建てる場合、南側から光を取り入れようと思うと、隣地から大体6mは離して家を建てなければ南側から光は入ってこないのです。
ものすごい田舎の広大な敷地ならまだしも、一般の大きさの土地や住宅街では、隣地から6m離して家を建てるのは、正直現実的ではないのです。
さらに北側立地で南側に家が建っていた場合、目の前の家の壁を延々と眺めながら日々過ごすことにもなるわけです。
北側立地の戸建に住んだことがある人ならわかりますが、目の前の家の壁からくる圧迫感は、思っている以上に強烈です。
しかも南側のメインの窓を開けてすぐに隣の家があると、自分達の精神衛生上もよくないですからね。
ですので、今回もそのような最悪な状況を避けるために、南側を完全に閉じて視線が抜ける北側に大きな開口を設けているのです。
このような説明を受けると、先ほど説明した有名建築家の永田昌民(ながた・まさひと)さんの建築ノウハウである『遠くの景色が見えるところに窓を設置する』ということと北側立地という特性が上手く噛み合っているプランだということがなんとなくわかりますよね。
北側立地の土地は価格を抑えられる傾向にあるので、今回のように上手くプランをつくれると、非常に魅力的で住み心地のいい間取りをつくることが可能なのです。
ですので、これから土地探しをして家づくりをする皆さんは、最初から北側立地の土地に対してネガティブな印象を持つのではなく、どうやったら上手く活用できるのか?そのような視点を持って土地選びをしてみるといいと思います。
33坪の間取りポイント4:天井が低めに設計されている
続いてこの間取りの4つ目のポイントは『天井が低めに設計されている』ということです。
今回の間取りを見た人の中には「あれ?開口部付近の縁側のような場所、ここの天井高が低いのでは?」そう思われた方もいると思います。
確かにその通りです。
今回の間取りをつくる上で、いろいろと高さを調整しているのです。
ですので、開口部付近の縁側のような場所、この部分は少し天井が低めになっています。
ただこの話を聞くと、多くの方が「そんなのあり得ない」「圧迫感を感じそう!」「天井高は高いのが正義!!」と思われるかもしれませんが、実はそんなことはありません。
むしろ天井を低くすることで、横に広がりがある空間をつくることができるのです。
さらに天井が低いことで落ち着くと感じる空間をつくりやすいのです。
実際に見てもらえばわかりますが、横への広がりが強調されているように感じるはずですし、落ち着きのある空間になっているなというのもなんとなく感じ取ってもらえるはずです。
『天井が低めに設計されている』というのは全然悪いことではなく、むしろ『天井高が高いことが正しい』と思ってしまっているその思考こそが危険なのです。
ですので、最初から可能性を潰さないようにするためにも、天井高を低くするのもアリなんだということは覚えておいてもらえればと思います。
事実、先ほどから話に出ている有名建築家の永田昌民(ながた・まさひと)さんや、伊礼智さんも「天井の低い設計の方が良い」と言っていますし、私自身も過去の経験から、天井を低くして横に広がりがある空間をつくった方が落ち着きが出てきれいだなと思います。
天井の高い空間は扱いが非常に難しく、上手く設計できないと体育館のようにだだっ広い空間になりやすいのです。
あと、天井高を高くして縦方向に高さを出しても、横の広がりがないと結局広さはあまり感じられないのです。
ですので、私個人としては永田昌民(ながた・まさひと)さんや伊礼智さん同様に、天井を低くして横に広がりがある空間をつくることの方が好きです。
ただ一応、念の為補足をしておこうと思いますが、私は天井が高いことがイコール悪だと言っているわけではありません。
設計は難しいものの、上手くつくれれば天井高が高い空間が気持ちいいというのは事実です。
私が言いたかったのは、あくまで居心地の良い空間をつくるためには天井高を高くするということ、これが全てではなく、天井高を低くすることで得られる広さや居心地の良さもあるということです。
この点は勘違いしないでいただければと思います。
33坪の間取りポイント5:キッチンを隠している
そして最後にこの間取りの5つ目のポイントが『キッチンを隠している』ということです。
キッチンはインテリアの1つでもあるわけですが、上手く考えなければ空間がごちゃつきやすいのです。
私の自宅もそうですが、レンジフードを隠すように設計しています。
さらにカップボードはキッチンの真後ろに設置するのではなく、パントリー内部に設置しています。
一見すると使いにくそうと思われると思いますが、実際のところそんなことはなく、そもそも論としてキッチン自体にかなりの収納量があります。
また、いつも使う食器類はだいたい食洗機の中に入れっぱなしで、使うときに食洗機の中から取り出すことがほとんどです。
ですので、カップボードはそこまで多用する必要がない、というが私の自宅の現実です。
そのため、見た目のきれいさを考えると、キッチンとカップボードを別々に配置するというのは意外とアリなのです。
それと同様の考え方で、今回のプランはキッチンとカップボードを完全に隠した配置となっています。
こうすることで、メインの空間であるリビングダイニングをスッキリさせると同時に、意匠性の高い空間を実現させているわけです。
ですので例えば、リビングを家族が集まる場所として最大限活用したいと思われている方や、リビングを少しでもきれいでおしゃれな空間にしたいというふうに思われている方にはピッタリな設計方法になるのです。
皆さんも、ただただ思考停止で流行りのオープンキッチンにするのではなく、キッチンのあり方について柔軟に考えてみてください。
また、これは個人的な意見にはなるのですが、小さいお子さんのいる家庭、もしくはこれからお子さんが生まれる家庭がちょっと意識しておいた方がいいかなというポイントがあり、それが流行りのオープンキッチンは非常にダルく感じる時があるということです。
これがどういうことかというと、私の子どもは双子で、2023年7月現在で1歳半なのですが、キッチン前についているキッチン前収納、これを子どもが開けようとします。
何かやらかしたら大変だと思うと気が気じゃないです。
あと、キッチンの天板に何か物が置いてあれば子どもは背伸びをして取ろうとします。
また場合によっては椅子を台にしてよじ登り、キッチンの天板に手を伸ばします。
「もう勘弁してくれー」と内心思いながら、子どもが怪我をしないように安全な場所へ移動させるのですが、これがけっこうな頻度で発生するので、とても面倒に感じてきます。
よくオープンキッチンにすると「子どもの様子を見ながら料理ができるから安心」と言いますが、オープンキッチンも完璧ではないのです。
これを考えると、今回のプランのように、キッチンとカップボードが1つの部屋の中に固まっているというのは非常に魅力的だなと思ったりします。
こういうのは子どもができてからでないとわからないことなので、私もさすがに想像できませんでした。
小さいお子さんのいる方や、これからお子さんが生まれる方は、そんなこともあるんだという程度に思っていただければと思います。
33坪 間取り例|一流建築士が考えた「ゴロゴロ、ダラダラできる家」のポイントのまとめ
今回は『【33坪 間取り例】一流建築士が考えた“ゴロゴロ、ダラダラできる家”』これを紹介してきました。
ポイントをまとめると、
- あちこちに居場所が設けてある
- 開口部を絞っている
- 南側を完全に閉じている
- 天井が低めに設計されている
- キッチンを隠している
以上の5つになります。
これら5つのポイントはすぐにでも皆さんが取り入れられるものになっているので、ぜひともご活用ください。
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