今回は、私の紹介で実際に契約になったお客さんの間取りを解説していこうと思います。
今回紹介する間取りはこちらになります。
北側立地の土地に建てる延床107.37㎡の家で、坪に換算すると32.47坪になります。
坪数的にも一般的な大きさですし、真似できるポイントもたくさんあります。
ですので例えば
- 予算的に北側の土地を買った方がいいけれど、本当に買ってもいいものなのか不安に思っている方
- 家が広く見える工夫を取り入れて、少しでもゆったりとした空間をつくりたい方
- 間取りの勉強をしたい方
これらに該当する方には絶対に役立つ情報となっているので、ぜひとも最後までご覧ください。
北側玄関の土地の間取りポイント1:思い切って南側を閉じる
最初にお伝えするこちらの間取りのポイントは、『思い切って南側を閉じる』という点です。
というのも、先ほどもお伝えしましたが、今回の土地は北側立地の土地です。
北側立地の土地を皆さんイメージできますか?
具体的に説明すると、日差しがよく入ってくるとされている南側には何かしらの建物が建っていて、反対の北側に道路が接道されている土地のことです。
こういった土地は
- 南側に建物が建っている確率がかなり高いため、日差しがほとんど入らない
- 土地の金額が安く設定されている
大きく分けるとこれら2つの特徴が存在するわけです。
これから土地を探して家を建てる方は、恐らく一度は目にするであろう土地のはずです。
ただ、今お話した通りで、北側の土地は安いとはいえ、なかなか買うのに勇気のいる土地なわけです。
やはり自分の家の前に他の人の家が建っていると、いくら南側に大きな開口を設けていたところで、全然陽の光が入ってきません。
さらに目の前の建物からの圧迫感もけっこう感じます。
実際に私もすごい昔に北側立地の戸建に住んでいたことがありましたが、もうそれはそれは暗かったですし、目の前の建物からくる圧迫感もすごかったです。
普通に何も考えずに家を建てると住みづらくなってしまうのが北側立地の土地なのです。
しかし、安いのです。
昨今、いろんなものが高騰していますよね?
ですので少しでも価格を抑えたいと思う人も多いと思います。
ただ価格を抑えて家を購入できたとして、陽の光がほとんど入ってこない生活や、日々目の前の家からの圧迫感を感じつつ、その家の壁を見続ける生活は誰だってしたくないはずです。
誰が好き好んで目の前の家の壁を見ながら過ごすんだという話だと思うので、こういう北側立地の土地を購入する場合は何かしらの工夫をしないといけないわけです。
では、その工夫とは何なのかというと、それが今回1つ目に紹介する、『思い切って南側を閉じる』ということなのです。
北庭は日本の伝統的な庭づくりの方法
実際にプランを見てもらえればわかると思いますが、南側の開口はリビング部分に1つと、あとは洗濯スペースに1つ、合計2つしかないわけです。
しかも洗濯スペースの南側の窓に関しては、掃き出し窓ではなく、明かり取りのために設置した腰高の窓になります。
ですので実質、南側の窓はリビング部分のみと言っても過言ではないのです。
南側に1つです。
普通だったら南側にドンと窓を設けて間取りをつくるのが一般的です。
それにも関わらず、あえてそうはしていないわけです。
それもこれも先ほど説明した通りで、南側には目の前に建物があるため、大きく開口を取っても陽の光は入ってきにくいのです。
さらに目の前の建物からくる圧迫感を感じながら住むことになるからです。
そのため、今回のプランではあえて南側は閉じてしまい、北側にメインの開口と庭を設けているのです。
北側ですよ?
皆さんこの図面を見て、南側がメイン開口と庭だと思いませんでしたか?
それは違います。
何度もお伝えをしますが、メインは北側です。
ただこの話を聞いて「いやいや、北側がメインとか何言ってるの?」「どう考えてもどう見ても、南側の方がメインの開口、メインの庭じゃん!」そう思われる方もいるとは思います。
確かにその気持ちはわかります。
普通、北側にメインの開口と庭をつくるというのはしませんからね。
でも実は、北側に開口と庭をつくることというのは、日本の伝統的な建築手法だったりもするのです。
ですので、北側に上手く開口と庭をつくってあげられれば、家の住み心地の良さや魅力を何倍にも引き上げてくれます。
これがどういうことか、もう少し詳しく説明すると、例えば京都にある仁和寺(にんなじ)というお寺もそうなのですが、日本庭園があるところはだいたい北側に庭があるのです。
それがなんでかと言うと、実は北側は1日を通して淡い光が降り注いでいるのです。
そしてその淡い光というのが植栽にあたると反射して、薄緑色の光が室内に入ってくるようになります。
夏場は特にそうですが、陽の光が植物の葉に当たって、それが反射することで空間が緑色になっている所は、写真などで見たことがありますよね?
そのようなイメージです。
北側でも反射を使うことで、室内に上手く光を入れられます。
そのため皆さんが思っている以上に、室内は明るくなるのです。
こういうことからも、北側に開口と庭をつくるということは日本の伝統的な建築手法でもあり、何らおかしなことではありません。
おかしいのは、何も考えずにとりあえず南側に開口を設けて、とりあえず南側に庭をつくることの方なのです。
北庭は日本の伝統的な庭づくりの方法であり、そこから反射を通じて入ってくる光は、皆さんが想像している以上に明るいものだということ、このことは絶対に覚えておいてください。
南側の開口と庭の役割
一方で、「一見するとメインに見える南側の開口と庭はどんな役割があるの?」という話だと思うのですが、これはリビングとダイニングを延長して広さを演出するという目的で配置しているものになります。
というのも今回のプランは32.47坪ということで、わりとコンパクトなプランです。
そのため何かしら部屋を広く見せる工夫をしてあげた方がいいですよね。
例えば家のコンパクトさを解消するために、まずリビング南側とダイニング東側にそれぞれ窓を設け、視線が抜ける先をつくっています。
その上でウッドデッキを付けることで、ウッドデッキ上部には軒下空間をつくれる設計としています。
これにより、ウッドデッキ部分は本来外部空間にも関わらず、半屋内空間のような位置づけとなり、リビングとダイニングの広さを演出するのに一役買ってくれる、そんな設計になっています。
あとこれはつくり込み次第ではありますが、よくSNSで見かけるウチとソトを繋げる提案も容易にできるプランとなっているわけです。
皆さんもイメージできると思いますが、普通に建物を大きくするよりも、ウッドデッキをうまく使って屋内空間を延長する工夫をしてあげた方が金額的にも安く済みます。
見た目も、居心地の良さも、コスト面も、非常に優れた提案だなと私は思います。
そしてリビングとダイニングを延長して広さを演出したとしても、視線の抜ける先が殺風景だと寂しいので、隅に植栽を植えているというようなイメージです。
このように説明されると、この間取りの見え方が変わってきますよね?
とにかく、一見すると南側の開口と庭がメインのように思えると思いますが実は違っていて、南側の庭の役割は、リビングとダイニングを延長して広さを演出するためのものであるということ、そう設計されているということをご理解いただければと思います。
ということで、最初にお伝えしたこちらの間取りのポイントは、『思い切って南側を閉じている』という点で、
- 北側にメインの開口と庭を設けている
- メインに見える南側の開口と庭は、リビングとダイニングを延長して広さを演出するためのものである
ということでした。
ちなみにこれは余談にはなりますが、最近シンボルツリーで人気のアオダモという木があるのですが、その木は元々山間部に生えている木なので、直射日光が苦手なのです。
そのためアオダモと北庭は、けっこう相性がよかったりするのです。
あとは南側に建物が建っている場合、目の前の建物の壁を勝手にキャンバス代わりに使って、植栽を映えさせるという方法も存在します。
その場合は少し大きめの木を植えてあげることで、北側立地の特性を逆手にとって、上手く活用することができるのです。
ちょっとした豆知識にはなりますが、そういう工夫もできるんだということを覚えておいてもらえると間取りの考え方も変わってくるのではと思います。
北側玄関の土地の間取りポイント2:敷地に対して斜めに建物を配置している
続いてこのプランの2つ目のポイントは『敷地に対して斜めに建物を配置している』ということです。
これは見ていただければわかりますが、今回のプランは斜めに配置されていますよね?
気づいた方は気づいたかもしれませんが、普通、土地と並行にプランを作るものなのです。
ですので例えば、適当にネットで間取りの画像を調べてもらえればわかると思いますが、ほとんどの場合、土地と並行になるようにプランを作っているはずです。
しかし、今回はあえて敷地とは並行ではなく、少しずらした形で建物が配置されているわけですが、それが一体なぜなのかというと、理由は2つあります。
陽の入り方を調整するため
1つ目は『陽の入り方を調整するため』です。
当然ではありますが、方位を正確に捉えられるかどうかで陽の光を効果効率的に家の中に取り入れられるかどうかが変わってきます。
そのため、今回のプランに関しては
- 北側から来る淡い光
- 東側から来る朝の陽の光
- 南側から来る昼間の陽の光
これらのことを考慮して、あえて建物を斜めに配置しているのです。
「いやいや、そんなの当たり前じゃない?」と思われるかもしれませんが、方位に合わせて建物の向きをいじる発想がある設計士はハウスメーカーでほとんどいません。
それだけ今回のプランは、レベルの高い提案なのです。
これはご理解いただきたい部分ですね。
先ほど今回のプランに関しては
- 北側から来る淡い光
- 東側から来る朝の陽の光
- 南側から来る昼間の陽の光
これらのことを考慮して、あえて建物を斜めに配置していると言ったと思いますが、「南側に建物が建ってるのに、昼間の陽の光って入るの?」と疑問に思った方もいると思います。
「さんざん南側からは光が入らないって言ってたじゃん!!」という感じだと思いますが、一般的に目の前の土地から6m離れたところに家を建てれば、北側に建物が建っていても南側から光が入ってくるとされています。
この知識を念頭にプランを見てみるとわかりますが、ちょうど南側の隣地から6mくらい離れた位置にリビング部分だけがくるように設計されているのです。
すごく芸が細かいですよね。
また話が少し逸れますが、芸の細かさで言ったら、リビング部分の斜めの壁も、東からくる光が少しでも奥に届くように考えてプランニングされています。
ここも実はすごく考えて作られているのです。
こうやって説明されると「なるほど!」と思いますよね。
こういった陽の入り方に対する工夫は、そもそもの話として、敷地に対して建物をずらしたからこそできる提案なのです。
ということで、これが今回はあえて敷地とは並行ではなく、少しずらした形で建物を配置した理由の1つ目になります。
敷地の四隅に庭をつくりやすくなる
敷地と並行ではなく、少しずらした形で建物を配置している理由の2つ目は『敷地の四隅に庭をつくりやすくなる』ということです。
というのも、今回のように少し大きめの土地に家を建てる場合、土地と並行に建物を建ててしまうと、横に長い広大な庭が完成してしまうのです。
広大な庭は明らかに庭という感じで、どうも人工的につくられたスペースという感じが強くなります。
加えて庭をつくり込もうにも、非常にメリハリのない空間になってしまうので、美しい庭をつくるのが難しくなるのです。
ですので今回のように、建物をあえてずらして配置し、敷地の四隅に庭のスペースをつくることで、例えば坪庭のようなきれいな庭を要所要所につくることが可能になります。
個人的には今回のプランですと、背の高い紅葉や苔と石を上手く使って、日本庭園っぽい庭をつくったらすごくきれいだなと思いますし、
ウッドデッキの半屋外空間から庭を見ながら夏に子どもとビニールプールで遊んだり、バーベキューをしたりしたら最高だろうなと思います。
これはあくまで私の趣味なので本当にやるかどうかは別ですが、とにかく横に長い庭をつくるのではなく、敷地の四隅に庭のスペースをつくることできれいな庭をつくれるということです。
そしてそのために敷地に対して建物をずらして配置することがポイントになってくるのです。
これがあえて敷地とは並行ではなく、少しずらした形で建物を配置している2つ目の理由になります。
このような感じで、敷地とは並行ではなく、少しずらした形で建物を配置しただけではありますが、そこにはいろんな考えや工夫が存在しているのです。
ですので皆さんが今後各ハウスメーカーからプラン提案を受けるとなった時、もし仮に敷地に対して並行に建物を配置するプランが出てきたら『敷地に対して並行に建物を配置するのではなく、建物をずらした提案を作ってもらえませんか?』と一言伝えてみてもいいかもしれません。
最大視覚の活用がされている
そして最後にこのプランの3つ目のポイントは『最大視覚の活用がされている』ということです。
これは簡単に言い換えると『斜めに視線が抜けるように間取りをつくる』ということなのですが、どういうことかというと、例えば正方形をイメージしてみてください。
正方形は対角線を引くと、二等辺三角形ができますよね?
そして二等辺三角形の三平方の定理は『1:1:√2』ですよね。
つまり斜めの方が通常の1.4倍長いということなのです。
これと同様に長方形の場合は対角線を引くと直角三角形になるので、割合が『1:2:√3』 になります。
ですので、斜めの方が通常の1.156倍広く感じられるということです。
つまりこれを一言でまとめると『長さ≒広さ』だということです。
家がコンパクトになる場合、長さが取れる方向に視線が抜けているか、これが重要になってくるのです。
では実際に今回のプランを見てみてください。
ダイニング部分から北側にかけて斜めに一直線に視線が抜けるようになっていますよね。
さらに視線の先には北側のメインの庭があるわけです。
この間取りは『斜めに視線が抜けるようにつくられた間取り』で、きちんと『長さ≒広さ』を感じられるプランになっているのです。
建物全体としては32.47坪とそこまで大きい建物ではないですが、十分に広く感じることができる、そんな工夫が盛り込まれた正真正銘、一流のプランなのです。
このようなことは説明されないとわからないですよね。
あとちょっとした小技ですが、メインとなる北側の庭に植栽を植える際、手前に1m70cmくらいの中木の木と、奥側に6,7mあるような高木の木を植えてあげることで、さらに遠近感を出すことも可能です。
建物の広さは畳数で決まるわけではありません。
広さよりも広さ感、距離よりも距離感が重要になってくるのです。
この意味はなかなか伝わりにくい部分ではありますが、とにかく今回のプランは、広さよりも広さ感、距離よりも距離感、これが体現されているものとなります。
ですので、自分達の間取りに反映させるさせないは別として『最大視覚の活用 』これは間取りを考える上で必要な目線になるので、ぜひとも1つの知識として覚えておいてください。
北側玄関の土地を有効活用する間取りのポイント3選のまとめ
ということで、今回は私の紹介で実際に契約になったお客さんの間取りを解説してきました。
北側立地の土地でも工夫次第でおしゃれで快適な住まいをつくることが可能です。
北側立地の住宅を検討する際には、今回紹介した間取りのポイントを参考にしていただければと思います。
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