広い土地で鉄骨住宅を建ててはいけない理由

はじめての注文住宅ノウハウ
この記事は約13分で読めます。

今回は『広い土地で鉄骨住宅を建ててはいけない理由』というテーマでお話をしていこうと思います。

鉄骨住宅と聞くと、なんとなく「地震に強そう」「木造住宅よりも価格が高そう」そういったイメージを持たれる方が多いような気がしています。

鉄骨住宅

確かに木造と比較すると鉄骨の方が強度はあります。

ですので、そこからくる安心感というのはあります。

また、実家が鉄骨住宅だった場合、今まで自分たち家族を守ってくれた家だからという理由で「自分たちも鉄骨住宅を建てようかな。」そう思う方もいるのではないでしょうか。

ただ実際のところ、鉄骨住宅はけっこうデメリットが多いのです。

特に「広い土地で家を建てることを考えている人」には鉄骨住宅は不向きで、広い土地に鉄骨住宅を建てると後悔することになります。

広い土地で家を建てることを考えている人

ですので今回は、広い土地で鉄骨住宅を建ててはいけない理由について掘り下げてお話をします。

これからハウスメーカーで注文住宅を建てる方は、ぜひとも間違いない選択をしていただければと思います。

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広い土地で鉄骨住宅が不向きな理由1:悪い気密性能をカバーできない

まずは1つ目『悪い気密性能をカバーできない』ということについてです。

ここでそもそもの話「気密性能って何?」という人もいるかと思うので、大枠から掘り下げていきます。

気密性能とは、建物にどれだけ隙間が空いているのかを一言で言い換えた言葉です。

気密性の高い家、低い家

そして、建物の気密性能がいいと、例えば空調の保温力が高くなり、夏の蒸し暑い空気や冬の乾燥した空気が室内に入ることを防いでくれる、換気がしやすくなるなどといった恩恵を受けることができるのです。

ですので、建物の気密性能はものすごく重要なのです。

ただこの話をすると、中には「気密性能なんてほどほどでいい。」「過剰な気密性能はオーバースペックです。」などと言ってくる住宅営業マンがたくさんいます。

また、担当の住宅営業マンの人柄がよかったりするとそれだけで「担当者がそう言ってるんだから信じてみよう。」と思ってしまうのです。

しかし大変失礼な話なのですが、それはただただ住宅営業マンの知識がないだけなのです。

皆さんにイメージしてもらいたいのですが、水筒がありますよね。

水筒

水筒は中に液体を入れて密閉させることで中の液体の温度が保温されるわけです。

ただ、どんなに性能のいい水筒であっても、蓋を閉めずに開けっぱなしだったら保温できません。

蓋をあけっぱなしの水筒

要は、気密が悪い家はそういうことで、どんなに断熱性能がよくても気密が悪かったら本来の断熱性能を発揮できないのです。

ですので「建物の気密性能はほどほどでいい。」「過剰な気密性能はオーバースペックです。」などは、少し言い方は悪いのですが、ただただ住宅営業マンの知識がないだけなのです。

もし「気密性能なんてほどほどでいい。」「過剰な気密性能はオーバースペックです。」など、そのような営業トークをしてくる人がいたら「この人は勉強していない人なんだな。」と思って、そっと距離を置くことをおすすめします。

建物の気密性能がなんなのか、そしてどれだけ重要なのかを今の説明でご理解いただけたかと思いますが、実は鉄骨は温度によって伸び縮みするという特性があるのです。

ですので、木造住宅に比べて気密性能を上げにくいという特徴があります。

実際に私は鉄骨系のハウスメーカー、具体的にはセキスイハウス、ダイワハウス、パナソニックホームズ、ヘーベルハウス、セキスイハイム、トヨタホーム、これらのメーカーで建物の気密性能を上げるためにはどうしたらいいのか、かなり研究して今までアウトプットしてきているのです。

そこでも語っている通りで、鉄骨住宅は本当に気密が取りにくいのです。

さらに、大手ハウスメーカーの家で気密を取ろうと思うと、本来やらないようなカスタマイズが必要になってくるので、そこもかなり大変なのです。

家が完成する直前で気密が悪すぎて顔面蒼白になるお客さんを私はたくさん見てきているので、この辺りを安易に考えると後々後悔することになります。

では、気密を取るのが苦手な鉄骨住宅をカバーするためにはどうしたらいいのかというと、それは住宅密集地で家を建てるということになります。

住宅密集地で家を建てる

これが一体どういうことなのか、まずはこちらをご覧ください。

チャートによる戸建住宅の自然換気量の簡易推定グラフ

こちらの表は、外の温度と室内の温度差、その地域の平均風速、これらを元に家の漏気がどれだけ起こるのかを表したグラフです。

つまり、このグラフが建物の気密性能、通称C値とよばれるものの重要性を全て物語っているわけなのですが、読み方を説明していきます。

このグラフは右から見ていきます。

右のグラフを読み解くには、外の温度と家の中の温度差を表しているΔT(デルタT)と建築地の外部風速、これらを知る必要があるのです。

気象庁からそれらの値を持ってくるわけなのですが、例えば東京を1つの例として見ていきましょう。

東京の年間の気圧、降水量、気温、湿度、風向・風速

東京の2022年の風速は、平均すると1年で2.7m/sです。

そして、外の温度と家の中の温度差に関しては、仮に室内の温度が20℃だと仮定して、冬の外の平均気温が5℃だったとします。

そうすると外の温度と室内の温度差は15℃になります。

あとはこれらの値をグラフに当てはめつつ、建築地がだだっ広い土地なのか、一般的な住宅地なのか、それとも住宅密集地なのか、これを選択して交点にポイントを打ちます。

チャートによる戸建住宅の自然換気量の簡易推定グラフ

今回は普通の住宅地を選択しますが、そのポイントを軸にして水平線を引いていきます。

チャートによる戸建住宅の自然換気量の簡易推定グラフ

すると、先ほどの建築場所が東京の一般的な住宅地で、1年の平均風速が2.7m/s、外の温度と室内の温度差が15℃という条件の場合、1時間で家の容積の何%の空気が勝手に入れ替わってしまうのかがわかるようになるのです。

実際に表を見てみるとなんとなくわかりますが、東京の普通の住宅地に建築をすると、C値が4の場合、1時間で家の空気の約30%が入れ替わることになります。

また、C値が1.5くらいで家の空気の約10%、C値が1くらいで家の空気の約8%が勝手に入れ替わってしまうというのが読み取れるのです。

そして、C値が悪いと先ほども説明したように、

  • 空調の保温力が低くなる
  • 夏の蒸し暑い空気や冬の乾燥した空気が室内に入ってきてしまう
  • 換気がしにくくなる

これらの悪影響を及ぼしてくる可能性が出てくるということなのです。

ただし、この表を見てみるとわかると思うのですが、C値というのは、C値が1を切ってくると漏気の量は大きく変わらない、住宅密集地だと外部風速の影響を受けにくいので、C値が悪くてもほんの少しカバーできるということが見えてくるかと思います。

C値のグラフ

C値が1を切ってくると、表を見る限りそこまで目に見えるほどの大きな差はないわけです。

また、建物に風が吹きつけられることで、隙間から家の中に風が入ってくるので、都心のような住宅密集地で家を建てる場合、周辺の住宅が暴風壁の役割を果たしてくれるのです。

住宅密集地ですと外部風速の影響を受けにくいので、C値が悪くてもほんの少しカバーできるということが言えます。

気密の取りにくい鉄骨住宅が住宅密集地向きの建て方だということは、ここからもなんとなく見えてくるわけです。

ということで、気密を取るのが苦手な鉄骨住宅の気密をカバーするためにはどうしたらいいのかというと、それは住宅密集地で家を建てる、これになるのです。

広い土地で家を建てることを考えている人は、鉄骨住宅向きではないということです。

これが、広い土地で鉄骨住宅を建ててはいけない理由の1つ目になります。

広い土地で鉄骨住宅が不向きな理由2:周辺被害を考えなくてよい

続いて『周辺被害を考えなくてよい』こちらについて説明をしていきます。

この話をすると少し語弊を生みそうですが、私の言っている周辺被害とは主に

  • 隣の家が倒れかかってくる
  • 隣の家が燃えた影響で自分たちの家も燃えてしまう

この2つです。

要するに、東京都内や駅近の都心部のような建物が密集していたり、古い建物が立ち並んでいたりするエリアで家を建てる場合には、周辺被害から身を守ることを考える必要があるので、頑丈である鉄骨住宅が向いているということです。

東京都内や駅近の都心部のような建物が密集しているエリア

特に地震は、地震が起きた後の二次災害である火災がひどいといわれていて、実際に阪神・淡路大震災の時や石川県の能登地震の時も火災がひどかったです。

あのような感じで、都内や都心部に住んでいる方、もしくは住宅密集地に住んでいる方は、地震が起きた直後だけでなく、その後も周辺被害から身を守らなければならないわけです。

そういう場合には、そもそも構造躯体として頑丈で耐火性能を高くしている鉄骨住宅の方が向いているわけです。

一方で、これから家を建てようとしている土地の面積が大きかったり、あとは新しい住宅が立ち並ぶエリアで家を建てたりする場合には、わざわざ鉄骨住宅で建てる必要性はないのです。

ただこの話をすると「いやいや、家なんて頑丈に越したことないんだから、土地の大小に関わらず木造で建てるよりも鉄骨で家を建てた方がいいでしょう。」など、そんな反論が聞こえてきそうですが、実際なんだかんだ木造住宅の方が優れていることが多いのです。

というのも、鉄骨住宅は重いので、地震が来た時に建物が揺れやすいのです。

一方で、木造住宅は軽いので、地震が来た時に揺れにくいのです。

これは、大学で建築を学んだことがある人だったら誰でも知っている「1+1=2」くらいの超基本的な話で、どこのハウスメーカーがではなく、そもそも鉄骨で建物を建てると揺れやすくなってしまうわけです。

ちなみに、鉄骨系のハウスメーカーは、制震装置とよばれる建物の揺れを抑える装置を入れています。

住宅営業マンによっては「制震装置が入っているから地震に強い。制震装置が入っていない木造住宅は地震に弱い。」といった営業トークをしてくるのですが、それは本質ではありません。

制震装置を入れなければ建物が揺れてしまうため、仕方なく制震装置を入れているのです。

こちらが本質です。

この辺りを勘違いしてしまうと、木造で制震装置が入っていないハウスメーカーはダメだなど、本質から外れたハウスメーカー選びをすることになってしまうのでご注意ください。

とにかく鉄骨住宅は基本的に揺れやすいということを覚えておいてもらえればと思います。

その他にも、鉄骨住宅は鉄でできている都合上、熱を通しやすく、素材自体が伸縮するため、断熱性能や気密性能は木造の方が有利ですし、さらに生産性のしやすさ前提にある鉄骨住宅でデザインを突き詰めるとどうしても限界があるため、細かいデザインを追求するのであれば、これもまた木造の方が有利なのです。

実際にダイワハウスの社長も2027年までに戸建ての7割を木造にするという表明をしています。

さらには、鉄骨系ハウスメーカーの代名詞ともよべるヘーベルハウスまでも、Asu-hausという木造住宅の販売を開始しています。

ここからもわかる通り、鉄骨住宅にはどうしても限界があるため、今の時代の流れは基本木造なのです。

ただ、私は100%木造が有利かと言われれば、そんなことはないと思っています。

先ほどもお伝えした通りで、周辺被害から身を守るということを意識する必要性がある地域で家を建てるかどうか、この観点で考えた結果、やはり鉄骨の方が安心だなと思えば、私は鉄骨住宅で家を建てるのはアリだと思っています。

そのため、1つの判断基準として、自分が家を建てる土地は広いのか狭いのか、周辺被害を意識する必要のある土地で家を建てるのか建てないのか、この辺りを念頭に置いた上で鉄骨住宅を建てるのかどうかを決めていただければと思います。

別に私は鉄骨系のハウスメーカーを落とし入れて木造にシフトさせようとは思っていません。

あくまで第3者として客観的に話をしているので、その辺りはご安心ください。

広い土地で鉄骨住宅が不向きな理由3:鉄骨で平家を建てる意味がない

最後に『鉄骨で平屋を建てる意味がない』という点について説明します。

広い土地で家を建てる場合、大抵は平屋を建てた方が金銭的に有利です。

例えば100坪の土地に40坪の2階建ての家を建てるとします。

40坪の2階建ての家を建てる想定なので、単純に1階部分が20坪、2階部分が20坪、合計で40坪なわけです。

ですので、100坪の土地に40坪の2階建てを建てる場合というのは、100坪-1階部分の20坪ということで、残り80坪の土地に対して外構工事費用がかかってくるということなのです。

100坪の土地に40坪の2階建てを建てると外構は80坪

一方で、同じ40坪の家であっても、40坪の平屋だった場合、100坪-40坪で、残り60坪の土地に対して外構工事費用がかかってくることになります。

100坪の土地に平屋の建物40坪を建てると外構は60坪

つまり何が言いたいのかというと、建物の坪数がコンパクトであれば、当然その分建物にかかる建築費用を抑えたように見えるのですが、実際には土地の余白があればあるほど、そこに対して膨大な外構費用がかかってくるのです。

そのため、トータルの建築コストがむしろ上がってしまう可能性があります。

先ほどの例で考えると、100坪の土地に40坪の2階建ての家を建てて、残り80坪の土地に外構工事を行うとカツカツ仕様となり、外構工事でも700万円くらい、まともに外構工事を行ったら1,200万円くらいはかかるイメージです。

そんなにも外構工事でお金がかかるのなら、建物にお金を回した方がよくないですか?という話なのです。

実際に広い土地に2階建ての家を建てるよりも、あえて坪数を大きくして平屋を建てた方がトータルの建築費用が安かったという事例を私は今までたくさん経験してきています。

平屋の家外観
平屋の家内装

広い土地で家を建てる場合は、大抵平屋で家を建ててしまった方が金銭的に有利だったりするのですが、この時に「鉄骨で平屋を建てた方がいいんじゃないか。」と思われる方が一定数います。

確かに鉄骨で平屋を建てたらなんとなく強そうですし、それもそれでアリかなと思ってしまう気持ちもわかるのですが、平屋は地面に接している部分が多いので、もともと地震に強い建物なのです。

上空からみた平屋の家

特に木造の方が軽くて揺れにくいということもあるので、平屋で地震に強い家を目指すのであれば、なおのこと木造の方が有利なのです。

また、最初の方でもお伝えしましたが、鉄骨住宅の気密の悪さを補うためには住宅密集地で家を建てた方がよかったりもします。

しかし、そもそも平屋を建てられる時点で土地が大きいわけです。

ですので、広い土地で平屋の鉄骨住宅を建てるのは、気密性能の低さを補うのにも適していないわけです。

こういう理由から、鉄骨で平屋を建てる意味があまりないため、広い土地で家を建てることを考えている人には鉄骨住宅は不向きだということでした。

広い土地で鉄骨住宅を建ててはいけない理由のまとめ

広い土地で鉄骨住宅を建ててはいけない理由として

  • 悪い気密性能をカバーできない
  • 周辺被害を考えなくてよい
  • 鉄骨で平屋を建てる意味がない

以上の3つがありますというお話でした。

ただ、いくら理論理屈をこねくり回しても、最終的には感情面で選択するというのも私は全然アリだと思っています。

例えば、小麦は体に悪いと言われますが、ラーメンやうどん、パスタ、どれもおいしいですし食べたくなります。

これはもう感情でラーメンやうどん、パスタを食べると決めているわけで、そこには理論も理屈もないのです。

それと同じで「鉄骨の方が安心安全な気がするし、そっちで家づくりをしていく」という選択をするのであれば、それはそれで私はいいと思っています。

ただ、デメリットがあるのも事実なので、それを各ハウスメーカーでどう補っているのか、また、どのようにしたら弱点を補えるのか、そのような目線でハウスメーカー選びをしていただくといいのではないかなと思います。

最後に補足で、鉄骨住宅の方が木造よりも金額が高いと思われている方が多いですが、実は鉄骨住宅の方が安いです。木造住宅の方が高いのです。

なぜなら、鉄骨住宅は量産できるからです。

木造住宅は木を使っているので生ものです。木は一度伐採してしまったら、伸びるまで何十年、何百年とかかります。

そういったこともあり、木材の方が希少価値が高くなっているので、木造住宅の方が高くて鉄骨住宅の方が安くなっています。

そのため、大手ハウスメーカーの中でコストを抑えて家づくりをしたいというのであれば、積極的に鉄骨住宅を選んでいくというのもアリかと思います。

ぜひともこの記事を参考にしていただき、皆さんの家づくりにお役立ていただければと思います。

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