今回は、「選ぶと後悔するハウスメーカーの特徴」というテーマについて解説します。というのも昨今、何もわかっていない住宅営業マンが、自社の商品に価値があるということを手っ取り早く伝えるために「ウチのハウスメーカーは例えるならグッチ、ルイヴィトン、エルメスなどのハイブランドなのです。」というような説明をする人がワラワラ湧き出ているという印象です。
こういう説明を受けると「あぁ、なんとなくだけどハウスメーカーっていいものつくってるんだろうなぁ。」「ブランドものだし、きっと質がいいんだろうなぁ。」といったイメージがわくと思います。
確かに、それはそれでこれから家を買う人と住宅営業マンの間でインスタントにハウスメーカーの商品は「良いもの」「質が高いもの」という共通認識を得られると思います。
しかし、それは本当なのでしょうか?そもそも、グッチ、ルイヴィトン、エルメスはラグジュアリーブランドというくくりです。ですので、ハイブランドではありません。
王族貴族に製品を献上した歴史があるブランドをラグジュアリーブランドといい、王族貴族に製品を献上した歴史はないものの、最高品質の素材を使って、職人の手作業によって作られたブランドがハイブランドと呼ばれます。

こういうある種世界史と紐づいてくるような知識があると、ラグジュアリーブランドやハイブランドが、ただの成金ブランドではないというのがわかってくるのです。そして、ただの成金ブランドではないというのがわかってくると、日本のハウスメーカーとラグジュアリーブランドやハイブランドとでは成り立ちが大きく異なっているのがわかるので、たとえ方が適切ではないということがわかります。
それにも関わらず、何となく雰囲気でハウスメーカーという業態を捉えてしまうと「欠陥住宅になってしまった。」「思ったよりも施工が雑で、住んだ後に苦労した。」といったことになりかねないのです。
念のためお伝えしますが、私はハウスメーカーアンチではありません。私は、基本的にハウスメーカーを応援している立場です。ただ、適切に物事を把握した上で動かなければ、この業界は本当に危険なのです。 安心安全でしたら「注文住宅業界はクレーム産業」なんて言われていないはずです
ですので、今回はこれから家づくりをされる皆さんに「選ぶと後悔するハウスメーカーの特徴」というテーマでお話をさせていただき、多くの業界人が話したがらない本質の部分を独断と偏見で共有していきたいと思います。
選ぶと後悔するハウスメーカーの特徴
結論からお伝えすると、選ぶと後悔するハウスメーカーの特徴、それは「ハウスメーカーを過大評価している」ということです。これがどういうことか説明していきます。
世の中には、ハウスメーカーで家を建てることが正義と思っているハウスメーカーや営業担当者がごまんといます。そして、そういうハウスメーカーや営業担当者は「ハウスメーカーで建てた方が安心安全」「ハウスメーカーで家を建てるべきだ!」「ハウスメーカーで家を建てる以外あり得ない!」というような言動や雰囲気を醸し出してくるわけです。

先ほどもお伝えしたとおり、中には、これから家を買う人と住宅営業マンの間に、ハウスメーカーの商品は「良いもの」で「質が高いもの」という共通認識を手っ取り早くつくるために「ウチのハウスメーカーは例えるならグッチ、ルイヴィトン、エルメスなどのハイブランドなんです。」というような説明をしてくる人もこの業界には多くいます。
ハウスメーカー側からすれば、自社で家を建てて欲しいため、そういう説明になってしまうのもわからなくはありません。ただし、だからといって、ハウスメーカーをよく見せすぎるのも違うと思っています。そのハウスメーカーの現在地を適切に理解する必要があるのです。
というのも、そもそもハウスメーカーという業態である以上、大手も中堅もローコストも、すべては住宅の量産を行っている企業です。極端な話、言い換えればハウスメーカーというすべての企業の根底にあるものは、100円均一のような「量産品」を販売することにあるわけです。
日本は住宅の価値がないとよく言われますが、その理由は、日本の住宅は大量生産の工業化製品だからです。失礼な話ではありますが、皆さんもイメージできるように、100均の商品に資産価値はないですよね。

ユニクロ、GUの服を末代まで引き継いでいこうなんて人もいません。

要は、日本の住宅もそれと同じなわけです。
一方で、海外の家は基本的に築年数が古いほど資産価値が上がると言われています。

家だけではなくて服や時計もそうです。
では、なぜ海外は古いと価値が上がるのかというと、職人による手作業によるものだからです。我々日本人からするとなかなかイメージできないことで「手作業よりも機械でつくった方が精度も高いしいいに決まってるじゃん!」と思ってしまいがちですが、イメージしてみてください。極端な例にはなりますが、工業化によってつくられた家と、京都の五重塔を建てた職人がつくった家だったら、どちらの方が価値がありそうでしょうか?

どう考えても、京都の五重塔を建てた職人がつくった家の方が価値がありそうですし、箔がつきそうですよね。まさにそのとおりで、価値のあるものは何だかんだ人間の手作業が入っているのです。 もう少し具体例を出しましょう。たとえば、皆さんもよくご存知のルイヴィトン。

ルイヴィトンは、誰もが知っているキングオブラグジュアリーブランドです。そんなルイヴィトンは1850年代、馬車から船や機関車での移動が増え始めたときに、当時主流だった丸型のトランクが使いにくかったこともあり、移動に便利な箱型のトランクに目をつけ開発を行ったのです。

そしてそのトランクは、防水加工や整理しやすい仕切りがあったことから、当時の富裕層に大好評。その評判は国内外にまで及んだのです。
実際に、タイタニック号の沈没では「ルイヴィトンのトランクだけは中身が濡れなかった」といた逸話が残っていたり、ロシアの皇帝、ニコライ2世もルイヴィトンにオーダーしたといった記録が残っていたりするほどです。
こういった背景からもわかるとおり、ルイヴィトンはただの成金ブランドではなく、実は職人を自社で育成し、手間を惜しまず製品をつくる姿勢から、品質には強いこだわりのあるブランドでもあるわけです
ですので、年間の生産量に限界があり、それだけに常に「品切れ状態」を起こしている、これが現在まで続くルイヴィトンの基本的な姿勢なのです。
こういった説明を聞くと、ルイヴィトンの見え方が変わってきませんか?
そして、ルイヴィトンと同様にグッチやエルメス、時計でいえばロレックス、パテックフィリップ、ヴァシュロンコンスタンタン、それらの商品がなぜ高いのかというと、それはブランド料が加算されていると言われれば確かにそれはそうなのですが、実態は職人による手作業で製品を作っており、その手間賃と職人作業ならではの機械では作れない精巧な技術が使われているからなのです。

一方で、日本の住宅はどうかというと、ルイヴィトン、グッチ、エルメス、ロレックス、パテックフィリップ、ヴァシュロンコンスタンタンなどなど、それらと比較して成り立ちが違います。

日本は敗戦国で、当時住居がなかったため住宅の工業化がどうしても必要でした。

そのため、クオリティ云々というより、まずはとにかくつくること、これが重要だったのです。 実際に、ハウスメーカーという企業は、大手だろうが、中堅だろうが、ローコストだろうが、基本的に自社で大工を抱えず、提携している地域の工務店に工事を委託して家づくりを行っています。自社で大工を抱えているハウスメーカーはほぼありません。
ここはしっかりと覚えておいてください。ハウスメーカー各社は、自社で大工を抱えていません。
もちろん、工業化住宅は戦後から今まで多くの人の生活を豊かにしてきたという事実もあります。ですので「工業化住宅=悪」というわけではありません。一部の工務店は「工業化住宅はダメ!」「ハウスメーカーで家を建てるな!」などと言っていますが、それはそれで極論かなと私は思っています。
ただし、本質を知ると、ハウスメーカーという業態は、大手のハウスメーカーも中堅ローコスト系のハウスメーカーも、そのすべてが住宅の量産を行っている企業であり、言い換えれば極端な話、すべてのハウスメーカーの根底にあるのは、100円均一のような量産品を販売することにあるのです。これは覚えておいてください。
間違ってもラグジュアリーブランドとハウスメーカーを同列で考えてはいけません。ですので、「ハウスメーカーで建てた方が安心安全」「ハウスメーカーで家を建てるべきだ!」「ハウスメーカーで家を建てる以外あり得ない!」というような『ハウスメーカー絶対主義』の企業や担当者に乗せられて家づくりをすると、多くの方が後悔することになります。 しかし、先ほども説明したとおり、『工業化住宅=悪』というわけではありません。
後悔しない家づくりのポイントは『アップグレードと諦め』
工業化住宅は工業化住宅なりの良さがありますが、どうすればハウスメーカーでの家づくりの良さを活かしつつ、後悔しない家づくりができるのでしょうか?それが、『アップグレードと諦め』です。
この『アップグレードと諦め』が、ハウスメーカー選びで重要な視点だと私は思っていますし、今現在、私が行っている活動そのものでもあるのです。
ポイント1:今の時代に合わせたアップグレード
先ほども説明したとおり、基本的には工業化製品に価値はありません。加えて、住宅の場合、工業化住宅の大量生産により、今まで日本独自の形状で家を建ててきてしまっているため、街並みはぐちゃぐちゃです。海外のきれいな街並みと比較すると、日本の街並みがどれだけエキゾチックかがわかります。
しかも、ハウスメーカーは地域の提携工務店に工事を依頼しているため、なんだかんだエリアによって施工精度にばらつきが出てきますし、普通に家を建ててしまったらそれこそ工業化住宅が前面に出た賃貸や建売のようなつまらないものになってしまうわけです。

そんな状態ではあるものの、丁寧に家づくりをして、なおかつ今の時代に合わせたアップグレードができれば、次のようなメリットはそのままに、さらなるパワーアップをすることができるわけです。
- 工業化によるコストメリット
- 工期が短い
- 精度の高い家をつくりやすい
個人的には、これを「ハウスメーカーのロレックス化」と呼んでいます。では、どのようにハウスメーカーの家をアップグレード、つまりは「ロレックス化」するのかというと、具体的には次の2点です。
- 住宅のモダニズム化と家具を考えた建築
- 住宅の高気密高断熱化
ポイント2:ハウスメーカー以上のものを求めない、諦め
諦めに関してですが、こちらはそのまま意味で、わかりやすく言い換えるなら「ハウスメーカーにハウスメーカー以上のものを求めない」ということです。
これからハウスメーカーで家づくりをしようとしている方からすると「本当かよ!」と思うと思います。しかし、ハウスメーカーによっては調べれば調べるほど、「これってどうにかならないのかな……」と思う箇所が出てくるのです。
たとえば、建物の断熱性能気密性能の向上は最たる例で、いろいろと知識が増えてくると「なんでこの部分の断熱材を増やせないのかな?」と思うようなことはどうしても出てきます。また、気密施工に関しても、絶対にやらなければならないにも関わらず、頑なにそれを拒み続けるハウスメーカーもあるくらいです。
これに関してはもうどうすることもできないのです。なぜなら、仕組みを変えるということは、工場の生産ラインやマニュアルの改訂などなど、そこにはとんでもない労力が必要だからです。
また、もし仮にハウスメーカーが足りていない部分の対策ができたとしても、できることに限度があるのです。なぜなら、ハウスメーカーは大量生産前提の家づくりを行うという座組の上に成り立っているため、その座組を逸脱するような家づくりはできないのです。
どうしようもない場合は「仕方ない」で済ませるしかないですし、検討するハウスメーカーによっては、ハウスメーカーがつくれる家以上のものを求めてはいけないわけです。
そもそも、期待していなければ後悔することもありません。ということで、どうすればハウスメーカーでの家づくり良さを活かしつつ、後悔しない家づくりができるのかというと、それは『アップグレードと諦め』ということでした。
まとめ
「選ぶと後悔するハウスメーカーの特徴」というテーマについて解説しました。 まとめると、後悔するハウスメーカーの特徴は「ハウスメーカーを過大評価している」ということです、そして、そのハウスメーカーの立ち位置を理解した上で、「アップグレードと諦め」どちらかを選択しましょうということです。

ここまで読んでくださった多くの方が、次のように考えていると思います。
- アップグレードできるハウスメーカーはどこで、諦めが必要なハウスメーカーはどこなのか、その具体的なハウスメーカー名を聞きたい
- 各ハウスメーカーそれぞれの弱点と対策方法を知りたい
そう考えている方は、私がつくった住宅営業マンマッチングサービスの「メグリエ」に登録していただき、私との無料個別面談を申し込んでいただければと思います。
