地震に強い家づくりとは?耐震の基礎知識、考え方を解説

地震に強い家づくりとは?耐震の基礎知識、考え方を解説 はじめての注文住宅ノウハウ
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2025年4月に、建築基準法が改正されました。

今回はそれを受けて、今後どういう考え方で住宅を建てるべきなのか、地震、耐震に焦点を当てて解説します。

どういう考え方で今後住宅を建てていくべき?

地震に関することは専門用語が多くわかりづらいので、大枠から説明します。

ぜひ家づくりの参考にしてください。

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地震の強さを表す値

種類が多く複雑な、地震の強さを表す数値について解説します。

震度、マグニチュード

地震の強さを表すものとして「震度」「マグニチュード」があります。

震度は地震による揺れの強さを示す値で、震源地から近いと数値が高くなり、震源地から遠いと数値が低くなります。

例えば、震源地が東京で震度7だった場合、神奈川、山梨など、震源地から離れれば離れるほど震度は6、5、4と下がっていきます。

地震発生のイメージ

マグニチュードは、地震そのものが及ぼした影響力の範囲を示す値です。

わかりやすく例えると、大声を出した時に「何km先まで聞こえたのか」という話です。

大きな山で大声を出す人

その聞こえた距離を表しているのがマグニチュードです。

この震度とマグニチュードという考え方をきちんと分けて覚えておかなければ、ハウスメーカーが言っている「地震の強さ」が、どっちのことを言っているのかわからなくなります。

ですので、この2つは一旦覚えておきましょう。

ガル、カイン

これ以外にも、ハウスメーカー各社が「自分たちの家は強いですよ」と言う時に使う値があります。

ハウスメーカーとの打ち合わせ

それが「ガル」「カイン」です。

ガルとカインは、さすがに聞いたことないと思いますが、ハウスメーカーと打ち合わせをしていると、絶対にこの手の話が出てきて、「うちは◯◯ガルまで耐えられたから地震に強いんです!」「いやいや、ガルなんて古いんですよ、最近だとガルよりもカインの方が重要で、うちは◯◯カインまで耐えられたから地震に強いんです!」という言い合いがあるわけです。

ライバル企業

では、その「ガル」と「カイン」が何なのかという話ですが、ガルは瞬間的な大きさの数値を示すものです。

要は瞬間風速のような感じです。

「うちのハウスメーカーは耐震実験をしました。その時に3,000ガルまで耐えました」という話は、瞬間的にその3,000ガルというものまで耐えられましたという意味です。

一方でカインは、揺れの速度の数値を示すものです。

ゆっくりシェイクしてプロテインを作るのか、それともたくさん振ってプロテインを作るのかという話です。

プロテインを作る


どれだけすごい揺れがあったかを表すのがカインです。

ガルVSカイン論争がありますが、そもそも比較しているものが全然違います。

ハウスメーカーが「うちはガルです」「うちはカインです」と言っても、それは単純に比較できるものではありません。

瞬間的(ガル)なのか、それとも揺れの速さ(カイン)なのか、そういう住み分けでハウスメーカーの話を聞いてもらえればと思います。

キラーパルス

非常に厄介ですが、ガルとカインとは別の考え方で「キラーパルス」というのもあります。

共振のことを言っています。

振動している波がぶつかり合って、より大きな音になるという現象です。

共振


波と波がぶつかって同じ波長であれば、より大きな波になります。

その波の波長が真逆、互い違いですと、相殺されて0になるという話です。

建物の揺れと地震の揺れが共振関係にあると、震度が低かったとしても、建物がより大きく揺れて、壊れやすくなります。

これがキラーパルスです。

例えば直近ですと、

  • 能登半島の地震:2,826ガル
  • 東日本大震災:2,934ガル
  • 熊本地震:1,580ガル
  • 阪神・淡路大震災:818ガル
直近の大きな地震のガル数

です。

ガルだけでいうと、東日本大震災が数値的には1番高かったです。

しかし、建物が1番倒壊したのは阪神・淡路大震災なのです。

なぜかというと、このキラーパルスが原因で、建物の揺れと地震の揺れが共振したがために建物がたくさん倒れてしまいました。

ガルやカインの話をしましたが、それは定量的に地震に対する強さを表す1つの指標です。

しかし、キラーパルスという考え方もあるので、ガルやカインが全てではないのです。

総合的に勘案した上で、地震の強さを判断しなければなりません。

ですので、地震に対する強さは簡単に一言では言えず、結構難しいです。

地震に強いハウスメーカーとは?

「結論、どこのハウスメーカーが地震に強いんだ?」という話になります。

おそらくみなさんそこが1番知りたいと思います。

これは一般論ですが、基本的には、木造の在来軸組工法よりもツーバイフォー工法の方が地震に強いと言われています。

在来工法よりもツーバイフォー工法の方が地震に強い

そしてそれよりも鉄骨構造の方が強いと言われています。

鉄骨構造

ですので、具体的にどこのハウスメーカーがというのは言いづらいのですが、一般論として建物の地震に対する強さは、

  1. 鉄骨 軸組工法
  2. ツーバイフォー工法orツーバイシックス工法
  3. 木造 軸組工法
地震に強い工法の1番から3番

この順番となっています。

まずは、この全体像を覚えておいていただければと思います。

基本的には、木造よりも鉄骨の方が地震に強いです。

しかしこれがまた難しいのが、地震が来た時、鉄骨造の建物は揺れます。

地震が来た時、鉄骨造の建物は揺れる

鉄骨の建物は、地震が来た時の力を「揺れて逃がす」という特性があるのです。

ビルもそうですが、地震が来た時、結構揺れると言われています。

3.11の地震の時は、揺れが強すぎて東京タワーの先が曲がったということもありました。

Googleで「3.11 東京タワー」などで画像検索すると、先が曲がっている画像が出てきます。

先が曲がった東京タワー

もともと建築的に鉄骨の建物は揺れて力を逃がす性質があります。

ですので、頑丈ではありますが揺れやすいのです。

揺れにくさを勘案すると、木造住宅の方が軽くて揺れにくいので、内装被害は木造住宅の方が少ないのです。

実際に、熊本地震のボランティアに行った時に各ハウスメーカーの建物がきちんと残っているか、どのくらい被害があるかを見てきました。

熊本地震の被害状況


この時に、大体どこの大手ハウスメーカーの建物も、鉄骨だろうと木造だろうときちんと外観がきれいに残っていました。

ただ、建物の中に関しては、鉄骨住宅の被害がひどかったです。

やはり揺れるので家具がめちゃくちゃになっていたり、壁にひび割れが入っていたり、補修費用が結構かかりそうだなという印象でした。

一方で、木造住宅はそういうのが全くありませんでした。

木造住宅

木造住宅の方が、きちんとつくったら揺れないのです。

「揺れない」ということを地震に対して強いと捉えるなら、木造住宅の方が強いかもしれません。

ここまでをまとめると、震度・マグニチュードは基本的な考え方で、それに対してハウスメーカーがガルやカインを説明して地震に対する強さを伝え、さらに共振(キラーパルス)という考え方もあるという話をしました。

そして、非常にわかりにくいですが建物の構造躯体として

  1. 鉄骨 軸組工法
  2. ツーバイフォー工法orツーバイシックス工法
  3. 木造 軸組工法

この順番で、地震に対する強度は高いです。

ただし、地震に対する強さは何を表しているのかというのが結構ポイントで、物理的な強度を求めるのであれば確かに鉄骨は強いですが、揺れにくさにフォーカスをすると、鉄骨住宅は揺れやすいので木造住宅の方が揺れにくくて地震に強いということになります。

考え方が結構難しいですが、これが全体です。

正直これは起きてからでないとわからないことでもあるわけです。

机上の空論でどこのハウスメーカーが強いんだと言ったとてイメージでしかなく、実際の被災地ではどうだったのか、そこをしっかりと伝える方が重要だと思っています。

その結果理屈としてはいろいろありますが、結論はよほど変なところで建てない限りは木造住宅で建てた方がいいのではないかと思います。

しかし、物理的な強度も重要なところもあるわけです。

例えば都心部や住宅密集地など、そういったところに関しては隣の家が倒れかかってくる、隣の家が燃えてしまうというようなことがあるので、それであれば物理的な強度の高い鉄骨住宅で建てる意味があると思います。

都心部や住宅密集地

そうでないなら、やはり軽くて揺れにくくてそれでいてきちんと建物の構造躯体が強い木造住宅の方が圧倒的に被害が少ないわけです。

普通に建てるのであれば木造住宅、都市部や住宅密集地でどうしてもコンパクトな場所に家を建てるのであれば鉄骨住宅が向いています。

基本的には立地に合わせて住宅の構造躯体を選ぶのがベストです。

そしたら鉄骨が不利という話になりますが、そこを少しカバーしておくと、一応ハウスメーカーは鉄骨住宅が揺れるのはわかっています。

ですので、制震装置を入れています。

制震装置は、例えば積水ハウスだったらシーカス、ダイワハウスだったらシグマ型デバイス、へーベルハウスだったらサイレス、極低降状点鋼などです。

そういうものを入れて建物が揺れないようにしているわけです。

ですので、一応ハウスメーカー各社もなるべく鉄骨住宅が揺れないように工夫はしてはいます。

そうはいっても、物体の特性を制震装置だけで完璧にどうにかできるかと言われればやはりできません。

制震装置

制震装置を入れても、木造住宅より揺れます。

ただ、一応対策はされていますという話でした。

木造住宅も鉄骨住宅もそれぞれ良し悪しがあるので、結局このあたりの話をしても水掛け論になるというか、最終的にどっちがいいという着地はやはり難しいです。

なぜかというと、実際に地震が起きてみないとわからないことが多く、話が進まず着地点が見当たらないからです。

建築基準法の改正があったといっても、雲を掴むような話であって、結論が見えづらいのです。

ただ、鉄骨住宅であれ木造住宅であれ、まずは立地で構造躯体を選ぶことです。

その上で構造計算をしっかりしていれば、結論どちらでもいいと思っています。

地震に強い家づくりのための構造計算

構造計算は、許容応力度計算と性能表示、仕様規定といった形でいろいろな計算方法があります。

きちんとしたハウスメーカーや工務店は、許容応力度計算をしっかりして、耐震性能があることを示しているわけです。

構造計算

この許容応力度計算が1番難しくて、しっかりと耐震性能があるという根拠を示してくれるような計算式なので、これをやってもらうのがベストです。

ただ一方で、ハウスメーカーは型式適合認定というのを取得していて、一邸一邸構造計算をやりません。

これが不安の種になっている部分でもあるかなと思います。

大手のハウスメーカーや型式適合認定を取っているハウスメーカーは、戦後から始まる住宅の大量生産、これをずっと行っている企業なので、数多く住宅を建てられるスキームとして国が認めた構造躯体であれば構造計算をしなくても簡易的に家を建ててもいいという規定があります。

型式適合認定は審査基準が厳しくて取るのがなかなか大変です。

ですので、大手のハウスメーカー以外は型式適合認定が取れないという実態も実はあるのです。

ただ、大手以外のメーカーからすると、「一邸一邸耐震計算していないからよくない」と思ってしまいます。

素人側からすると、やはり一邸一邸構造計算された方が安心という考え方もあるので、わかるはわかります。

ただ、型式適合認定であれ許容応力度計算であれ、最終的には耐震等級3、ここさえ取れていればある一定の安心感はあると思うので、まずは耐震等級3を取ってもらうことが大切です。

時々工務店などですと、耐震等級3相当と言うことがあるのですが、相当は耐震等級3ではないので、耐震等級3があるかを計算してもらって、ハウスメーカーであれ工務店であれ、構造の強さがあるということをきちんと示してもらえればいいかと思います。

構造計算

一応耐震等級3さえ取っていればとりあえずはいいのかなとは思いますが、これもまた難しい話で、耐震等級3を取れれば安心かと言われればそうではないですし、耐震等級3さえ取得していればどんな大地震が来ても耐えられるかと言われれば、それもやはり違います。

というのも耐震等級3は、あくまで過去に起きた大地震、この程度であれば耐えられますよという一つの基準でしかないのです。

ですので、過去の大地震を上回るようなもっと巨大な大地震が来てしまったら、当然結果も変わってくるわけです。

実際に耐震基準は、大きな地震があるたびに見直しがされているので、そういった意味でもとりあえず耐震等級3を取っていれば現状は問題ないですが、耐震等級3さえ取っていれば安心安全かと言われれば、それはまた少し違うという風に思ってもらいたいです。

耐震等級は1 ・2 ・3がありますが、

  • 耐震等級1:数百年に一度程度発生するような地震に対して倒壊・崩壊しない程度の建物に付与されるもの
  • 耐震等級2:耐震等級1の1.25倍の地震の力に対して倒壊しない程度の建物に付与されるもの
  • 耐震等級3:耐震等級1の1.5倍の地震の力に対して倒壊しない程度の建物に付与されるもの
耐震等級1から3の説明

こういう基準が定められています。

この中で耐震等級3さえ取れれば安心と考えるのではなく、本来建物は耐震等級1の性能しかないものだとまずは考えて、耐震等級1の1.25倍の余裕があるのが耐震等級2の建物で耐震等級1の1.5倍の余裕がある建物が耐震等級3であるというような感じで考えるとわかりやすいのではないかと思います。

まとめ:地震に強い家づくりは、目的と手段で考えよう!

地震に強い家に関しては、一概にこれが正解だとは言えないところがあります。

地震に対する強さの話はよくカレーに例えて言っていて、耐震等級3を取ることが目的、それ以外は手段です。

ですので、カレーを作ることが目的で、それを作るためのカレールウは何でもいいのではという話です。

ルウはいろいろな種類がありますが、どれを使っても結局カレーにはなるわけです。

それと同じで、耐震等級3が取れるのであれば、○○工法、制震装置が入っていますというのはあくまで手段でしかないので、自分たちが「ここだったら任せられる」と思えたメーカーさん、そういう風に思えたつくり方を手段として選んでもらって、その手段を使って耐震等級3を取れればいいかと思います。

これが1番わかりやすいです。

カレールウを選ぶ時は、なんとなく好きだから選ぶと思います。

ハウスメーカーでやる地震に強い家づくりというのも似たような感覚で、結局のところ各社が「地震に強い」と言っているわけですし、それ相応の根拠や今までやってきたことが積み重なって現状の地位があるわけなので、そこは一つ信頼してもらいつつ、その中で自分がどのハウスメーカーが好きか、この工法だったら自分の命を任せられるなと思ったところに家づくりを依頼するのが1番わかりやすいです。

このような感じでカレーを思い浮かべてもらい、カレーを作るのが目的、手段がカレールウとします。

地震に強い家づくりはこれと同じで、耐震等級3をつくることが目的、それ以外は手段という風に捉えていただければわかりやすいと思いますし、比較検討しやすいのではないでしょうか。

皆さん是非とも参考にしてみてください。

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