空間の雰囲気を決定づけるものとして「照明」があります。
ホテルに行くと照明がこじゃれているように、最高の空間にするには最高の照明計画を知っておく必要があるので、今回は照明について深掘りをしていきます。
照明計画を考えるにあたり、各論的に「この照明がいいですよ」という話をすればわかりやすいと思いますが、それですと応用が効かなくなります。
絶対にその照明を入れなければいけないという短絡的な思考になってしまうため、人と被りやすくオリジナリティもなくなります。
自分たちの頭で考えて照明選びをしていく、それをやるからこそ注文住宅のおもしろみがあるのではないかと思います。
ですので、まずは照明の基本的な構築の考え方について触れた上で、おすすめの照明を紹介します。
照明計画の考え方
照明計画の基本的な考え方についてです。
- 間接照明で空間全体の照度を取る
- 必要な部分にダウンライト・グレアレスライト・フットライトを入れる
- 装飾でペンダントライトを入れる

この3ステップで照明計画をやれば、基本的に失敗することはありません。
ベースは間接照明
マンションやアパート、安い建売は、ダウンライトがたくさん入っています。

ダウンライトは確かにたくさん付ければ明るさは取れますが、天井面に穴が開くので、見栄え的によくないわけです。
日本は、昔は「陰影礼賛」という文化があり、暗がりにこそ美しさがあるという文化でしたが、戦後から「明るさ=豊」というイメージがついてしまいました。
ナショナル電気(今のパナソニック)が「明るさこそが富」というCMを出したのです。
それにより「家全体を照明で照らすことこそ豊かに生活できている証」という印象が当時植え付けられてしまいました。
そこから日本は「一室一灯照明」といって、1つの部屋に対して1個の照明で部屋全体を明るくするという文化が根付いたのです。
シーリングライトを部屋の真ん中に付けて、そこから白い光で部屋全体を照らします。

あれは落ち着かないと思います。
例えばマックや日高屋などは、照明が白い光で煌々と照らされています。
あれは、煌々とした明るい照明にすることによって、お客さんの気を散らしているのです。
早食いを促進させる効果があるのです。
ガヤガヤしていて、しかも明かりが煌々としているので落ち着きません。
脳が覚醒状態になり、それ故に早食いになり、高回転率につながるという仕組みです。
一方で、こじゃれた料理店の照明は暗いです。
暗いのは、目の前のものに集中させるためです。
目の前の料理をより味わってもらいたいというのと、照明を落とすことでリラックスできるという効果もあります。
こじゃれた料理店が暗い照明にしているのは、ゆったりとした気持ちで過ごしてもらいたいからということなのです。
ゆったりすると回転率は下がりますが、そのような店は高単価なので、そこまで高回転率を目指さなくてもいいわけです。
このような感じで、白い光は脳を活性化させる明かりになり、オレンジ色の光やトーンを落とした光は、リラックスした気持ちになったり、目の前のものに集中したりする効果があるのです。
ですので、照明の光は基本的に、全体的にはトーンを落としたオレンジ色の光をベースに間接照明で部屋全体を反射光で明るくするという考え方です。
ダウンライトで穴ぼこだらけの照明にするのではなく、間接照明できれいな天井面を保ち、白い光ではなくオレンジ色の光で部屋全体を包み込むような照明計画にするのが最初のポイントです。
とにかくダウンライトメインやシーリングライトメインの照明計画にはせず、まずは間接照明を基準に照明計画を立てていただきたいです。
「間接照明だけだと少し不安」という人もいると思います。
ですので、調光式の間接照明にするのがおすすめです。
調光式の間接照明とは、ダイヤルをねじれば明るさが調整できるものです。
それにすることで、どの時間帯でも自分の好きな明るさにできます。
これは結構ポイントなのですが、時間帯によって部屋の中の暗さ感は違ってきます。
というのも、例えば夕方は西日が強いです。

この時に、室内側の間接照明は光の度合いで負けてしまいます。
外の方が明るいので、室内が暗く見えてしまうのです。
間接照明メインで家づくりをすると一番厄介に感じるのが夕方です。
外からの光と室内の光のギャップが大きすぎるので、夕方はとにかく室内が暗く感じやすいです。
朝方は日差しがあまり入ってこないので、間接照明の明るさでも十分明るく感じます。
昼に関してはダイレクトに光が入ってくることがあまりないので、結構バランスが取れます。
しかし、夕方は西日の影響で外から入ってくる光が強いため、暗く感じやすいのです。
日が完璧に沈むと外が暗くて室内が明るくなるので「室内は十分明るい」という感覚になります。
ですので、この時間帯による明るさに対応するためには、調光式にしなければなりません。
特に間接照明でメインの照明をつくるとなると、調光式はマストです。

一旦これで室内のベースの照明を整えます。
必要な部分にダウンライト・グレアレスライト・フットライト
料理をする時に手元が明るい方がいい、廊下で歩いている時に足元を照らしてほしいなど、スポット的に必要な照明は必ずあります。
この場合は、ダウンライトやグレアレスライトと呼ばれている、ダウンライトと形状は同じですが真下にだけ光が当たるような照明、そのようなものを入れたり、フットライトという足元だけ照らしてくれるライトを入れたり、必要なところにのみそのような照明を入れることによって、天井面の穴が必要最低限になります。

そうすると意匠的によくなり、気密性も高まります。
天井に穴があいていると気密性が悪くなります。
本来、ダウンライトをたくさん付けて天井面に穴をあけた場合、1つ1つのダウンライトに対して気密ボックスというものを天井面に付けます。

それを付けてダウンライトを設置することによって、建物の気密性が担保されるということをやらなければならないのですが、その気密ボックスも結構いい値段するのです。
施工費込みの金額で、1個あたり1万円くらいです。
ダウンライト30個付けたら、普通に30万円いきます。
みなさん間接照明の方が金額が高いと思っていますが、そんなことはありません。
ダウンライトをたくさん付ける場合表面的には金額が安いですが、実は気密ボックスまで付けて施工することを考えると、ダウンライトの方が高くなるのです。
中途半端な建物づくりをするなら、ダウンライトの方が安いですが、それでは嫌だと思います。
手抜き工事をやっているのと変わりません。
表面的にはわからないから「気密ボックスなんかつけなくていいや」「ダウンライトの方が安いし、確かに天井面が穴ぼこだらけになるけれど、ま、そっちでいいんじゃない?」という推し進め方もあるはありますが、気密が悪くなったら台無しです。
ですので、少し金額が高くなるかもしれませんが、間接照明でまずはメインの照度を取って、必要な部分にダウンライトやグレアレスライトを入れていき、最小限のところに気密ボックスを入れて気密性能を担保する、そして最後に、装飾的な意味合いでペンダントライトを入れるのがいい方法だと思います。
装飾でペンダントライト
ダイニングテーブルの上に置いてあるものだったり、キッチンの上に複数のライトを下げてアクセントを取るものだったり、それをペンダントライトといいますが、このペンダントライトは装飾なので、明るさは期待しません。

要は、そこの空間の個性を表すものとなります。
ペンダントライトは付けなくてもいいですし、付けるのであれば、自分たちの個性を表現できるもの、それを選ぶのがベストになります。
よく「ペンダントライトは何がいいですか?」と聞く人がいますが「好きにして」というのが回答です。
これは適当な話ではなく、自分たちの個性を表すものなので「好きにしていいよ」という回答なのです。
ただ、ペンダントライトは装飾的な意味合いが強いので「手元を明るくしたい。そのためにペンダントライトを付ける」というのはNGです。
もちろんペンダントライトの中にも装飾的な要素がありつつ、さらに手元を明るくするタイプの照明もあるにはあります。
例えばルイスポールセンのPH5は最たる例です。

UFO型の北欧のよくある照明なのですが、光を発している光源がカバーになっているので眩しくありません。
さらにそのUFO型のお皿が何重にも重なって、手元がしっかり明るくなるように設計されているので、ルイスポールセンのPH5に関しては、空間の個性を出しつつも手元がきちんと明るくなるという照明になっています。
ただ、ルイスポールセンのPH5を入れることが全てではありません。
手元を明るくしたいのであれば、普通にグレアレスライトやダウンライトを入れればいいと思います。
光源がむき出しの他のペンダントライトで手元を明るくしようと思っても、光が拡散してしまうため手元は全然明るくなりません。
あくまでペンダントライトは装飾的なイメージが強いと思って設置しなければ、照明計画は失敗します。
全体的な空間の明るさは、少しオレンジ色っぽい光でメインの空間を構成します。
間違っても、真っ白な光は脳を覚醒させるのでよくありません。
そのような原理原則を頭に入れていただいた上で、次項でおすすめの照明を紹介します。
これらは装飾的な意味合いで付けてもらう照明なので、照明自体にあまり照度を求めてはいけない、これは大前提として覚えておいてください。
おすすめの照明1:BOCCI14
ガラスの玉がいくつか連なっている照明です。

これは福岡のリッツ・カールトンの入り口にある照明で、すごくきれいな照明です。

ガラスのドラゴンボールのような大きさの球の照明がいくつかぶら下がっているというもので、これはモダン系の照明です。
モダンかモダンではないかは、素材がガラスか金属かという分け方もできますが、基本的な分け方は、光源が直接見えるか見えないかです。
北欧系の照明は、基本的に拡散光をメインとしたものが多いです。
ルイスポールセンのPH5も、光源が直接見えず光を拡散させる照明です。
基本このようなものは北欧系に該当してきますし、日本も同様に拡散光をメインとした照明が多いです。
例えば時代劇に出てくる提灯もそうです。

蝋燭があり、その周りに和紙があって、それによって光を拡散させるつくりになっています。
ですので、北欧と同じで和系の照明も拡散光です。
一方モダンと呼ばれる照明はその逆で、光源が直接見えることが多いです。
例えば昨今流行りのホテルライクと呼ばれるテイストです。

ホテルライクというテイストは実際にはなく、モダンスタイルでありインターナショナルスタイルというのが正式な名称なのですが、そのようなモダンスタイルやインターナショナルスタイルの家をつくることを考えると、光源が直接見えるBOCCIのような照明を使うと空間にマッチしやすいです。
装飾としてもきれいなので、階段の吹き抜けやダイニングテーブルの上に付けるといいと思います。
おすすめの照明2:Lamina
これは北欧系の照明です。
北欧でつくられているため北欧系の照明と言えるのですが、基本的に光源が直接見えず反射で光を拡散させる照明は、いわゆる北欧系や日本系の内装テイストにマッチしやすいです。
昨今流行っているジャパンディや和モダンの家づくりには、Laminaの照明が合います。
天井にワイヤーが出ていて、棒状の照明が吊り下がっているタイプのものですが、海外でもこのような照明が流行っています。

流行りでもあるので、Laminaの照明は参考にしていただき、流行りに乗る人は取り入れてもらえればと思います。
特に北欧系、和モダン、ジャパンディのテイストで家づくりをしたい人は、ぜひ採用してみてください。
おすすめの照明3:マイケル・アナスタシアデス
すごく特徴的で、ライン照明で棒状の照明です。

マイケル・アナスタシアデスは光源が直接見えるのです。
ですので、ホテルライク・モダンスタイル系の家づくりには、マイケル・アナスタシアデスの照明が合います。
おすすめの照明4:セルジュ・ムーユ
生き物、特に昆虫をベースにつくられた照明なので「ナナフシのよう」といわれていて、特徴的な形をしています。
目のような形のスタンドライトは360°器が回転するので、好きな方向に光を照らせます。
ビンテージの本物は1つ400万円します。
このセルジュ・ムーユの照明は、IDEEというところからリプロダクトで出ているのですが、ビンテージ品と比較をすると塗装が少し違います。
ビンテージ品は塗装がツヤツヤしていますが、IDEEのものはツヤ感がありません。
塗装の色味が、ビンテージ品と現行品で大きく異なっています。
形状に関しても、ビンテージ品は横に広がっていますが、現行品は縦です。
ですので、若干形状が異なっています。
それはスタンドライトの特徴ですが、それ以外にも天井付けの照明や、

スタンドライトもキングギドラのような三つ首の照明もあります。

そちらは、塗装の色味は違いますが、ビンテージ品と現行品でほとんど変わりません。
今回おすすめしたいのは、天井付けです。
いろいろな方向に首を振れて、結構いいです。
初見の人からすると「いや、こんな奇妙奇天烈な照明入れたくないよ」と思うと思いますが、例えば、有名なインフルエンサーでタキマキさんがいますが、あの方は部屋にジャンヌレの椅子を置いています。

ピエール・ジャンヌレは、ル・コルビュジエの従兄弟ですが、ジャンヌレがデザインしたイージーチェアと呼ばれているものを、家の中に置いてあるのです。
タキマキさんに憧れる人は結構多いです。
そのため、本物と言わずとも「自分もリプロダクトのジャンヌレのイージーチェアを買いたい」という人がいるのですが、ジャンヌレのイージーチェアとセルジュ・ムーユの照明は、つくられた年代が一緒なので、非常にマッチしやすいのです。
ですので「ジャンヌレを入れたい」「有名なインフルエンサーが使っているような家具を入れたい」という方は、このセルジュ・ムーユの照明がおすすめです。
セルジュ・ムーユの照明は形状が奇妙奇天烈かもしれませんが、使い勝手がとてもいいです。
IDEEさんに出向いてもらえれば実物を見られると思うので、ぜひ検討していただければと思います。
おすすめの照明5:イサム・ノグチ
イサム・ノグチの「AKARI」という照明があるのですが、これは和紙の球体の照明です。

ジャパンディ・和モダン系のデザインに合いやすい照明で、使い勝手もいいのでおすすめです。
イサム・ノグチは彫刻家兼造園家、あとはデザイナーとして、幅広い分野で活動していた20世紀を代表する芸術家の1人です。

東洋と西洋の文化を融合させた、シンプルで機能的なデザインのものをつくるというのが彼の特徴です。
そのうちの1つのプロダクトとして「AKARI」という照明がつくられました。
昨今流行っているジャパンディや和モダン系のスタイルと非常に相性がいいので、そのようなテイストを望まれる方は、イサム・ノグチの「AKARI」を採用してもらえればと思います。
おすすめの照明5選のまとめ
今回は、おすすめの照明を5つ紹介させていただきました。
照明はインテリアの1つなので、自分がどういうテイストの家を建てたいかによって選ぶ照明は変わってきます。
ホテルライク系のデザインをやりたい方はBOCCI、

マイケルアナスタシアデス、

セルジュ・ムーユ、

今回紹介はしませんでしたが、トムディクソンの照明など、

このような光源が直接見える照明は相性がいいので、ぜひともモダンスタイル・ホテルライク系の家づくりを検討している方は積極的に取り入れていただければと思います。
一方で、北欧系やジャパンディ・和モダン系のテイストを求めている方は、Laminaや

イサム・ノグチなど、

この辺を入れていただくといいと思います。
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