今回は、2025年5月に発売になった住友林業のオリジナル全館空調PRIME AIR(プライム エア)について解説していきます。

PRIME AIR(プライム エア)に関しての私の正直な評価ですが、間違いなく住友林業でこれから家を建てる人全員が入れるべき設備だなと思っています。
本当に住友林業に迎合しているわけでもないですし、忖度のない評価をお伝えしているのですが、絶対に入れてほしい設備です。
このPRIME AIRが出たことで、よく比較検討される積水ハウスは窮地に立たされるのではないかと思っています。
それだけすばらしい商品なのです。
そんな住友林業の新商品、オリジナル全館空調のPRIME AIRは、
- なぜ今になってリリースされたのか
- 何がすごいのか
- 以前からある全館空調「エアドリームハイブリッド」と何が違うのか
- PRIME AIRの弱点とは何なのか
この辺に関して、諸々の情報を私の推察も込みでお話をしていきたいと思います。
これから家づくりをしようと思っている方で、特に住友林業で検討している方は、ぜひ最後までご覧ください。
住友林業がなぜ今になって全館空調をリリースしたのか
住友林業がなぜ今になって全館空調をリリースしたのか、その背景を住宅業界の現状を説明した上で、個人的な見解として述べていきます。
住友林業の考え方
そもそもですが、住友林業はもともと「第3種換気」とよばれる、外の空気をそのまま取り入れて機械で排気する換気方式が標準的な設定になっているハウスメーカーです。

また、2012年くらいから「エアドリーム ハイブリッド」とよばれる全館空調を発売してはいたものの、使い勝手の悪さやメンテナンス性の観点から、導入する人がほとんどいない設備になっていました。

そのため「通常の壁掛けエアコン推奨のハウスメーカー」という印象になっているのです。
こういうこともあり、
- 住友林業=機械に頼らない企業
- 住友林業=自然な温湿度を大切にする企業
- 住友林業=温度を通じて四季を楽しむ企業
といったイメージで捉えている方も多く、実際にそういうイメージで住友林業を解説している人が多くいるのも事実です。
ただ、それはあくまで個人が抱いている勝手なイメージで住友林業というハウスメーカーを語っているだけなのです。
「住友林業だから機械に頼らない」というわけではありません。
住友林業は、ただただシンプルに時代に合わせたいい家を柔軟に提案できるよう、選択肢を増やしているだけなのです。
この辺の意識がないと「住友林業が路線変更した」「セキスイハイムやパナソニックホームズのような家を建てようとしているのではないか」といったわけのわからない解釈が勝手に広がってしまう気がするので、一旦説明をしました。
まずは住友林業に対する勝手な先入観は一度捨て、フラットに見てください。
住友林業はただシンプルに、時代に合わせたいい家を柔軟に提案できるよう、選択肢を増やしているだけです。
経済的に合理的
なぜ今になって全館空調をリリースしたのかというと、断熱性能を向上させるより、空調で調整してしまった方が経済的に合理的だから、こういった理由が背景にあるのではないかと思っています。
というのも正直、断熱等級の最上級ランクである「断熱等級7」を取得しようと思って断熱材をゴリゴリに増やそうとすると、かなりの金額増になるのです。
私は断熱信者なので「住宅の性能を整えるためには断熱が最優先である」と考えています。
これはポジショントークではなく、まともに家づくりをしようと思ったら、断熱から整えていかなければ、さまざまな整合性が合わなくなるからです。
こういう話をすると「一条工務店に寄せている」などと言われるのですが、違います。
きちんと学べば、断熱から家づくりをしなければおかしな方向になるというのがわかるはずです。
私は今まで散々いろいろなハウスメーカーや工務店のコンサルに入り、断熱等級7にするための見積もりを取得してきました。
そして思ったのが、費用対効果が合わないということです。
というのも、断熱等級6から7に引き上げるためにいろいろなカスタマイズをすると、なんだかんだ250万円くらい追加の費用が発生してくるのです。
では、250万円くらいかけて断熱等級を6から7に変更したことで、ものすごく大きなメリットが得られるのかというとそんなこともなく、わりと趣味に近い領域になるかなとも思います。
もちろん、グラスウールの断熱等級6と発泡系の断熱材の断熱等級6では体感値が全然違いますし、断熱等級を判断するための数値であるUA値も平均値であるため、一部の断熱材を厚くしてしまえば簡単に等級を上げることができます。
ですので「断熱等級6があれば十分」なんていうことは、口が裂けても言えません。
使う断熱材や施工状況によっては、断熱等級7を目指したほうがいい場合もあります。
ただ、そういった複雑な事情を除いてシンプルに考えた場合であっても、断熱等級7にするために必要な約250万円の増額は、費用対効果的にはあまりよろしくないわけです。
特に昨今は物価の高騰もあって、いろいろな資材が高騰しています。
ですので、これから家を買おうと思っている人からすると「断熱材ばかりにお金をかけていられない」という、そんな事情もあるはずです。
国から補助金も出ていたりしますが、補助金だけではとてもではないですが差分の金額を賄うことはできません。
また、ハウスメーカー側の視点から言うと、例えば新しい断熱仕様を出したとしても、そこにかかった開発費用や人件費、労力、時間をペイできるだけの市場シェアを奪取できるかというと、それもやはり難しいのです。
なぜなら、住宅市場が尻すぼみだからです。
住宅業界は、ものすごく限られたパイの取り合いをしているわけです。
そのため、成長市場ではないのです。
そういった状況なので、どんどん新商品を出すという状況にもないですし、さらに出したとしても、金額が高くなって、誰も買えないという状況にもなりかねません。
ハウスメーカー側からすると、新しい断熱仕様をホイホイ出せないのです。
だったら、断熱性能はちょうどいい塩梅のままにして、全館空調で室内の温湿度を保つようにしたほうが、費用対効果はよかったりするのです。
もともと住友林業は、特殊な案件でなければ、だいたいC値1は切ります。
また、断熱性能自体も飛び抜けていいかと言われればそんなことはないですが、業界的には中の上くらいの立ち位置です。
そのため、元から建物の性能に関してはちょうどいい塩梅のハウスメーカーになるので、全館空調とも相性がいいのです。
そのため今回、住友林業は新しい断熱仕様を出す前に、多くの人にとっていい選択肢になり得る全館空調をリリースしたのではないかと思います。
これはあくまで個人的な見解ですし、住友林業を買いかぶりすぎかもしれませんが、買いかぶりすぎだとしても、今のタイミングでのリリースはばっちりだったのではないかと思います。
こうした「どこに、どのくらいの金額をかけるのか」という費用のバランス感覚は、実際にハウスメーカーの人と打ち合わせをしたり、工務店のコンサルに入ったり、そういうふうに動いている人からすると当たり前のように感じる感覚なのです。
やはり、物価の高騰がえげつないですし、注文住宅を買える人自体がかなり少なくなってきている印象です。
だからこそ今までと違って、より費用を意識した上でいろいろとバランス調整をしていかなければならない時代になってしまっているのです。
住友林業のオリジナル全館空調PRIME AIR(プライム エア)のすごいところ
ここからはより深掘りをして、住友林業のオリジナル全館空調PRIME AIR(プライム エア)の何がすごいのかについてお話していきます。
住友林業の全館空調PRIME AIRのすごいところですが、それは、シンプルな機構でできていて、なおかつ除湿・加湿ができるということです。
これがものすごくポイントが高くて、すごいのです。
その理由を説明するためには、背景から説明しなければならないので、まずは大枠から説明します。
全館空調のシステムとは
そもそも全館空調という機械は、換気システムで空気をきれいにして、そのきれいにした空気を空調設備で温度調整し、送風機で家全体に空気を送り届けるというシステムです。
つまり、わかりやすく説明すると、
第1種換気 × 個別エアコン × 送風機 = 全館空調
なのです。
「全館空調」という1つの機器ではありません。
いろいろな機器の複合体、これが全館空調の正体です。
そしてこの基礎的な知識をベースに、他のハウスメーカーの全館空調を見ていくと、いとも簡単に読み解くことができます。
例えば、パナソニックホームズの全館空調も、基礎下から給気して第1種換気に空気を通し、きれいになった空気をエアコンに取り込み、送風機を使って全部屋に空気を届けるというシステムになっています。

まさに、
第1種換気 × 個別エアコン × 送風機=全館空調
という公式どおりです。
また、ヘーベルハウスの全館空調は、天井埋め込みのエアコンになっているため、
第1種換気 × 天井エアコン × 送風機=全館空調
になっています。

いろいろな機器の複合体でできているというのは変わりないわけです。
このような感じで、全館空調の原理原則を知っておくと、どういう仕組みで家全体に空気を送り込んでいるのかがわかるのです。
そういうのが見えてくるのです。
これがわかれば、わざわざ全館空調というものを入れなくても、疑似的に全館空調をつくり出せる「全館空調もどき」というのをつくれるわけです。
簡単に説明すると、第1種換気は、室内の空気と外の空気を足し合わせて、なるべく室内の温度に近い空気にしてろ過しつつ、家全体に新鮮な空気を送り込むシステムです。
この特性を利用して、第1種換気の室内の空気を取り入れる口の近くに、個別エアコンを設置します。
そうすることで、エアコンの空気がダイレクトに第1種換気に流れ込むので、強制的に全館空調のような動きをつくれるというのが「全館空調もどき」になります。

ですので、わざわざ複雑な機構を組まなくても、ありものを使って換気と空調設計をしっかりやれば、簡単に全館空調っぽいものはつくれてしまうのです。
ただし、あくまでもどきなので、完全に全館空調に変わる役割になるかと言われれば、そういうわけではありません。
「もどき」を完璧な全館空調に仕上げるのなら、ありもののパーツをつなげるための設備が必要で、それをきれいに製品化すれば、全館空調になるはなります。
全館空調もどきの考え方を製品化
「全館空調もどき」の考え方をきれいに製品化したのが、今回住友林業から新たに登場した全館空調PRIME AIRなのです。
まず、第1種換気であるデシトップマルチベントが外気を給気するのと同時に、室内の空気を排気します。

この給気した外気と排気した室内の空気を足し合わせて、フィルターでろ過するのですが、これによって室内の温度に近い、きれいで新鮮な空気が完成します。
この完成した空気は、デシトップマルチベントが、夏は除湿、冬は加湿を行います。
このデシトップマルチベントは「デシカント換気」とよばれる第1種換気で、この換気システムを導入することで、1年中室内の湿度を40〜60%に留めることができるとされています。
ちなみに、デシトップマルチベントは「東プレ」というところがつくっているものなので、住友林業がオリジナルでつくっている換気システムではありません。
ありものを使っているだけです。
なんならこの機械は、積水ハウスでもヘーベルハウスでも入れられます。
そして、除湿・加湿されたきれいな空気は空調機械室のフィルターボックスから出てきて、その出てきた空気はルームエアコンに取り込まれます。
このルームエアコンは、住友林業用に多少の改良はされていますが、ほぼ市販品と一緒です。
つまり、これもありものを使っているわけです。
ルームエアコンに取り込まれ温度調整された空気は、送風ファンを通じて各部屋に分配されることになるのです。
そのため、ルームエアコン1台で家全体の温度調整が可能になっているのです。
まさに、
第1種換気 × 個別エアコン × 送風機 = 全館空調
の公式どおりになっていて、それがシンプルな流れで形成されています。
この全館空調は、ありものをただシンプルに組み合わせただけなのです。
そして、それをきれいに製品化したものなので、非常に合理的なつくり方をしています。
しかもこの合理的なつくり方をすることで、他のハウスメーカーではあまりない、除湿・加湿機能のついた全館空調になっていて、

さらにはシンプルな機構ゆえに、メンテナンスが少なくて済むようになっているのです。

この全館空調なら、ルームエアコン1台で家全体を暖かくしたり、涼しくしたりできますし、高効率エアコンを何台も入れるよりも、将来的なコストも確実に安くなります。
室外機の数も減るので、建物の意匠的にも間違いなくよくなるのです。
ですので、本当にすばらしい商品だと思います。
というわけで、割と専門的な話になってしまったので、ここで一旦話をまとめておくと
- 住友林業の新商品全館空調PRIME AIRは、ありものをつなげただけの全館空調
- それゆえに合理的でシンプルなためメンテナンスもしやすい
- 除湿・加湿ができる
- エアコン1台で家全体の温度調整が可能
- エアコンや室外機の台数が少なくなり、意匠性も向上
- 長期的なコストを抑えられる
以上になります。
こうみるとわかるように、メリットだらけなのです。
住友林業の全館空調エアドリームハイブリッドとは
住友林業が以前から販売している全館空調「エアドリームハイブリッド」についても簡単に触れておきます。

エアドリームハイブリッドは現在も継続して販売されており、空調室に第1種換気、個別エアコン、送風機、これらをすべてまとめた巨大な機械を入れることで、家全体の温度を管理しています。
ただ、機械は複雑になればなるほどメンテナンスが発生します。
実際にエアドリームハイブリッドは、それを入れると年間で5万円くらい支払うメンテナンス契約をしなければなりません。
つまり、それなりのコスト負担が発生してしまうわけです。
しかも、PRIME AIRとは違い、除湿も加湿もできません。
そのため、個人的な見解にはなりますが、残念ながらエアドリームハイブリッドはほとんど採用されなくなり、緩やかに廃盤に向かっていくのではないかと思っています。
ということで、住友林業で全館空調を入れるのであれば、PRIME AIR一択になり、その特性からも、住友林業で家を建てるのであれば、全員が入れるべきシステムになっていると思います。
住友林業の全館空調PRIME AIRの弱点
実はPRIME AIRにも弱点があります。
そのPRIME AIRの弱点について説明します。
施工条件がある
まずは施工条件があるという点です。
具体的には、採用可能地域は断熱地域の5〜7地域のみになります。

断熱地域の1〜4地域は採用不可となるのでご注意ください。
断熱地域区分は国土交通省のHPを参照ください。
理由は、デシカントが凍結して、うまく作動できなくなる可能性があるからです。
これは住友林業側が決めたルールというより、デシカントの販売元である東プレ側が決めているルールです。
そのため、積水ハウスやヘーベルハウスでこのデシカントを採用しようと思っても、同様に断熱地域の1〜4地域では採用不可となります。
また、階数は平屋、2階建のみです。
地下室や3階建てでは利用できません。
また、塩害地域の場合は、海岸から2km以内は施工不可です。
防耐火仕様の家の場合は、省令準耐火仕様のみ採用可能です。
延べ床面積は、
- 平屋の場合:32坪まで
- 2階建ての場合:38坪まで
の対応となり、各階19坪目安です。
そして断熱等級は6等級でないと施工できないという条件もあります。
以上の条件があるため、PRIME AIRの採用を検討している方は、まずは条件に合致するかどうかを確認してみてください。
条件から外れる場合は、今までの住友林業らしく個別エアコンで対応するしかありません。
ルームエアコンの機種が絞られている
使えるルームエアコンは、保証の関係で機種が絞られています。
さらにそのルームエアコンは、住友林業がカスタマイズを加えているものなので、買い替えの際には住友林業からしか購入できません。
日本の家電製品は数十年経つと規格が廃盤になり、新しいものを入れようと思っても入れることができないといったことがあります。
それを考えると、間に住友林業が入ってくれるというのはありがたいことかもしれませんが、機種が絞られ、住友林業の言い値でエアコンを購入しなければならない点については、人によって捉え方は変わってきそうかなと思います。
住友林業ファンにとってはこの辺はあまり気にならないかもしれませんが、アンチ住友林業ファンからすると、住友林業に搾取されているといった捉え方をする人もいるかもしれません。
住友林業のオリジナル全館空調PRIME AIR(プライム エア)の価格
価格についてですが、だいたい「高効率エアコン4台+第1種換気」を入れるのと同等の金額のようです。
結論、安いわけではありませんが、かといってものすごく高いわけでもないといった印象です。
家の規模によってもダクトの長さが変わってきたり、施工の手間も変わってきたりするため、一概に金額を出すことができないのですが、目安としては「高効率エアコン4台+第1種換気」くらいの金額だと思っていただければと思います。
そして、結論としては「安くもなければ高くもない」というような価格設定となっています。
ありものを組み合わせているだけなので、極端に安くなることもなければ、極端に高くなることもない、それなりの金額という感じです。
住友林業のオリジナル全館空調PRIME AIR(プライム エア)を徹底解説のまとめ
住友林業のオリジナル全館空調PRIME AIR(プライム エア)について解説してきました。
全館空調は、しっかり理屈を理解していないと、採用すべきか、採用してはいけないのかがわからなくなります。
その結果、各論的な比較になってしまうわけです。
このハウスメーカーはこの機能がついていて、このハウスメーカーはこの機能がついている、どの機能がいいんだ……と、そういう比較になってしまうわけです。
各論的な比較が無意味とまでは言わないですが、そればかりやってしまうと、根本の部分がわからなくなります。
わからなくなるとやはり迷子になるのです。
それですと、間違った判断をしかねないので、しっかりと学んでいただき、施主力を上げるようにしてください。
そして最後に告知です。
今現在、公式LINEに登録をしていただくことで、全国の優秀な住宅営業マンや設計士のご紹介、大手ハウスメーカー攻略カタログのプレゼント、これらの特典を受けることができます。

また、私が作った自ら担当者を選べるネット版住宅展示場メグリエに登録をしていただくと、無料で私との個別面談ができるようになります。

各ハウスメーカーの弱点や比較ポイントを知りたい、注文住宅を買いたいけれど何から始めればいいのかわからない、最短で自分にあったハウスメーカーを知りたい、これらに該当する方はこの機会にぜひ公式LINEとメグリエの登録を済ませておいてください。