今回は『高気密高断熱で性能が高い住宅を建てるポイント10選』というテーマでお話をしていこうと思います。
というのも、家づくりはわからないことだらけですよね?
しかし例えば、建物の構造躯体についてどれだけ知っているかで、各ハウスメーカーのどこが弱点で、どこを補填しなければならないのかが見えるようになります。
そこで今回は、高気密高断熱の家づくりで必要な建物の性能に関する知識10選を、一連の流れとして皆さんに説明していきます。
かなりボリュームがあるとは思いますが、家づくりをする方がすべて覚えるべきことになります。
家づくりを必ず成功させたいという方は最後まで読んでください。
家づくりの本質的な考え方とは?
最初に結論からお伝えをすると、家づくりの本質的な考え方とは『頑丈かつ健康に過ごせる住まいをつくること』これになります。
というのも、最近ではSNS映えする家の写真や動画がたくさんアップされていて、どうしてもおしゃれな家づくりをすることばかりに頭がいってしまいがちです。
確かにその気持ちもわかるにはわかります。
デザインに力を入れた家は最初は感動するのですが、性能が悪いと住みはじめてから急激に満足度が下がるのです。
住みはじめた最初が感動マックスの状態で、あとはただただ下がっていくだけという感じです。
一方でデザインはそこそこでも性能がいいと、住み続ければ住み続けるほど後になってから満足度がどんどん上昇していくイメージです。
そこに上限はないのです。
ですので、皆さんも冷静に考えてみてください。
どんなに見た目がよくても、地震ですぐに倒れてしまったり、火災ですぐに燃えてしまったりしたら意味がないですよね。
そのような家に何千万円もの大金を払いたくはないはずです。
また、夏は暑くてジメジメしている家だったり、冬は寒くて乾燥がひどい家だったりしたら嫌ですよね。
ノミ、ダニ、ゴキブリ、これらの害虫が発生するような家だったらどうですか?
それも嫌ですよね?
花粉症がひどい人でしたら、家の中はできれば花粉の影響が少ない状態を保ちたいですよね?
だからこそまずは『頑丈かつ健康に過ごせる住まいをつくること』これが重要なのです。
そしてお金に余裕があったら、最後にデザインに力を入れるというのが家づくりの本質的な考え方になります。
これを無視してデザインにばかり力を入れた住宅を、業界では「デザイナーズスカスカ住宅」といったりします。
自ら選んでデザイナーズスカスカ住宅をつくりに行く人はいいかもしれません。 しかし「そんなのは絶対に嫌だ。」という方は、知らず知らずのうちにデザイナーズスカスカ住宅をつくらないよう、この後お伝えする内容をしっかりと覚えておいてください。
建物における頑丈さとは?
先ほど『頑丈かつ健康に過ごせる住まいをつくること』これこそが家づくりにおける本質的な考え方になりますという話はしたと思いますが、『建物における頑丈さとはなんなのか』『健康に過ごせる住まいとはなんなのか』これを分解してそれぞれ説明していきます。
まずは『頑丈』ということについてです。
住宅における頑丈さとは、言い換えると地震が来ても『半壊』『全壊』『倒壊』しない家のことをいいます。
それはそうですよね?
何千万円というお金を払ってせっかく家を建てたのに、地震ですぐに壊れてしまったら家を建てる意味がありません。
ですので、住宅における頑丈さとは、地震が来ても『半壊』『全壊』『倒壊』しない家のことになるわけです。
しかしこれですとまだ抽象度が高くて、イマイチよくわからないと思います。
より解像度を高くお伝えするのであれば『耐震等級3』これを取れる家というのが、地震が来ても『半壊』『全壊』『倒壊』しない、つまりは頑丈である家だということになります。
では、そもそも耐震等級3とはなんなのかわかりやすく説明をすると、阪神淡路大震災の1.5倍の地震が来ても耐えられる建物に付与されるものです。
もう少し詳しく説明をすると、そもそも日本には、建物の耐震性能を表すランクとして耐震等級というのが存在していて、具体的には
- 『耐震等級1』
- 阪神淡路大震災相当の地震が来ても倒壊しない程度の耐震性能の建物
- 『耐震等級2』
- 病院や学校など避難所となる建物と同レベルの耐震性能がある建物
- 『耐震等級3』
- 消防署や警察署等の防災の拠点となる建物と同レベルの耐震性能がある建物
という感じで、3つのランクにわかれているわけです。
熊本地震が起こる以前は耐震等級1の建物であっても十分といわれていたのですが、史上初となる震度7が2回連続で発生した熊本地震によって、耐震等級1と2の建物が軒並み壊れてしまったのです。
実際に熊本県のHPに当時の被害状況をまとめた資料がアップされているのですが、震源地付近の益城町周辺であっても、耐震等級3で設計された建物はほぼ無害か、または軽微な被害状況だったことが報告されています。
そんなこともあり、多くの専門家は、今後の大きな地震に備えて、これから建てる建物に関しては「すべて耐震等級3にするべきである。」としているのです。
ですので、頑丈な家を手に入れるのであれば、まずは耐震等級3が取れるかどうか、そして、そういう提案をしてくれるメーカーなのかどうかを確認する必要があるわけです。
なるほどという感じですよね?
そしてさらにこのことからいえるのは『鉄骨造で家をつくっても、木造で家をつくっても、耐震等級3さえ取れていれば、どっちも変わらない』ということなのです。
『頑丈な家』つまりは耐震等級3の家をつくることこそが目的なわけです。
木造だろうと鉄骨だろうと、はたまた制震装置が入っていようといなかろうと、ベタ基礎であろうと布基礎であろうと、それは耐震等級3の家をつくるための1つの手段に過ぎないということです。
『頑丈な家』つまりは耐震等級3の家をつくることこそが目的なので、そのメーカーの家づくりの仕方に対して共感するしないという感情面での選択はあれど、〇〇工法がいい悪い、制震装置が入っているいない、そんなものは1つの手段でしかないのです。
ですので、木造だろうと鉄骨だろうと、とにかく耐震等級3の家をつくること、これが目的であり、それが地震が来ても『半壊』『全壊』『倒壊』しない『頑丈な家づくり』ということになるのです。
このように整理してお話をすると、視界がクリアになりますよね。
ハウスメーカーの比較は、皆さんが思っている以上に簡単なのです。
鉄骨造と木造、どちらがいいのか?
先ほどの話を聞いた人の中には 「いやいや、耐震等級3を取ったとしても、木と比較して鉄骨の方が強度が高いのだから、どう考えても鉄骨住宅の方が強いでしょ!」と思われている人もいると思います。
確かにそれはそのとおりです。
鉄骨住宅には鉄骨住宅向きの立地というのが存在しますし、木造住宅には木造住宅向きの立地というのが存在します。
ですので、家を建てる立地によって構造躯体を選ぶというのがベストな選び方にはなるのです。
この考え方は、どのような家を建てるのかを考える上で重要な部分なので
- 鉄骨住宅向きの立地
- 木造住宅向きの立地
- 鉄骨住宅と木造住宅のメリット・デメリット
こちらについて掘り下げてお話をしていきます。
鉄骨住宅向きの立地
まず、『都心部や隣の家との距離が短い住宅密集地』そういう立地で家を建てる場合には、鉄骨住宅の方が有利になります。
その理由についてですが、例えばイメージしてみてください。
地震が来た時というのは、自分の家だけが耐えられればいいわけではないですよね。
もしかしたら隣に建っている家が崩れて倒れかかってくるかもしれません。
2024年1月に起きた石川県の地震や阪神淡路大震災のように、地震の後の二次災害の火災で自分の家が燃えてしまうかもしれないわけです。
ですので、自分達の家が地震に耐えられるのはもちろんですが、さらに近隣からの被害からも身を守らなければならないのです。
これが都心部や住宅密集地で家を建てるときに必要な考え方になるのです。 そう考えると、都心部や住宅密集地で家を建てるときというのは、やはり素材自体に強度がある鉄骨住宅の方が有利です。
木造住宅向きの立地
木造住宅で家を建てる場合はどのような立地が向いているのかというと、先ほどとは逆で、わりと敷地にゆとりのあるところで家を建てる場合に向いています。
やはり素材の強度というところを考えると、震災時、周辺被害が少ないであろう立地で建てた方が木造は安心です。
ですので
- 都心部や隣の家との距離が短い住宅密集地で家を建てる場合は鉄骨
- 敷地にゆとりのあるところで家を建てる場合は木造
このように立地によって構造躯体を選ぶということがポイントで、この考え方は、自分達家族の命を守ることに直結してくる考え方でもあります。
鉄骨住宅と木造住宅のメリット・デメリット
できることなら、家を建てる立地に合わせて鉄骨住宅にするのか、それとも木造住宅にするのかを選んでいただければと思うのですが、それだけでは判断できないという人もいると思います。
鉄骨住宅と木造住宅、それぞれのメリット・デメリットをまとめると、このような感じになります。
鉄骨住宅のメリットは
- 繰り返しの地震に強い
- 近隣住宅からの被害から身を守れる
- リフォーム時、骨組みを再利用できる
鉄骨住宅のデメリットは
- 断熱性能は木造住宅に劣る
- 気密性能は木造住宅に劣る
- デザインの自由度は木造住宅に劣る
- 地震時に建物が揺れやすい
木造住宅のメリットは
- 断熱性能・気密性能が高い
- デザインの自由度は鉄骨住宅より高い
- 地震時に建物が揺れにくい
木造住宅のデメリットは
- 強度面は鉄骨造の方が有利
- 大規模リフォームは不向き
このような感じで、それぞれ得意不得意があるにはあるのです。
深刻な鉄骨住宅のデメリット
特に鉄骨住宅のデメリットは、皆さんが思っている以上に深刻です。
それぞれ簡単に説明していきます。
断熱性能は木造住宅に劣る
まずは『断熱性能は木造住宅に劣る』という点に関してです。
鉄は木の400倍熱を伝えやすいという素材自体の性質があるため、その400倍の熱の伝えやすさを埋める工夫が必要になってきます。
ですので、皆さんが鉄骨系の住宅を建てることを検討しているのであれば、各ハウスメーカーの構造躯体、これがどれだけ外気の熱の影響を受けないように対策されているのか、専門的な言葉を使うと、熱橋対策というものがどのようにされているのかは確認しなければなりません。
気密性能は木造住宅に劣る
次に『気密性能は木造住宅に劣る』ということです。
気密とは、家にどれだけ隙間があいているのかを一言で言い表したものなのですが、
- 鉄骨という素材自体が温度によって伸び縮みする
- 気密施工をする場合、建物の室内側に気密シートを貼るための木枠が必要であり、施工が複雑になる
これらの理由から、鉄骨住宅は気密が取りにくいのです。
もう少し詳しく説明をすると、例えば線路は一本の鉄でできているのではなく、いくつかのレールが等間隔に置かれて1つの線路を形成しているのです。
なぜ一本の鉄でできていないのかというと、それは鉄骨が温度によって伸び縮みするため、最悪その影響で線路が歪んでしまい、そしてその結果、線路の上を走っている電車が脱線してしまう可能性があるからなのです。
そのため、線路は一本の鉄でできているのではなくて、いくつかのレールが等間隔に置かれて1つの線路を形成しているのです。
電車に乗るとガタンゴトンと音が鳴るのはそういう理由があるからなのです。
これと同様に、鉄骨住宅も少なからず鉄骨が伸び縮みするので、どんなに丁寧に施工しても多少の隙間ができてしまうと言われています。
そのため気密が取りにくいのです。 また、隙間を埋める気密施工をする場合に関しては、室内側に気密シートとよばれるビニールシートを貼ることになるのですが、このシートはタッカーとよばれる大きいホチキスのようなもので止めていくのです。
デザインの自由度は木造住宅に劣る
続いて『デザインの自由度は木造住宅に劣る』ということについてです。
この話をすると一定数『鉄骨でもデザインのいい住宅をつくれるし、適当なこと言うな!』と思われる方がいるのですが、はっきり言います。
それはハウスメーカーという業態や工業とよばれるものが何たるかを理解していない人から出てくる言葉です。
ハウスメーカーという業態や工業とよばれるものが何たるかを理解していれば、そのような言葉は出てこないはずなのです。
というのも、ハウスメーカーという業態は戦後家のない時代に住宅を大量生産する名目の元できた業態になります。
特に戦後で木材もなかったことから鉄骨を使った住宅を世に普及するべく、
- 積水ハウス
- セキスイハイム
- パナソニックホームズ
- ダイワハウス
- トヨタホーム
- ヘーベルハウス
これらの名だたる大手ハウスメーカーが誕生し、その後、続々と他のハウスメーカーも誕生することになったわけです。
ですので、平たく言ってしまえば、同じものをコピーアンドペーストで量産するユニクロやGUのような企業がハウスメーカーだということです。
ただし、物を大量生産するためには、大量生産に適した形にしなければなりません。
具体的には、人の手を介在させる必要がないようなシンプルで直線的な物にしなければならないのです。
また、画一的でなければ大量生産することもできなくなります。
こういった諸々の背景もあって、住宅の大量生産をすることを前提につくられたハウスメーカーという業態を象徴する鉄骨住宅という建物は、小回りが効かないのです。
そのため、小回りの効く木造住宅と比較をすると、明らかに鉄骨住宅は木造住宅よりもデザイン性が劣るのです。
これに関しては、後半のデザインパートでより深く解説していきます。
地震時に建物が揺れやすい
最後に『地震時に建物が揺れやすい』ということについてですが、恐らく多くの方が、鉄骨住宅は地震に強いというイメージをもっていると思います。
確かにそのイメージは間違ってはいないのですが、鉄骨住宅は揺れて地震の力を逃すというその特性上、内装被害が出やすいという性質も併せもっているのです。
これはどこのハウスメーカーが、などではなく、鉄骨住宅全般にいえることで、例えば3.11の地震の時は、東京タワーの先が曲がったというニュースがありましたが、それだけ鉄骨造の建物は揺れの影響が大きいということなのです。
実際に私は、熊本県やら新潟県の被災地やらに足を運んでいて、現地の状況を見ているのですが、しっかりと地震に対する対策をしていれば、鉄骨造の建物も木造の建物も、どちらもきれいに残っているのです。
ただそれは外から見た外観の話であって、家の中に入ってみると、やはり鉄骨造の方が被害が大きいのです。
ですので、鉄骨住宅で家を建てるのであれば、各ハウスメーカーがどれだけ地震時の揺れに対して対策をしているかを確認しなければなりません。
繰り返しの地震や構造躯体の強度面は鉄骨住宅が強い
ここまでお話してきた
- 断熱性能は木造住宅に劣る
- 気密性能は木造住宅に劣る
- デザインの自由度は木造住宅に劣る
- 地震時に建物が揺れやすい
これら鉄骨住宅ならではのデメリットは、鉄骨で家を建てると決めた以上、どうしても避けては通れないものになってきます。
ですので仕方ないのです。
では、木造住宅の方がいいのか?といわれれば、それはそれで繰り返しの地震や構造躯体自体の強度面を考えると、やはり鉄骨住宅の方が安心感はあるわけです。
特にリフォームのことを考えると、例えば街中でビルのテナント工事を見かけることがあると思いますが、あのような感じで鉄骨構造の建物は少し無茶をしても、わりと簡単にリフォームできてしまうのです。
一方、木造住宅は柱が木なので、柱を傷つけてしまうと耐震性が下がる可能性があるわけです。
そうならないようにするためにも、あまり無茶なリフォームはできないのです。
このように、鉄骨住宅にも木造住宅にも、それぞれメリット・デメリットがしっかり存在します。
ただ重要なのは自分達家族の命なので、まずは立地によって構造躯体を選ぶということが最優先です。
しかし中には「いやいや、そんなのどうでもいい!!自分の好みで建てるんだ!」という方もいると思います。
その場合に関しては、鉄骨住宅と木造住宅、それぞれのデメリットを理解した上で、最初にもお伝えしたとおり『耐震等級3』を必ず取れる間取りを提案してもらうこと、これさえ守れれば一定の安心は確保することができます。
それが家の頑丈さにつながってくるので、今お話したことをぜひとも覚えておいていただきつつ、構造躯体の選択をしていただければと思います。
健康でいられる住まいとは?
健康な家づくりというのは、言い換えると高断熱高気密な家づくりということになります。
高断熱高気密とは簡単に説明をすると、外気の影響を受けにくくする断熱材をたくさん入れて、家の隙間を限りなくなくして住宅の気密性を担保した住宅のことです。
「なぜ高断熱高気密な家づくりをわざわざ目指さなければならないのか?」「どのハウスメーカーで建てても高断熱高気密な家になるのではないか?」そう思われる方も多いと思います。
ただ残念なことに、この業界は皆さんの常識は一切通用しません。
今現在、ハウスメーカー各社の断熱性能・気密性能は低すぎるのです。
そのためきちんと知識を身につけなければ、とんでもなく痛い目を見ることになるのです。
これがどういうことか、そもそもの大枠から説明していきます。
実は日本の建物には、断熱等級とよばれるものが存在します。 これは「住宅の品質確保の促進等に関する法律(通称:品確法)」で規定された住宅の省エネ性能を示すための基準なのですが、それが1999年に断熱等級の最高等級である4が制定されてから、断熱等級の上限が7まで引き上がった2022年までのおよそ23年間、日本の住宅性能は上がらなかったのです。
なぜなら、ハウスメーカー各社は型式適合認定というものを取得していて、これがあることを理由に身動きが取れなかったというよりかは取らなかったからなのです。
具体的に説明をすると、先ほども軽く触れたとおり、ハウスメーカーという業態は、戦後家のなかった時代に同じ質の家を大量生産する名目の元できた企業になります。
しかし、本来住宅は大量生産に向かない商材なのです。
その土地の大きさや法規制に合わせて間取りをつくり、お客さんと打ち合わせを重ねます。
ようやく間取りが決まったら、今度は構造計算をして役所に申請します。
役所から受理されてからようやく着工になるわけですが、そこから家が完成するまでにだいたい1年くらいかかることになります。
つまり、手間と時間と労力とお金がかかるのが住宅という商材であって、大量生産に向かない理由になるわけです。
ただ時代が時代なだけに、そうもいっていられなかったので、国は型式適合認定という制度をつくりました。
この制度は簡単に説明をすると、国が認めた構造躯体であれば、構造計算などの一部の申請手順を省いてもいいですよという制度です。
これを活用することで、ハウスメーカー各社は住宅の量産化に成功したのです。
ただし、この型式適合認定という制度は『その時認められた構造躯体であれば、申請手順を省いてもいいですよ。』という枕詞がつくのです。
つまり、建物のグレードアップをしようと思ったら、型式適合認定の再取得が必要になるのですが、それには膨大な資料やら根拠が必要になってくるので、実験にかかる費用や、人的リソース、さらには社内の生産ラインの変更からマニュアルの作り直しなどなど、とにかくとんでもない労力が必要になってきます。
そのためハウスメーカー各社も、基本的には型式適合認定の再取得はしたくないのです。
特におよそ23年間も断熱等級が変わらなかったこともあって、各社『ウチは断熱等級の最高等級が取れているので問題ありません。』『断熱性能の上げ過ぎはオーバースペックになるのでおすすめしません。』など、とにかくいろんな言いわけをして、断熱性能を上げない方向にもっていっていました。
正直、今でもその文化は根強く残っている状況です。
その結果、どのハウスメーカーも
- 耐震性能
- メンテナンス性
- 保証
この3つだけをゴリ押しして住宅の販売をしてきたのですが、その結果どうなったのかというと、海外と比較して圧倒的に日本の住宅の性能が落ちてしまったのです。
例えばこちらの画像を見てください。
こちらは各国の冬場の室内の平均温度を表している画像になるのですが、日本の家の室内の平均温度は、冬場どのくらいなのでしょうか。
正解は10℃です。
つまりロシアやデンマークなど、高緯度にあって冬の寒さが厳しい国もこの画像には含まれているのですが、家の中は日本の方が圧倒的に寒いということです。
実際に各国の家の断熱性能を見てみると、日本がとても遅れているのがわかります。
これによって日本では、交通事故で亡くなるよりも家の中で起きるヒートショックで亡くなる人の数の方が多いという、とんでもない状況になっているのです。
当然、住宅の性能が低いので、夏に関してもカオスな状況になっていて、なんと外にいるよりも家の中にいる方が熱中症になる確率が高いという状況にもなっているのです。
こういった事実からもわかるように、これが今までの日本の住宅の実情でした。
たださすがにこれはマズイよねということで、世界にも通用する基準として、日本でもようやく2022年の10月に断熱等級が4から7に引き上げになりました。
これでめでたしめでたしと思いきや、今現在きちんと新しい基準に対応できるように動いた大手ハウスメーカーは9社中3社しかないのです。
大手ハウスメーカーというのは業界でいうと、
- 積水ハウス
- 住友林業
- ダイワハウス
- ヘーベルハウス
- 三井ホーム
- パナソニックホームズ
- セキスイハイム
- ミサワホーム
- トヨタホーム
この9社になるのですが、この中できちんと対応しているメーカーは3社しかないということです。
なんならその3社のうち1社の新しい断熱仕様は、建てられるエリアに制限があります。
ですので実質、大手ハウスメーカーの中でまともに新しい断熱仕様に対応できるメーカーは、未だに2社しかない状況です。
では、他のハウスメーカー各社は何をやっているんだという話なのですが、今度は数字のお遊びに走り始めているような状況なのです。
これがどういうことかというと、断熱等級はUA値とよばれる建物全体の保温力を定量化したものを基準に算出するのですが、建物の開口部比率、つまりは壁の面積に対して窓の面積がどれだけの割合を占めるのかで数値がかなり変わります。
ですので例えば、窓をなくす、あるいは窓を小さくすることでUA値はよくなるのですが、その特性上、断熱材を厚くしなくても窓の数と大きささえ調整してしまえば、UA値はいくらでもよく見せることができるのです。
また、建物が大きければ大きいほど、壁の面積に対して窓の面積は小さくなるので、これまた断熱材を入れなくてもUA値をよく見せることができるのです。
これは冷静に考えてみればわかりますが、本来は断熱性能を上げることが目的で、その1つの手段として
- 建物の開口部をなくす
- 建物の開口部を小さくする
- 建物の大きさを大きくする
という方法があるわけですが、これらを目的にしてしまうと、どうしてもそこにばかり目がいってしまって、建物の断熱性能を上げることにつながらないのです。
もっとわかりやすく説明をすると、建物はざっくりお伝えをすると、立方体つまりは6面体なわけです。
いくら開口部を調整してUA値をよくしても、床下の断熱材が薄かったら、真冬床は冷たくなります。
いくら開口部を調整してUA値をよくしても、天井の断熱材が薄かったら、真夏家の中は暑くなってしまうのです。 ですので本来は、断熱材を厚くして、その次に窓を強化して、最後に計算した結果、断熱等級6や7になったというのが正解なのです。
このことに気がつかず、最近ではUA値を下げさえすればいいというような説明をする住宅営業マンが急増していて、それにだまされている人がごまんといる状況です。
ですので、新しい基準に対応できるように動いた大手ハウスメーカーは9社中3社しかないですといったのは、正真正銘、お客さんをだまさずに正攻法で今の時代にあった性能を提供できるハウスメーカーは3社しかないですということなのです。
数字のお遊びで断熱等級5や6を取れるメーカーはいくらでもあるのです。
ですので断熱材を中心にそれに関連する知識をつけておかなければ、断熱等級が高いのになんだか寒い、なんだか暑い、そういうことになりかねないわけです。
ここまでの話を聞いて「家族の健康に配慮するためにも、快適さを追求するためにも、断熱性能の強化が必要なのはわかったけど、そこまでして断熱性能を上げる必要があるの?」と思われる方もいると思います。
確かに「快適」や「健康」は、どこかのうさんくさい通販番組がよく使いそうなワードですし「そこまでして必要なの?」と思う気持ちもわかります。
ただ実際に高断熱高機密の家づくりをすることで
- 風邪をひきにくくなり、医療費を削減できる
- 光熱費を削減できる
- 1年中、室内の温湿度を一定に保つことができて快適に暮らせる
という、そんな家づくりができるとされていて、高断熱高気密の家に住むことで、年間の医療費が削減できるというデータがあるくらいなのです。
さらには「健康チェックリストの暖かさに関する設問を活用した温熱環境評価法の提案」という学術誌で、高気密高断熱の家をつくると健康になるという論文もあるくらいです。
このことからも、私の話が決しておおげさではないことがわかるはずです。
また、今後光熱費がどんどん上がっていくことが予想されています。
その背景には地球温暖化が深く関わっているからです。
そして今から光熱費が上昇したときの対策を先回りしてやっておかなければ、今後光熱費が家計を圧迫することが予想できるのです。
これがどういうことなのかというと、例えば皆さんはなぜストローがプラスチックから紙に、ビニール袋が無料から有料になったのかご存知でしょうか。
なんとなくイメージできる人はイメージできるとは思いますが、これはシンプルにCo2を削減して地球温暖化などから人類を守るために行っているのです。
では、どうして今になってそんなに躍起になって「地球環境に配慮しよう!」となっているのかというと、それはこのまま行くと、最悪世界で4億人の難民が出ると予想されているからなのです。
例えばこちらをご覧ください。
こちらはIPCCとよばれる国際的な地球温暖化の専門家たちによってつくられた『RCPシナリオ』とよばれるものをまとめたものになります。
簡単に説明をすると、これから2100年までの間で地球温暖化の影響を4つのパターンに分けられるとしているのです。
具体的には
- RCP8.5
- RCP6.0
- RCP4.5
- PCP2.6
この4つが存在していて、それぞれ詳しく説明をすると、RCP8.5は、2100年の世界で、平均気温が最高で約5℃上昇するという最悪のシナリオです。
海面も45cmから82cmに上昇するとされていて、それにより住めない地域が出てきてしまい、日本も含めて世界で4億人の難民が出るとされています。
RCP6.0は、2100年の地球の平均気温が約3℃上昇するというシナリオです。
世界の国のカーボンニュートラルへの取り組みが遅れて、技術開発の速度が速まらなかった場合のシナリオが、このRCP6.0になります。
影響としては温暖化抑制の効果はでてくるものの、降水量と気温の変化によって、深刻な食糧不足になります。
RCP4.5は、地球温暖化対策と大気汚染防止策が世界的に効果をみせた場合のシナリオです。
森林が保護され再生に向かいます。
それでも2100年に地球の温度は2℃以上上がり、サンゴ礁の2/3は失われる可能性があります。 PCP2.6は、ただちに世界がカーボンニュートラルを目指した政策に着手した場合のシナリオです。
地球の平均気温の上昇を2℃以内に抑えることができます。
以上の4つが、2100年までに想定されているシナリオなのです。
ところが現在、2030年ごろまでに気温1.5℃上昇することが確定しており、予定よりも10年早く地球の温度が上昇してしまっているのが現状なのです。
そんなこともあって、2100年になるまでの後残り約80年の間で0.5℃の上昇に留めなければ、今までどおりの生活ができなくなってしまいます。
そのような状況なので、世の中ではCo2を削減するために躍起になってストローをプラスチックから紙にしたり、ビニール袋を有料にしてビニール袋を使わない環境をつくったりしているのです。
ただし、ストローをプラスチックから紙にしたり、ビニール袋を有料にして使わない環境をつくったりしても、やらないよりはやった方がマシというレベルなのです。
Co2を大幅に削減するためには、化石燃料とよばれる石油や石炭を使用しないことが重要になります。
そして石油や石炭の替わりとなるエネルギーとして、そもそも環境負荷の少ない天然ガスや電気に注目が集まっているわけですが、ここでポイントになってくるのが
- 今後ガスと電気の需要が上がることにより、値上がりすることが予想される
- ガスは自分達でつくれない
というこの2つなのです。
つまり何が言いたいのかというと、今後光熱費は上がる前提で今から家づくりをしておかなければ、毎月の住宅ローンに固定資産税、さらには物価の上昇による実質的な増税の影響、そんな状況に追い討ちをかけるように光熱費が上がり続けるという最悪な状況に陥る可能性があるのです。
実際に天然ガスの価格が上昇傾向にあるのは、グラフを見れば一目瞭然です。
また電気に関しては、4人家族での平均年間消費電力量をおよそ5,500kwhであると仮定した場合、2030年までに年間で4万円近く電気代が上昇する試算すら出ているくらいです。
ですので、光熱費は上がる前提で今から家づくりをしておかなければ、後々の生活がより厳しくなる可能性が高いのが今の時代なわけです。
そのためにも高断熱高気密な住宅をつくっておく必要性があるのです。
では、実際に高断熱高気密な家づくりをするためにはどうしたらいいのかというと、それは今からお伝えする5つのステップを段階的にクリアして家づくりを行っていく必要があります。
段階的にクリアして、ですので例えば1つ目のステップをクリアしたからといって、いきなりステップ2を飛ばしてステップ3に行くのはNGだということです。
必ず1、2、3、4、5という順番で家づくりをしなければ成功しません。
では、その5ステップとはなんなのかというと、それは
- ステップ1が断熱
- ステップ2が気密
- ステップ3が換気
- ステップ4が空調
- ステップ5が設備
断熱、気密、換気、空調、設備、この順番で家づくりを行うことで、きちんとした高気密高断熱の家づくりができるようになります。
大切なのでもう一度言いますが、断熱、気密、換気、空調、設備、この順番で家づくりをすることが重要です。
ちなみに、断熱、気密、換気、空調、設備、これこそが、ハウスメーカーを比較する時に必ず考慮しなければならないポイントであり、各社大きく差が出るところでもあるのです。
この部分に関しては比較するとわかるのですが、現状のハウスメーカー各社の状態ですとあまりにも偏りが出てしまうので、公の場でどのハウスメーカーが時代にあった提案ができて、逆にどのハウスメーカーが時代遅れかはお伝えすることができません。
ですので最短で各ハウスメーカーの特徴を知りたいという方は、私の作ったメグリエというサービスに登録をしていただき、私との無料面談の申し込みをしていただければと思います。
建物の断熱性能
続いて『建物の断熱性能』についてです。
断熱とは、外気の影響をどれだけ受けにくくするのかを一言で言い換えたものになります。
ですので、シンプルに断熱材の厚さが厚ければ、夏は涼しく、冬は暖かくなりやすいわけです。
そのため「できるだけ断熱材は厚くしましょう!」というのがここでの話になります。
ただし、先ほどのパートでも説明をしましたが、この業界は約23年間、建物の断熱性能に対する技術革新が起こらなかった業界です。
そのため、断熱の話をすると必ずといっていいほど「今のままで十分です。」「断熱材を厚くするなんてオーバースペックです。」と説明してくる営業マンがいます。
ただこれに惑わされないでください。
今から家づくりをされる方は、これに惑わされると100%後悔することになります。
また「断熱性能の向上=UA値をいじくること」という、表面的な理解だけをしている営業マンも非常に多くいます。
本来は建物の断熱材を強化して、次に窓を強化して、最後に計算した結果、断熱等級6や7になったというのが正しい手順です。
絶対にUA値ばかりにとらわれないようにしてください。
ということで、建物の断熱性能について順を追って説明していきます。
- 建物の断熱方法
- 断熱材の種類
以上の2つを順番に説明していきます。
建物の断熱方法
まずは1つ目の『建物の断熱方法』についてです。
実は建物の断熱方法は、部位ごとにパターンが決まっています。
ですので、その基本的なパターンさえ覚えてしまえば、各ハウスメーカーのどこが弱点でどの部分を強化しなければならないのかが自然と見えてくるようになります。
そのため、家を部位ごとに分解して考えることが重要で、具体的には『床』『壁』『屋根』この3つのパーツに分けて考えていくのがポイントです。
ここから『床』『壁』『屋根』この3つを具体的にそれぞれ深掘りしていきます。
床の断熱
まずは『床』です。
実は家の床部分は、今からお伝えする2つの方法のどちらかで必ずつくられています。
では、その2つとはなんなのかというと、それは『床下断熱』という考え方と『基礎断熱』という考え方、この2つになります。
では、それぞれメリット・デメリットをお話していきます。
床下断熱
最初に『床下断熱』についてですが、こちらのつくり方のメリットは、シロアリに強いということになります。
というのも『床下断熱』は、構造躯体と基礎の間に換気口があることによって、基礎の中に外気を取り入れるつくりになっているのです。
そのため、基礎の内部が乾燥してシロアリが発生しにくい環境をつくれるのです。
しかし一方で、デメリットが2つ存在します。
1つ目が床下の断熱材が薄いと、床が底冷えするということです。
そもそも床下断熱はその名のとおり、床の下に断熱材を入れ込むつくり方になっています。
そしてその床下の断熱材の直下は、先ほどもお伝えしたとおりで、外気がとおっているわけです。
そのため、床下の断熱材が薄いと、真冬冷気によって床が冷えてしまいます。
ですので例えば
- 床暖房を入れれば真冬でも暖かい
- 無垢床を入れても床は冷たくなる
それはそもそもの構造躯体の特性を理解していない人がいう営業トークです。
床下の断熱材を厚くすれば床暖房を入れずとも床は冷たくならないですし、さらに無垢床を入れることによって、より暖かい床を手に入れることが可能になるのです。
そのため、
- 床暖房を入れれば真冬でも暖かい
- 無垢床を入れても床は冷たくなる
というような営業トークを耳にしたら、それはあまり家のことを理解していないのだなと思ってください。
そしてもう1つのデメリットが、気密が取りにくいということです。
どういうことかというと、床下断熱は床に断熱材をパズルのように入れ込んでいくつくり方になるのですが、それを収めるときに床面に大量の気密テープを貼るのです。
これが常に厄介で、テープが剥がれてしまう場合もありますし、一部テープを貼り忘れてしまっている場合もあるのです。
そのためヒューマンエラーが起きる可能性が高いのが床下断熱であって、それゆえに気密が取りにくいとされているのです。
床下断熱は先ほどからお伝えしているとおり、床下部分に外気がとおっているので、床下の気密が取れていないと床下から冷たい空気が噴き上げてくることになります。
その状態ですと真冬非常に不快なので、床下断熱を採用しているメーカーで家づくりをする際は、床面の気密施工がきちんとされているかどうかを現場に行って確認する必要があります。
ということで、床下断熱で家づくりをする場合は、メリットがシロアリに強いということ、そしてデメリットが、床下の断熱材の厚さによっては床が底冷えする、気密が取りにくい、これら2つになります。
基礎断熱
続いて、もう1つの『基礎断熱』についてです。
基礎断熱は北海道発祥のつくり方です。
基礎断熱のメリットは、床下断熱とは逆で気密断熱が取りやすいということです。
どういうことかというと、基礎断熱は構造躯体と基礎を完全に圧着してつくります。
そのため基礎と構造躯体が一体化し、それにより気密と断熱が確保された状態をつくり上げることができるのです。
また、床下の基礎内部を1つの部屋として使うことが可能になるので、その部分に空調設備を入れ込み、床下から部屋全体を暖めるつくり方ができます。
床下断熱に比べて気密施工が簡単なのもこのつくり方の強みになります。
基礎断熱は近年、高気密高断熱がブームになってきているので、北海道のみならず本州でも人気になってきているつくり方になります。
ただしこの基礎断熱にももちろんデメリットが存在します。
それがシロアリに弱いということです。
どういうことかというと、基礎断熱は厳密には基礎外断熱と基礎内断熱という2種類が存在します。
両方ともに基礎下を1つの部屋として使うために、基礎内部が外気の影響を受けることがないよう、基礎に断熱材を巻くつくり方になっているのです。
ただ、基礎の外に断熱材を仕込む基礎外断熱は、断熱効果は高いものの、シロアリリスクが大きいハイリスクハイリターンの施工方法で、
基礎の内側に断熱材を仕込む基礎内断熱は、断熱効果はそこそこであるものの、シロアリリスクもそれなりに抑えられる、ミドルリスクミドルリターンの施工方法になります。
また、一部のメーカーでは、基礎外断熱と基礎内断熱、両方の合わせ技である基礎外内断熱という方法で施工しているメーカーも存在します。
このような感じで、基礎断熱はメリットが気密断熱が確保しやすいということ、一方でデメリットがシロアリには弱いということ、これが基礎断熱のメリットデメリットになります。
床下断熱と基礎断熱、双方ともにメリット・デメリットがあるのですが、大切なのは自分が検討しているメーカーはどちらのつくり方で家づくりをしているのかを知ること、そして自分が検討しているメーカーは、デメリットに対する対策はどのようなことをしているのかを知り、対策が不十分だと感じたなら、どのようにそのデメリットを補うのかを考える必要があるのです。
では実際に、各大手ハウスメーカーがどのようなつくり方をしているのかというと、例えば床下断熱に関しては
- 積水ハウス(木造・鉄骨)
- 住友林業
- 三井ホーム
- ミサワホーム
- ヘーベルハウス
- ダイワハウス(木造・鉄骨)
- トヨタホーム(軸組、ユニット)
- 一条工務店
これらになります。
また基礎断熱に関しては
- パナソニックホームズ
- セキスイハイム
- トヨタホーム(ユニット)
これらになります。
このように分類することによって、なんとなくそのメーカーの注意しなければならないポイントが見えてきます。
それぞれのメーカーの注意ポイントを意識しながら実例見学会などに挑み、デメリット部分を補う必要があるかどうかを検討していただければと思います。
壁の断熱
続いて『壁』についてです。
壁については大きく分けて3つの断熱方法があります。
それが
- 充填断熱
- 外張り断熱
- 付加断熱
これら3つになります。
充填断熱
まずは充填断熱についてですが、充填断熱は柱と柱の間に断熱材を入れ込んでいくつくり方になります。
そしてこの充填断熱は
- 柱と柱の間に断熱材を入れるのでスペースをとらない
- コストが安い
といったメリットがあります。
ただし反対にデメリットとして
- 柱部分には断熱材がないため、そこだけ熱が伝わりやすくなる
- 配線や配管がある部分は複雑な施工を必要とするため、気密性や断熱性に影響が出やすい
これらがあげられます。
外張り断熱
外張り断熱は、柱の外側を断熱材で巻き、家全体を断熱材で包むつくり方になります。
そのため
- 断熱材を外側にはりつけることから比較的施工がしやすい
- 断熱材で構造体を覆うため気密性が高くなる
といったメリットがあります。
しかし反対に、
- 断熱材上から外壁材を留めるので、断熱材を厚くできない
- 外的環境により経年劣化の不安がある
- 充填断熱に比べてコストが高くなる
これらのデメリットも存在します。
付加断熱
これは充填断熱と外張り断熱の合わせ技です。
合わせ技なので、充填断熱と外張り断熱、双方のメリットが得られます。
具体的には
- 断熱性能・気密性能を高めやすい
- 湿度ムラや断熱欠損、壁内結露が起きにくい
これらがメリットになります。
ただ付加断熱にもデメリットがあって、それが
- 費用が高い
- 壁が厚くなる
これらがあげられます。
このような感じで壁については
- 充填断熱
- 外張り断熱
- 付加断熱
大きく分けて3つの断熱方法が存在するわけです。
そして全てのハウスメーカーのつくり方が、このどれかに該当しているのです。
ただしここまでの話を聞くと「じゃあ結局、充填断熱、外張り断熱、付加断熱、この中のどれが一番いいんだ」という話だと思います。
なんとなく、充填断熱よりも外張り断熱、外張り断熱よりも付加断熱の方がよさそうに聞こえますし、実際に今までの話を聞いてそう思われた方も多いと思うのですが、実はこれに関しては「正解がない」というのが正解なのです。
なぜなら結局のところ、どんな断熱材を何mm使っているのか、これが重要だからです。
ですので例えばですが、先ほど外張り断熱のデメリットで、断熱材上から外壁材を留めるので、断熱材を厚くできないというお話をしたと思います。
それもあってか、実際に外張り断熱をしている会社は、45mmくらいの厚さの発泡系断熱材を入れていることがほとんどなのですが、これはグラスウールに換算すると90mmから100mmくらいのグラスウールにしかならないわけです。
要は何が言いたいのかというと、それでしたら充填断熱でしっかりと断熱材を充填させた方が断熱効果は高いということなのです。
ですのでわざわざ高い費用を払って外張り断熱にする必要はあまりなくて、費用対効果を考えると、充填断熱より外張り断熱の方が効果が高いとは言い切れないわけです。
ただし鉄骨住宅をつくる場合は、柱が鉄でできているので、そこからの熱を遮るためにも外張り断熱の方がいいです。
またコストのことを気にせず、温度ムラをなくして快適な環境をつくることを考えるなら、それは間違いなく付加断熱が最強になります。
その人の状況やつくる家の構造によってベストな選択が変わるため、充填断熱でなきゃダメ、外張り断熱でなきゃダメ、付加断熱でなきゃダメということはないのです。
これが結論です。
今お話したことを理解していただくことで、各ハウスメーカーの壁部分の断熱性の見方がわかるとは思います。
例えば住友林業。
住友林業は通常仕様ですと、柱と柱の間に断熱材を入れる充填断熱になっています。
充填断熱ですので、先ほどもお話したように、一般的な充填断熱のメリットとして
- 柱と柱の間に断熱材を入れるのでスペースをとらない
- コストが安い
といったメリットがあり、
一方でデメリットとして
- 柱部分には断熱材がないため、そこだけ熱が伝わりやすくなる
- 配線や配管がある部分は複雑な施工を必要とするため、気密性や断熱性に影響が出やすい
といったデメリットが存在するわけです。
ですので住友林業を検討するときは、そういった一般的にいわれているデメリットをどう解消しているのかを調べることで、納得感や安心感を得ることができるわけです。
ちなみに住友林業は、気密フィルム、気密テープ、気密ボックスなどで隙間という隙間を全て埋めていく作業工程が標準で入っているので、この点は上手く解消できているのかなと思います。
また住友林業は、北海道東北仕様になると、充填断熱にさらに外張り断熱を加えた付加断熱になります。
そのため本来は、コスト関係なく断熱・気密性能を上げ、温度ムラをなくして快適な環境をつくることを考えると、本州でも北海道東北仕様を選んで付加断熱にした方がよかったりもするのですが…住友林業の場合、外張り断熱部分が20mmしかないので薄すぎるのです。
付加断熱にする場合、本来なら外張り断熱部分の断熱材が最低でも40mmは必要で、できれば60mmあったら完璧なのです。
でないと、夏型結露とよばれる夏に起こる構造躯体内が結露するリスクを完全には払拭することができないのです。
住友林業の北海道東北仕様を選んで断熱性能を上げようと思っても、かけたお金に対して得られるリターンが少ないので、あまりおすすめはしません。
一方で、ダイワハウスの木造。
ダイワハウスの木造は住友林業の付加断熱よりもさらに分厚い付加断熱になっています。
具体的には、ダイワハウスの木造のウルトラW断熱仕様を選ぶと
- 充填断熱
- アクリアウールアルファ36k105mm+20k89mm
- 外張り断熱
- 発泡系断熱材90mm
この断熱構成になるのです。
ここまで壁厚があると夏型結露リスクは完全になくなるので、本来はこういった断熱構成が理想的ではあるのです。
ダイワハウスの木造のウルトラW断熱仕様は最新の断熱仕様なので、住友林業と差が出てしまうのはどうしても仕方のないことなのですが、そのうち住友林業も新しい断熱仕様を出すと思うので、乞うご期待という感じです。
とにかくこのような感じで、壁には充填断熱、外張り断熱、付加断熱、この3種類の断熱方法しかないということと、それぞれのメリット・デメリットは覚えるようにしましょう。
屋根の断熱
最後に『屋根』についてです。
屋根には『天井断熱』と『屋根断熱』この2つが存在します。
ただしこの屋根部分に関しては、提案されるプランによって各ハウスメーカーで使い分けをしています。
例えばですが、よく見るような寄棟タイプの屋根で家をつくるなら『天井断熱』、
片流れとよばれるようなタイプの屋根をつくるなら『屋根断熱』、というようなイメージです。
そのため、自分がどのような間取り提案を受けるのかでこの屋根部分の断熱方法は変わってくるので、今までのように『どのメーカーが』『どの断熱方法』を使っているとはいえません。
ですので間取り提案をされた際に、自分達は『天井断熱』と『屋根断熱』どちらの断熱方法で提案されているのかを確認するようにしてください。
では、『天井断熱』と『屋根断熱』のメリット・デメリットを見ていきましょう。
天井断熱
まずは『天井断熱』のメリットについてです。
天井断熱のメリットは大きく分けて3つあります。
それが
- 断熱材の厚さに制限がない
- 屋根断熱よりもコストが抑えられる
- 冷暖房効率がよくなる
これら3つになります。
まとめて説明してしまいますが、天井断熱はその名のとおり、天井に断熱材を敷き詰めるので、断熱材をいくら厚くしても問題ないのです。
例えば、断熱の性能をてっとり早く高めたいと思われる場合には非常におすすめのつくり方になるのです。
また、屋根面に沿って断熱材を入れる屋根断熱は、屋根面に沿って断熱材を入れる分、施工面積が大きくなるのですが、天井断熱はあくまで天井面に沿った施工になるので、施工面積が狭く、コストが安くなります。
さらに天井断熱の場合は、天井から下の空間だけを冷暖房すればいいので、冷暖房費も低く抑えられ、正直、性能とコストのバランスを考えるのであれば天井断熱一択かなと思います。 ただしそんなバランスのいい『天井断熱』にもデメリットがあって、それが丁寧な施工が必要だということです。
というのも、天井断熱は天井にこれでもかというくらい断熱材を敷き詰めていくことになるのですが、隙間なくきれいに断熱材を敷き詰めるためには、丁寧な施工が必要になります。
例えばですが、一見するときれいに施工されていそうでも、サーモグラフフィーを買って施工現場を見てみると、意外と隙間があって断熱欠損を起こしている場合があります。
この点は注意が必要です。
屋根断熱
続いて『屋根断熱』です。
『屋根断熱』のメリットは大きく分けて2つあります。
- 小屋裏を利用できるので、小屋裏収納やロフト、勾配天井を設けられる
- 断熱効果が高い
この2つになります。
というのも、先ほど説明した天井断熱の場合は、天井裏の空間が断熱されていません。
そのため、天井裏にたまった熱気や冷気が室内空間へ影響してしまうのです。
ですので例えば、夏は2階がすごく暑いというようなことがあると思いますが、それは天井裏の熱気が原因だということです。 建物全体を断熱するので、夏の暑さ対策では『天井断熱』よりも『屋根断熱』の方が圧倒的に有利なのです。
そのため、断熱性能を高めたいなら『屋根断熱』を選択した方がよかったりします。
一方でもちろん『屋根断熱』にもデメリットが存在します。
それが
- 工事費用が高くなる
- 断熱材の厚さに制限がある
- 冷暖房の費用が高くなる
これら3つです。
というのも先ほどお話した天井断熱では、天井の上に敷く断熱材の厚さに制限はありません。
しかし、屋根断熱の場合は入れられる断熱材の厚みに、ある程限界があるのです。
なぜなら、断熱材を入れすぎると断熱材自体の重さに耐えられず、天井面が壊れてしまう可能性があるからです。
ですので例えば、三井ホームのダブルシールド(DS)パネルとよばれる屋根断熱のように、断熱材の効果が高く、かつ軽量な発泡系の断熱材を入れることで、そこまで断熱材を厚くせず、断熱効果を高めることができるのです。
ただし屋根断熱であるにも関わらず、断熱のことを意識していないと、屋根の熱が直接部屋に伝わってくることにもなりかねません。
これですと、断熱性能を高められる『屋根断熱』本来のメリットを潰すことになってしまうので、『屋根断熱』の家を提案された場合は、そこにどのような断熱材が、どのくらい入るのかは確認した方がいいかもしれません。
また、今お話ししたこと以外にも、屋根断熱は天井断熱よりも工事費が1〜3割ほど高くなりますし、断熱気密性能が整っていないと、むしろ冷暖房費用が高くなるという欠点も存在します。
屋根は太陽の熱を一番受ける部分でもあるので、油断せず、自分の家の断熱方法はなにで、どのような断熱材がどのくらい入っているのかはしっかりと確認しておいてください。
ということでここまでの話をまとめると、建物の断熱方法は決まったパターンしかなくて、そのパターンのメリット・デメリットを把握することで、各ハウスメーカーの強みや弱みが見えてきますというお話でした。
具体的には
- 床は床下断熱と基礎断熱の2パターン
- 壁は充填断熱と外張り断熱、そして付加断熱の3パターン
- 屋根は天井断熱と屋根断熱の2パターン
以上になります。
これらは建物のつくり方の基本中の基本なので、絶対に覚えてください。
これが1つ目の『建物の断熱方法について』です。
断熱材の種類
続いて2つ目が『断熱材の種類』についてです。
断熱の方法について理解しはじめると、必ずある疑問にぶち当たることになります。
それが「どの断熱材が一番いいのか?」ということです。
当然、一番性能のいい断熱材を使った方が家の断熱性能はよくなるわけですが、ハウスメーカー各社で使っている断熱材が全然違うのです。
またハウスメーカーによっては「グラスウールは腐るからやめた方がいいです。」「発泡系の断熱材は劣化するからやめた方がいいです。」など、他社を蹴落とすためにいろんなネガティブトークをしてくるわけです。
そのため多くの方が余計に混乱するのですが、ここでは皆さんが迷わないようにするために、断熱材の種類について簡単に説明しておきます。
まず大前提として、断熱材は種類よりも厚さの影響が大きくなります。
ですので例えば、性能のいい断熱材として発泡系の断熱材があるのですが、これよりも性能が低いとされているグラスウールであったとしても、入っている断熱材の厚さが厚ければグラスウールで家づくりをした方が断熱性能がよくなるということなのです。
イメージ的には畳んで平たくしたダンボールとティッシュ1枚を比べたら、どう考えても畳んで平たくした段ボールの方が熱をとおしにくいですが、
テッシュも一箱分の厚みがあったら、畳んで平たくした段ボールよりも熱を伝えにくくなります。
それと同じで、断熱材も何を使っているかよりも、どのくらいの厚さなのかの方が与える影響が大きいのです。
断熱材の種類の優劣を比較するのは、基本的に比較対象が同じくらいの断熱材の厚さだった時のみなのです。
まずはこれを覚えておいてください。
そして肝心な断熱材の種類ですが、かけたお金に対して得られる断熱効果が一番高いのがグラスウールになります。
つまり、コスパがいいのがグラスウールという話なのですが、グラスウールはその特性上、施工が難しいというデメリットが存在します。
ですので、現場の職人さんがきれいに断熱材を施工したつもりでも、実は一部断熱欠損を起こしていることもあるのです。
そのためAmazonなどでサーモグラフィーを買って、工事中に断熱欠損が起きていないかどうかを確認しておいた方がいいです。
それに対して、コスト度返しで得られる断熱性能を優先するのであれば、発泡系の断熱材がベストになります。
ただし、発泡系の断熱材は表面のスキン層とよばれるテカテカした部分に傷がつくと、そこから断熱性能の元となるペンタンガスや二酸化炭素が抜けて断熱材自体が劣化してしまいます。
場合によっては1年で30%〜40%断熱性能が下がるともいわれているくらいです。
発泡系の断熱材は、現場での取り扱いが非常に難しい断熱材でもあるのです。
ちなみに余談にはなりますが、吹き付け系の断熱材を使っているところは最悪です。
吹き付け断熱材は、壁に断熱材を吹き付けると同時に、一気に膨らむのです。
そして膨らみ切ったところで表面にスキン層が形成されるのですが、膨らみすぎて壁に収まらないので、削って壁に収めます。
施工の都合上、どうしてもスキン層を破壊することになり、断熱材の劣化も激しいのです。
吹き付け系の断熱材はローコスト系の住宅で使われることが多いのですが、安いには安いなりの理由があるというのはこういうところがあるからなのです。
話をまとめると、断熱材は種類よりも厚さの方が重要であるということで、コスパがいいのはグラスウール、コスト度返しで、より性能を求めるなら発泡系の断熱材がいいということでした。
ただし、どちらにもデメリットが存在するので、グラスウールを使っているハウスメーカーの場合は施工中の現場を必ず確認すること、発泡系の断熱材を使っているハウスメーカーの場合は、スキン層が破壊されないようにきちんと仕組みづくりがされているかどうかを確認することがポイントです、という話でした。
ここまでが『建物の断熱性能』についての話で
- 建物の断熱方法
- 断熱材の種類
以上2つの説明でした。
窓の断熱性能
続いて『窓の断熱性能』についてです。
建物において窓は非常に重要な部分です。
なぜなら、建物の機能性とデザイン性の両方を担う建材だからです。
それにも関わらず適当な窓を選んでしまうと、一生後悔することになります。
というのも、日本の窓は海外の窓と違い、簡単に交換できるように施工されていません。
この辺りの詳しい話をしてしまうと話が超絶マニアックな方向に進んでしまうので簡単に説明をしますが、日本は取りつけのしやすさ重視で窓の設置がされているのに対して、海外は住みやすさ重視で窓を設置しているのです。
図に表すとこのような感じです。
こういった施工方法の違いがあって、海外はリフォーム時に窓の取り替えも容易なのですが、日本は窓の取り替えが難しいのです。
こればかりは仕方ない部分でもあるので、やはり窓は交換しない前提で家づくりをする必要があります。
ただし一言で窓といっても、知っておくべきことがけっこうあります。
具体的には
- 令和版!窓の設置目的
- 窓を設置する際のコツ
- 窓枠の性能
- ガラスの性能
- スペーサーの性能
以上の5つになります。
こちらも大枠の部分から順番に説明をしていきます。
令和版!窓の設置目的
まずは『令和版!窓の設置目的』ということについてです。
先程のパートで断熱について説明してきましたが、実は建物の断熱性能だけを上げても家は暖かくならないのです。
なぜなら熱源が必要だからです。 例えばダウンジャケットを思い浮かべてもらいたいのですが、ダウンジャケットは人体の熱を逃さないようにすることで保温され、暖かくなるわけです。
それと同じで、保温される熱源がないと、いくら建物の断熱性能を上げても家は暖かくならないのです。
ではどのように熱源を確保するのかというと、その1つの方法として『日差しを取り入れる』ということがあります。
というのも、冬場、窓から日差しを取り入れることで、コタツ1台分の熱量を常時取得することができるのです。
そして建物の断熱性能が高ければ、日差しから得た熱を保温することができるのです。
結果、暖房器具に頼らない家づくりができます。 しかし一方で、夏場家の中に日差しが入ってしまうと、今度はその熱を保温するので、冷房が効かない家になってしまいます。
これを家のオーバーヒートといったりします。
そのため、家の断熱性能を上げたら、冬場は日差しを取り入れて、夏場は日差しを遮る、そして日射取得、日射遮蔽に配慮した設計が必要で、そこに眺望のいいところに窓を設置することで、はじめて機能性とデザイン性、両方に配慮した窓の設置ができるのです。
わかりやすくまとめて言い換えるなら、窓本来の目的は
- 採光
- 眺望
- 日射取得
この3つだけだということなのです。
ただし日本には、昔から通風信仰というものがあって、担当の住宅営業マンや設計士によっては、換気目的で窓をつけることを提案してくる人がいます。
こういう担当者が自分の担当になったら危険だと思ってください。
というのも、換気目的での窓の設置は、昭和の家づくりの仕方だからです。
これがどういうことなのか、もう少し具体的にお伝えをすると、例えば日本の家づくりではよく「風が抜けるようにしないと湿気が抜けない」、「湿気が抜けないと家の中がカビる」などという考えから、東西や南北など、直線で風が抜けるように窓を配置することがあります。
これに関しては賃貸の間取りでもそうなっていることが多いですし、もしかしたら今現在、間取りの打ち合わせ中という方も、東西や南北など、直線で風が抜けるように窓が配置されているかもしれません。
しかし今の時代の家づくりは、建物の断熱性能と気密性能を上げて、その上で24時間換気システムという換気システムを使って換気をすることで、窓を開けずとも、24時間365日、家の中を換気できるようになっているのです。
そのため、そもそも窓を開ける必要性はないのです。
しかもイメージしてもらえればわかると思いますが、今の日本は高温多湿な環境です。
ですので窓を開けて「外の空気が気持ちいい。」なんて感じる期間があまりにも短すぎるわけです。
事実、11~2月の外気は寒くて乾燥した空気であるため、寒いし、乾燥するしで窓を開ける人はほとんどいないはずです。
3~4月は温かくなりはするものの、3月はスギ、4月はヒノキの花粉が飛びます。
家族に1人でも花粉症の人がいるなら、窓は開けられないと思います。
5月は、辛うじて開けられます。
6月は梅雨に入るので、窓を開けた日には室内の湿度が90%というようなことも十分に有り得ます。
7~9月は、夏で気温が高くて、湿度も梅雨と大差ない状態なので、基本的にエアコンを使って過ごしているはずです。
10月は、天気がよければ開けられると思いますが、台風が多い時期です。
このようにみていくと、まともに窓を開けられるのは5月くらいしかありません。
10月も多少窓を開けることはできますが、それでもだいたい1年のうち10ヶ月は窓を開けられない期間なわけです。
こういった事実があるにも関わらず、皆さんは通風のためにわざわざ高額な費用を払ってまで窓をつけようと思いますか?
はっきり言いますが、窓を開けて湿度をコントロールする、通風をよくするという考え方は、昭和の家づくりの考え方です。
今は、令和です。
令和のこの時代に昭和の家づくりをしてどうするんですか?という話でもあるので、これから家づくりをされる方は、換気目的の窓が入っていないかどうかは必ず確認しなければなりません。
窓を設置する際のコツ
続いて『窓を設置する際のコツ』についてです。
先ほどの話を聞いて「理論理屈はわかったけど、なんだか窓の設置の仕方を考えるのって難しそうだな。」と思われた方もいると思います。
ただし、ポイントさえ抑えれば、そこまで難しいものでもありません。
ですので、ここでは窓を設置する際のコツである
- 南の窓を大きくして、東・西・北の窓はできるだけ小さくする
- 南の窓は断熱型の窓を設置して、東・西・北には遮熱型の窓を設置する
これら2つを順番にお伝えします。
南の窓を大きくして、東・西・北の窓はできるだけ小さくする
まずは『南の窓を大きくして、東・西・北の窓はできるだけ小さくする』ということについてです。
これはもうそのままの意味ではあるのですが、窓の配置は「南の窓を大きく、東・西・北はできるだけ小さくする」これがセオリーになります。
なぜなら、通風という目的がないのであれば、基本的に東西北の窓は設置する必要がないからです。
南側の窓をとにかく大きくして、そこからたくさん光を取り入れられるのであれば、わざわざ東・西・北に窓を設置する必要がないのです。
それにも関わらず、東西北に窓を設置してしまうと、例えば夏場、西日がキツくて家の中が暑くなりやすくなります。
先ほども説明したとおり、高断熱高気密の家は、言い換えれば保温力の高い家ということなので、家の中が暑くなりやすいということは、それだけエアコンの効きが悪くなるということなのです。
また、冬場は冬場で致命的で、そもそも窓はそれをつけるだけで、かなり家の断熱性能が落ちるのです。
具体的に説明をすると、よく使われる窓に
- 樹脂サッシのトリプルガラス
- 樹脂サッシのペアガラス
- アルミ樹脂複合サッシのペアガラス
これら3つがあるわけですが、それぞれの窓の熱貫流率と熱抵抗値というものを出して、住宅の壁によく使われる高性能グラスウール24k 100mmに換算した場合、
- 樹脂サッシのトリプルガラス 30.3mm
- 樹脂サッシのペアガラス 17.8mm
- アルミ樹脂複合サッシのペアガラス 12.7mm
となるのです。
難しい計算式については今回省きますが、とにかく、窓をグラスウールに換算すると、いくら窓の性能を上げたとて、壁の断熱性能には勝てないということがわかると思います。
ですので、窓は無駄につければつけるだけ家の性能が落ちてしまい、冬場は家の中が寒くなりやすくなり、夏場はその逆で家の中が暑くなりやすくなります。
『南の窓を大きくして、東・西・北の窓はできるだけ小さくする』、このセオリーを守ることが重要になってきます。
南の窓は断熱型の窓を設置して、東・西・北には断熱型の窓を設置する
続いて、『南の窓は断熱型の窓を設置して、東・西・北には遮熱型の窓を設置する』ということについてです。
実は窓には2種類あるのです。
それが断熱型と遮熱型です。
それぞれの説明をすると、断熱型の窓は日射取得がしやすい一方、室内からの熱損失が大きい という特徴があります。
一方で遮熱型の窓は日射取得がしにくい一方、室内からの熱損失が少ないという特徴があります。 「うんうん、なるほど、わからん!」という感じだと思うので、わかりやすく言い換えると、日射取得をしたい南の窓は断熱型、東西北の日射取得としては適さない場所は遮熱型の窓を採用するようにしましょうということになります。
これでしたらわかりやすいですよね。
こうする理由は、建物の南側からは効果効率的に日差しを取り入れて室内や構造躯体を温めなければ、いくら断熱性能のいい家でも冬は寒くなるからです。
そのため南面には日射取得のしやすい断熱型の窓が必要になってくるわけです。
反対に東西北の窓は、例え窓をつけたとしても、そこからの熱の影響は受けたくないので、遮熱型にする必要が出てくるわけです。
ですので、断熱型と遮熱型、それぞれを使い分けて設置する必要があるのですが、この辺に疎い担当者、あるいはあまり重要だと考えていない設計士が自分の担当者になると、この辺りの提案がすごく適当です。
これに気がつかずにそのまま窓を設置してしまうと、
- 断熱性能を上げたのに思ったよりも寒い
- 断熱性能を上げたのに思ったよりも暑いしエアコンも効きにくい
など、そういったことになりかねないので、本当にご注意ください。
ということで『窓を設置する際のコツ』は
- 南の窓を大きくして、東・西・北の窓はできるだけ小さくする
- 南の窓は断熱型の窓を設置して、東・西・北には遮熱型の窓を設置する
この2つになります。
他にも引き違い窓を使わず、なるべくドレーキップ型の窓やFIXタイプの窓を採用するなど、ちょっとした小技もあるのですが、できるメーカーが限られますし、いろいろと条件を出せば出すほど決まった形の家づくりにどうしてもなってしまいます。
ここでは今お伝えした基本的なポイント2つを確実に習得していただき、あとは皆さん自身で応用を効かせてみてください。
窓枠の性能
続いて『窓枠の性能』についてです。
住宅では窓枠部分のことを『サッシ』といいます。
サッシには4種類あって、具体的には
- 【性能:低】アルミサッシ
- 【性能:中】アルミ樹脂複合サッシ
- 【性能:上】樹脂サッシ
- 【性能:極】木製サッシ
この4つになります。
多くのハウスメーカーがアルミ樹脂複合サッシを標準採用していて、樹脂サッシ、木製サッシは採用されることがほとんどない、というのがハウスメーカーの実態なのですが、住宅の高気密高断熱化が進めば進むほど、樹脂サッシ以上の性能の窓が必要になってきます。
なぜなら、窓が結露しやすくなるからです。
というのもハウスメーカーが標準的に使っているアルミ樹脂複合サッシは、外気と室温の温度差が20℃の場合、室内の湿度が52%以上になると結露しはじめるという特性があります。
樹脂サッシは外気と室温の差が20℃の場合、室内の湿度が73%以上になると結露しはじめます。
つまり住宅が高気密高断熱になればなるほど、アルミ樹脂複合サッシでは結露リスクが高まるということです。
住宅営業マンによっては「アルミ樹脂複合サッシでも十分です。結露しません。」というのですが、それは裏を返せば「自分達は断熱性能と気密性能の悪い住宅を売っています。」といっているのと同じなわけです。
サッシは家の断熱性能や冬場の快適性に大きく関わってくる部分です。
きちんと特性を理解した上で採用するようにしてください。 基本的に今の時代は、樹脂サッシをメインで考えて、意匠性が気になるなど、どうしても採用しなければならない場合に限ってアルミ樹脂サッシを採用するというのがおすすめです。
ガラスの性能
続いて『ガラスの性能』についてです。
窓には
- シングルガラス
- ペアガラス
- トリプルガラス
という3つのガラスがあります。
ただし今現在、ほとんどシングルガラスは使われていません。
ですので、ペアガラスもしくはトリプルガラスを採用することになります。
また、ペアガラスやトリプルガラスの間には断熱性能の元となる素材が入っていて
- アルゴンガス
- クリプトンガス
- 真空
これらのどれかが入ることになります。
ちなみに、ペアガラスよりもトリプルガラスの方が断熱性能は高くなります。
また、ガラスの間に入る断熱性能の元となる素材は、アルゴンガスよりもクリプトンガス、クリプトンガスよりも真空といった感じで断熱性能が高くなります。
では、結局どの組み合わせがベストなのかというと、トリプルガラスはマストで、あとは値段や窓のサイズ感を確認して、ガラスの間に入る断熱性能の元となる素材を決めるというのがベストになります。
というのも、実はガラスの間に入る断熱性能の元となる素材である、
- アルゴンガス
- クリプトンガス
- 真空
これらは年間で1%〜2%くらい断熱性能が落ちるといわれています。
なぜなら、ガスが抜けたり、空気が入ったりするからです。 そのため例えば、ペアガラスだと、ガラスとガラスの間にあるいわゆる中空層が1層しかないため、窓の性能の劣化も早くなるわけです。
一方でトリプルガラスは中空層が2層あるので、多少断熱性能が下がってもペアガラスと比較して圧倒的に劣化スピードが遅くなります。
ですので基本的にはトリプルガラス推奨で、ガラスの間に入る断熱性能の元となる素材は、値段や窓のサイズ感を確認して決めるのがベストです。
ただし、こういったことを知らずに「トリプルガラスは必要ありません。」「トププルガラスにすると重くなるのでおすすめしません。」など、わけのわからない理由で何がなんでもペアガラスを推し進めてくる営業マンもいます。
そういった営業マンは間違いなく、トリプルガラスを採用した経験もなければ、なぜトリプルガラスにしなければならないのか、その理由も答えられないはずです。
ペアガラスを推し進めてきたら、やばい営業マンだと思ってください。
スペーサーの性能
最後に『スペーサーの性能』についてです。
スペーサーとは、ガラスとガラスの間のスペースをつくるためのパーツのことをいいます。
言葉だとわかりにくいので画像をお見せすると、この部分です。
この部分、いまだにアルミを使っているハウスメーカーもあるのですが、それですと断熱性能が下がってしまうので、本来は樹脂がベストなのです。
今時アルミのスペーサーは時代遅れもいいところなので、自分達が提案された窓のスペーサーはアルミなのか樹脂なのか、これは必ず確認するようにしましょう。
正直、アルミスペーサーの窓しか使えないハウスメーカーは、その時点で選択から外してもいいくらいです。
ということで『窓の断熱性能』について
- 令和版!窓の設置目的
- 窓を設置する際のコツ
- 窓枠の性能
- ガラスの性能
- スペーサーの性能
以上の5つをお伝えしました。
この5つに関しては基礎中の基礎になります。
本来は、さらにここにデザイン系の注意事項が入ってきます。
考えただけでも頭が痛くなりますよね。
ただ冒頭でもお伝えしたように、デザインよりもまずは建物の機能性が重要です。
今お伝えした窓の性能に関する5つのことは丸暗記してください。
建物の気密性能
続いて『建物の気密性能』についてです。
気密とはどれだけ家に隙間が空いているのかを一言で言い換えた言葉になります。
そしてその隙間を埋める工事のことを気密施工といいます。
具体的には、建材と建材の接合部分を気密シートや気密テープとよばれるものを使って隙間をなくすように施工していくわけですが、これをやるのとやらないのとでは住宅の性能に大きな差が生まれてくるのです。
では実際に気密施工をやらなければどのような性能差が生まれてくるのかというと、それが
- 家の保温性能
- 家の省エネ性能
これら2つに差が出てくるのです。
もしかしたら「知っている」という人もいるかもしれませんが、念の為それぞれ説明していきます。
家の保温性能
まず最初に『家の保温性能』ということに関してです。
このことをわかりやすく説明するために、皆さんにイメージしてもらいたのですが、例えばビニール袋に水を入れるとします。
そのビニール袋に1mmの穴が開いていたとします。
1mmの穴なので、入れる水の勢いをあまり強めずとも、ある一定の水位は保てると思います。
ただし袋の底に5cmの穴だったらどうでしょう?
入れる水の勢いをかなり強めなければ、一定の水位を保てないと思います。
これはなんとなくイメージできますよね?
実は家でもこれと全く同じことが起きるのです。
家に空いている穴の大きさが大きければ大きいほど、そこから温めた空気や冷やした空気がドンドン逃げていくことになります。
快適な室温を保つためには、エアコンをガンガン使い続けるしかなくなってしまうのです。 そうなると極端な話、冷房設定を18℃で強風運転にしても、なかなか部屋の温度が下がらない、
暖房をかけても隙間風が起きて床から底冷えするなど、そういったことになりかねないわけです。
そのため、家の保温性能を上げるためにも気密施工が必要なのです。
これが1つ目です。
家の省エネ性能
続いて2つ目は『家の省エネ性能』に関してです。
先ほどもお伝えしたとおりで、家の気密性能を上げることによって家の保温性能が上がります。
そうなると当然、エアコンを使う量が減るので省エネにもつながります。
逆に気密施工をしなければ、いくらエアコンをかけてもどんどん隙間から暖気や冷気が逃げていくことになるのです。
これは感覚的には真冬に下は短パンとサンダルを履いて、上だけはダウンジャケットを着ているくらいチグハグな行為なのです。
ですので、気密施工をやらなければ家の省エネ性能が下がってしまいますというのが2つ目になります。
気密施工をやらないとどのような性能差が生まれてくるのか、これをまとめると
- 家の保温性能
- 家の省エネ性能
これらの性能差が生まれてきてしまうというお話でした。
ここまで聞いていただいた皆さんでしたら「気密施工を行った方がいい」ということはわかっていただけたかと思いますが、ただしここで問題になってくるのが「ただやればいい」というわけではないということです。
気密施工もここまでやらなければならないという明確なボーダーというのがあります。
ではそのボーダーとはなんなのかというと、気密を表すC値、これが1以下であるということなのです。
ここは絶対にクリアしなければならない値なのですが、逆をいうと1さえクリアしてしまえば、C値が0.8だろうとC値が0.5だろうと、正直そこまで大きな差はないのです。
また建築地によっては、C値が悪くてもほんの少しだけカバーできる場合もあります。
これについて順を追って説明していきます。
まずはこちらをご覧ください。
こちらの表は
- 外の温度と室内の温度差
- その地域の平均風速
これらを基に家の漏気がどれだけ起こるのかを表したグラフです。
つまりこのグラフがC値の重要性を全て物語っているというわけなのですが、読み方を説明していきます。
このグラフは右から見ていくのですが、右のグラフを読み解くには
- 外の温度と家の中の温度の差を表しているΔT
- 建築地の外部風速
これらを知る必要があります。 気象庁からそれらの値をもってくるわけですが、例えば東京を1つの例として見ていきましょう。
東京の2022年の風速は、平均すると1年で2.7m/sになります。
そして外の温度と家の中の温度の差に関しては、仮に室内の温度が20℃だと仮定して、冬の外の平均気温が5℃だったとします。
そうすると外の温度と室内の温度の差は15℃になります。
あとはこれらの値をグラフに当てはめつつ、建築地が
- だだっ広い土地
- 一般的な住宅地
- 住宅密集地
これを選択して交点にポイントを打ちます。
今回は普通の住宅地を選択しますが、そのポイントを軸にして水平線を引いていきます。
すると先ほどの
- 建築場所が東京の一般的な住宅地
- 1年の平均風速が2.7 m/s
- 外の温度と室内の温度の差は15℃
という条件の場合、1時間で家の容積の何%の空気が勝手に入れ替わってしまうのかがわかるようになるのです。
実際に表を見てみるとなんとなくわかりますが、東京の普通の住宅地に建築するとC値が4の場合、1時間で家の空気の約30%が勝手に入れ替わることになります。
また、C値が1.5くらいで家の空気の約10%、C値が1くらいで家の空気の約8%が勝手に入れ変わってしまうということが読み取れるのです。
要は、C値が悪いと先ほども説明したように
- 家の保温性能
- 家の省エネ性能
これらに悪影響を及ぼしてくる可能性が出てきます。
ただしここの表を見てみるとわかると思うのですが、C値というのは
- C値が1を切ってくると漏気の量は大きくは変わらない
- 住宅密集地だと外部風速の影響を受けにくいので、C値が悪くてもほんの少しカバーできる
ということが見えてくると思います。
C値が1を切ってくると、表を見る限りそこまで目に見えるほど大きな差はないわけです。
また、建物に風が吹きつけられることで、隙間から家の中に風が入ってくるわけなので、都心のような住宅密集地で家を建てる場合、周辺の住宅が暴風壁の役割を果たしてくれるのです。
そのため「住宅密集地だと外部風速の影響を受けにくいので、C値が悪くてもほんの少しカバーできる」ということが言えるのです。
気密の取りにくい鉄骨住宅が住宅密集地向きの建て方だということは、ここからもなんとなく見えてくるわけです。
少し話がそれましたが、こういった理由があって、世間一般的にC値は1を切れば合格と言われていますし、0.5が出せれば尚のこといいと言われているのです。
ということで、これから家づくりをされる皆さんは、ぜひとも気密を重要視して家づくりをしていただければと思います。
ただしここでも注意事項があって、ハウスメーカーの中には全く気密施工をしないメーカーもあります。
また、中途半端な施工だけして、完璧に気密施工を行わない仕様になっているハウスメーカーもあるくらいです。
それがどこのハウスメーカーなのかは言えませんが、これはもう事実なので、皆さんもご注意ください。
もしまともに気密施工ができないなら、よほどの理由がない限り、検討から外してしまってもいいかもしれません。
建物の換気性能
実は換気もものすごく重要なのですが、これから家づくりをされる方の多くは「換気」と聞いておそらく「窓を開ければ換気になるじゃん。」「換気の何が重要なの?」と思われると思います。
確かにその気持ちはわかりますし、換気なんて適当に考えても問題ないと思われるのもよく理解できます。
しかし実際には換気には多くの効果があるのです。
換気の効果
換気は
- チリやホコリを外に排出してくれる効果
- 匂いを外に排出してくれる効果
- 二酸化炭素濃度を下げてくれる効果
- 室内の湿気を取り除いてくれる効果
これら4つの効果があります。
ただし換気がうまくできないと、今お伝えしたこととは反対のことが起きるわけです。
つまり
- チリやホコリが溜まりやすくなる
- 匂いを外に排出してくれず、夕飯の匂いが翌朝も残っている状態になりやすい
- 二酸化炭素濃度が上がり、集中力が低下する、睡眠の質が下がる
- 湿気が下がりにくい室内環境になる
こういったデメリットが発生してくるのです。
これを聞くだけでも、なんとなく換気が重要であることが伝わるのではないかと思います。
ただし換気は、それ単体ではうまく効果を発揮しないのです。
気密が取れている状態でないと、きちんとした換気性能を発揮できないのです。
これが一体どういうことか、大枠から説明していきます。
実は家には、外気を取り入れるための吸気口と、室内の空気を外に排出するための排気口とよばれるものがあります。
ですので本来なら、吸気口から排気口に向かって一直線に空気が流れることで上手く換気ができるわけです。
ただし気密が悪いと、いろいろなところから隙間風が入ってきます。
そしてその結果、気流が乱れて上手く換気ができなくなるのです。
そうなると先ほどもお伝えしたように
- チリやホコリが溜まりやすくなる
- 匂いを外に排出してくれず、夕飯の匂いが翌朝も残っている状態になりやすい
- 二酸化炭素濃度が上がり、集中力が低下する、睡眠の質が下がる
- 湿気が下がりにくい室内環境になる
これらのデメリットが発生してきてしまうのです。
特に湿気に関しては非常に厄介で、気密と換気が上手くできていなければなかなか除湿できません。
少し思い返してみてください。
例えば夏場、湿度が高い時に除湿したいなと思った経験は人生で一度はあると思います。
しかしそう思ってエアコンの温度を下げてしまうと、確かに湿度は下がるものの、室内の温度も下がってしまうわけです。
そうなると今度は、室内が冷えすぎて不快感を感じてしまい、結果しばらくしてからまたすぐにエアコンの温度を上げてしまいます。
エアコンの温度を上げたら上げたで、結局また湿度が上がってしまうわけです。
最終的には、もうどうすることもできないので、湿度が高くても我慢するしかなくなります。
今お話したような経験をしたことはありませんか?
これは全て換気がうまくできていないからです。
本来なら換気がきちんと機能していれば、そこで湿度のベースラインが下がり、空調が効きやすくなります。
そのため、湿度をコントロールしやすくなるのです。
しかし上手く換気ができないと、当然のことながら湿度を上手くコントロールできません。
湿度コントロールがうまくできないと、室内にいて不快感を感じるのはもちろんのこと、カビ、ダニ、ノミ、ゴキブリ、これらが発生しやすくなります。 具体的には湿度70%以上から100%の状態ですと、今お伝えしたカビ、ダニ、ノミ、ゴキブリ、これらが活発に活動するといわれています。
ですので、それら人体に有害な虫やら菌を発生させず、快適な空間を保つためには
- 夏は体感温度27℃、相対湿度60%
- 冬は体感温度21℃、相対湿度50%
この温湿度に留めておくことがいいとされていて、それを保つためには換気が必要なのです。
しかし換気だけではだめで、その前に気密が取れている必要があります。
また、気密が取れていても断熱がうまくできていなければ外気の影響を大きく受けてしまうので、断熱も必要なのです。
ですので、断熱、気密、換気のこの順番で家づくりをすることが重要です。 1年を通じて湿度を50%以上60%以下に留めておくことが高気密高断熱の住宅をつくる上での最終到達系ともいえるので、換気は適当に考えず、しっかりと選び、採用してください。
換気の種類
ではここから実際に、換気の種類についてお伝えをしていきます。
換気には
- 第1種換気
- 第2種換気
- 第3種換気
- 第4種換気
という4種類が存在します。
そのうち第2種換気は主に病院で使われる換気となります。
また、第種4換気は幻の換気とよばれる換気方法で、詳細は割愛しますがほとんど使われていません。
ですので、住宅で使われる換気というのは、第1種換気か第3種換気になるのです。
では、第1種換気と第3種換気、それぞれどのような違いがあるのかを解説します。
第1種換気
第1種換気は、まずは機械を使って室内に外気を取り入れます。
そしてその後に、機械で室内の空気を外に排気します。
そのため、機械給気、機械排気の換気方法ともよばれています。
また第1種換気には2種類タイプがあって、それが『全熱型』と『顕熱型』です。
全熱型は機械で室内に外気を取り入れる際に、取り入れた外気を室内の温度に限りなく近い温度にすると同時に、加湿と除湿を行ってくれるもののことをいいます。
顕熱型は外気を室内に給気する際に、外気を室内の温度に限りなく近い温度にして取り入れてくれるもののことをいいます。
温度調整と除湿加湿を行ってくれるのが『全熱型』で、ただ温度の調整をしてくれるだけのタイプが『顕熱型』だということです。
第3種換気
一方で第3種換気、こちらは外気をそのまま室内に取り込み、機械で室内の空気を排気するタイプのことをいいます。
そのため、自然給気、機械排気とよばれていたりもするのですが、第3種換気の場合、除湿も加湿もしないまま、ただただ外気を室内に取り入れることになるわけです。
つい数年前までどのハウスメーカーもだいたい第3種換気を提案していたのですが、最近では、ほとんどのハウスメーカーが第1種換気にシフトしてきています。
高断熱高気密の住宅をつくるのであれば、第1種換気、その中でも除湿加湿ができる全熱型を採用するようにしましょう。
建物の空調設計
今まで断熱、気密、換気、これらについてお話をしてきましたが、これらをしっかりと整えると、各部屋の空調効率がよくなります。
ですので例えば、今までのように各部屋に1台エアコンを設置してしまうと、その部屋がすぐに冷えたり、すぐに温まったりしてしまうのです。
そうなるとエアコンをつけたり消したりすることになるわけなのですが、これはエネルギー効率が非常に悪い行為なのです。
なぜなら、エアコンはつけたり消したりする時が一番電気代がかかるからです。
それを知らずに頻繁にエアコンをつけたり消したりしてしまうと、例えるなら、プリウスに乗りながら、アクセルベタ踏みをして、すぐに急ブレーキをかけるというような行為を連続で繰り返すのと同じくらいエネルギー効率の悪いことをしていることになるのです。
いくらプリウスに乗っていたところで、そんな無茶な乗り方をしていたら、ガソリンの消費も激しくなります。
エアコンのオンオフを頻繁に行うのはそれと同じなのです。
ですので、断熱、気密、換気、これらをしっかり整えた住宅というのは、いかに数少ないエアコンで家全体を涼しくできるか、暖かくできるか、という空調デザイン力が必須になってくるのです。
この部分は間取りのデザインや各ハウスメーカーの工法も絡んでくるところなので、どこにどんな空調設備を設置すれば正解なのかを明確に伝えるのは、正直非常に難しいです。
しかし、理論理屈をしっかりと理解すると「なるほど。」と思いますよね。
またエアコンは、標準使用期間が10年とされていて、それを超えて使用すると、発火や故障による怪我をする恐れがあるとされています。
実際に皆さんの自宅にあるエアコンの下側、あるいは側面にその文言がシールで記載されていると思います。
ですので基本、エアコンは10年で交換するものなのです。
それにも関わらず、5台も6台もエアコンをつけてしまったら、例えば一番グレードの高いエアコンですと40万円くらいするので、5台なら10年ごとに200万円、6台なら10年ごとに240万円かかってくるわけです。
そういう側面から考えても、断熱、気密、換気を整えた上で、空調デザインをしっかりする必要があるのです。 ですので皆さんも、自分がされている提案が、ただただ思考停止で各部屋にエアコンをつける提案になっていないかどうか、これはきちんと確認するようにしてください。
その他重要な設備仕様に対する考え方
ここまでで建物の基本的なスペックについてのお話をしてきました。
ざっくりまとめると、断熱、気密、換気、空調、この順番で家づくりを行うことこそが重要で、これらをどれだけできるのかが、ハウスメーカー各社を比較するポイントでもあるわけです。
そしてここからさらに今の時代にあった家をつくるべく、重要な設備仕様に対する考え方を4つほど共有します。
具体的には
- 太陽光発電
- 給湯器
- 床暖房
- 蓄電池
以上の4つになります。
こちらを順番に説明していきます。
太陽光発電
最初は『太陽光発電』です。
いまだに一部の人は太陽光をのせることに対して反対しているのですが、それでも私は太陽光をのせることをおすすめします。
というのも、「再生可能エネルギー発電促進賦課金 通称:再エネ賦課金」とよばれる制度があるのですが、これが年々上がっているのです。
実際にグラフを見ると、このような感じです。
要は何をいいたいのかというと、元々の電気料金に加えてさらに支払う電気代が増えているということなのですが、これだけですと何のことかわからないと思うので、少し大枠からお話をしていきます。
実は2012年、国が太陽光発電や風力発電などでつくられた電気を一定期間買い取りますよという制度を開始しました。
これを「固定価格買取制度(=FIT制度)」というのですが、これだけ聞くと「太陽光をつければ国からお金をもらえるんだ、ラッキー。」と思いますよね。
しかし実は、太陽光で発電した電気を固定価格で買い取るための原資が「再生可能エネルギー発電促進賦課金 通称:再エネ賦課金」とよばれるもので、要は国は国民から集めたお金で、太陽光が発電した電気を買い取っているのです。
ですので、太陽光をつければ国からお金が貰えるのではなく、感覚的には国からお金を取り戻している、というような感じなのです。
実際に再エネ賦課金は、電気を使用している人であれば、法人・個人問わず、ほぼ全員が支払っているものになるので、皆さんもご自身の電気料金の明細書を見れば、再エネ賦課金がしっかりと徴収されているのが確認できるはずです。
そしてそれの負担が年々増えてきているというわけなのです。
そのような背景もありつつ、さらに電気料金自体も上がってきているというのが最近の傾向です。
ですので、尚のこと太陽光発電をつけた方が得、というよりか、むしろここまでくると、太陽光が自分達家族を金銭的に守る1つの手段になってくるようなイメージです。
太陽光は環境によくない、太陽光はリサイクルできないなど、散々いわれていますが、それはデマで、よくよく調べれば太陽光ほどコスパのいい投資はないというのがわかると思います。
皆さんも太陽光は必ずのせるようにしてください。
給湯器
続いて『給湯器』です。
ハウスメーカー各社はガス会社と癒着しているからなのかわからないですが、エネファームをやたら推奨してきます。
ただエネファームは、正直おすすめしません。
もし今打ち合わせ中の方がいましたら、すぐにでも取り外すことをおすすめします。
なぜなら、多くの方が思っている以上に、日々の光熱費が高くなる可能性があるからです。
これがどういうことか、大枠の部分から説明をしていきます。
そもそもエネファームという給湯器は、ガスを分解した時に出る熱と電気を利用することによって、お湯を沸かしつつ発電をするというものになります。
ですので例えば、エネファーム自体が発電するので、災害時は多少電気が使えて便利といわれていますし、電気とガスを併用して使うので、日々の光熱費が抑えられるといわれていたりします。
実際、エネファームのパンフレットには、ものすごく快適そうな写真が掲載されているので、雰囲気的にエネファームを入れれば快適に過ごせそうな気がしますし、光熱費が抑えられるような気もしてきます。
しかし、本当のところはどうなのかというと、先ほどもお伝えしたように、多くの方が思っている以上に日々の光熱費が高くなるのです。
というのも、ハウスメーカー各社が採用を推奨してくるエネファームは、パナソニック製のものになります。 パナソニック製のエネファームは、特徴として学習機能というのがついているのですが、この学習機能は、大量にお湯を使う時間を逆算して、タンクの中の水を60℃に温めるという機能です。
これだけ聞くとなんだか耳障りが非常にいいのですが、実際この学習機能がかなり怪しくて、けっこう長い時間、ダラダラお湯を沸かしながら発電しているのです。
つまりその間にガスが垂れ流しになっているということです。
また、例えば19時にお風呂に入るので、それに向けてエネファームがタンク内にお湯をつくり始めたとします。
そして溜まったタンク内のお湯を浴槽に使ったとします。
すると当然、使ったお湯の分の水量を埋めるべく、水道水が補充されるわけです。
ここまではなんとなくイメージできると思います。
ただ図を見ると、その補充された水は、都度都度発電しながらお湯に変換されていると思ってしまうのですが、実はこれ、半分正解で半分不正解になります。
というのも、タンク内が水の状態で、すぐにお湯が必要な場合は、エネファーム内に入っているバックアップ熱源機がガスを使ってお湯をつくる仕組みになっているのです。
そしてこのバックアップ熱源機というのは、かっこいい名前にしてわかりにくくしているだけで、正体はガス給湯器のエコジョーズなのです。
つまり、タンクのお湯がなくなった後、さらにお湯を使おうとしてシャワーなどを使用すると、発電しながらお湯をつくりつつ、同時にバックアップ熱源機というカッコよく改名しただけのエコジョーズも稼働するので、2重でガスを使うハメになるのです。
ガス料金の低い一昔前でしたらそれでもお得だったのかもしれませんが、今はガス料金が高騰しています。
この仕組みのせいなのか、エネファームを導入している方の光熱費は、電気とガス合わせて4万円から4万5千円くらいしていました。
月々4万円から4万5千円の光熱費は、住宅ローンを使い2,000万円から2,500万円組んでいるのと変わらないのです。
こう考えると、なかなかのインパクトですよね。
さらに、エネファームを入れると床暖房がお得というような営業トークをしてくる住宅営業マンもいるのですが、全然お得ではありません。
お得に使える場面というのはかなり限定的なのです。
『熱交換』とありますが、要はこれはタンクに入っているお湯の熱が床暖房の熱源になっている不凍液を温め、循環しますよというものなのです。
つまり、タンク内にお湯がなく、中の水が温まっていない時というのは、エネファーム内のエコジョーズが普通に起動して、タンク内の水を温めることで床暖房を起動させているのです。
これは普通にガスを使って床暖房を起動させているだけなので、発電していないのです。
仮に発電していたとしても、またダブルでガスを使うことになります。
全然、お得ではないですよね。 では、床暖房をお得に使うためにはどうしたらいいんだ?という話なのですが、これはかなり限定的な話になります。
先ほどもチラッと説明しましたが、エネファームは大量のお湯を使う時間を逆算して、タンクの中の水を60℃に温めます。
つまりそのお湯をつくっている時間帯に床暖房を使えば、確かに副次的に得られる熱で、お得に床暖房を使えるかもしれません。
しかしこれはほとんどの場合、現実的な時間帯ではないのです。
イメージしやすいようにお伝えをすると、例えば19時の入浴のために、エネファームが17時から起動するとします。
そしたら17時から19時までの間の2時間は、効果効率的に床暖房を使える時間ということになるわけですが、逆をいえば、それ以外の時間に床暖房を使うと、エコジョーズがただただフル稼働しているだけということになるのです。
夕方の時間はバタバタしていることが多く、そもそも家にいないなんて場面も普通にあると思うので、いかにこの仕組みが現実的でないかがわかると思います。
ですので一言でまとめると、エネファームという給湯器は、ガス屋が効果効率的に儲けるための機械であって、仕組みを知らないで導入すると、完全に搾取さる給湯器だということです。
とにかくエネファームは、知れば知るほど怪しい機械ですので、採用することを検討しているなら、諸々慎重に判断するようにしてください。
では一体どのような給湯器がいいんだ?という話だと思うのですが、結論
- オール電化にするならソーラーチャージ機能付きのエコキュート
- ガスと電気の併用をどうしてもしたいならエコワンのハイブリット給湯器
これらになります。
特に最近ではカンタくん需要も多いので、エコワンのハイブリット給湯器160Lがベストな選択肢かなと思います。
ぜひとも覚えておいてください。 また、どうしてもエネファームを入れたいという方は、アイシン製のエネファームであればまだマシなので、そちらを入れることをおすすめします。
床暖房
続いて『床暖房』です。
先ほどのエネファームの話に付随してくるのですが、ガス屋はガスを使ってもらうために「ガス系統の給湯器を入れたら床暖房を40万円分サービスします。」といったキャンペーンをよく行っているのです。
そのキャンペーンに多くの方が釣られてしまうのですが、ハッキリ言います。
ガス屋は40万円分サービスしても儲かるため、そのようなキャンペーンをやっているのです。
ですので、目先の利益に飛びつくと、確実に痛い目をみることになります。 これがどういうことなのかというと、そもそもエネファームなどのガスを使った給湯器を入れる場合、ガス温水式床暖房というのを入れることになります。
このガス温水式床暖房は先ほども説明したとおり、60℃まで上げた温水を使って、床下にそれを流すことで床暖房としているのです。
ただ、ガス温水式床暖房は瞬時に温度が上げられるので、素早く床を温められるというメリットがある反面、ずっと追い焚きをしているような状態でガスが垂れ流しになる都合上、とんでもなくランニングコストがかかるのです。
真冬ですと、光熱費で月5万円いきます。
ですので、ガス温水式床暖房は最悪の床暖房なのです。
そういったこともあり、私は基本的に、ガス温水式床暖房は入れるなと言っているのです。
ただし床暖房にはもう一種類あって、それがヒートポンプ式床暖房です。
こちらは空気を圧縮した時に発生する熱を使って水を温めるので、水温が25℃くらいまでしか上がらず、さらには床暖房が起動するまで時間がかかるというデメリットはあるものの、エアコンと同じで非常に効率的に稼働してくれるのです。
そのためランニングコストがとても安いのです。
しかし先ほどもお伝えしたとおり、水温が低く、起動するのにも時間がかかるので、きちんとヒートポンプ式床暖房を使うための土台を整える必要があります。
こちらは空気を圧縮した時に発生する熱を使って水を温めるので、水温が25℃くらいまでしか上がらず、さらには床暖房が起動するまで時間がかかるというデメリットはあるものの、エアコンと同じで非常に効率的に稼働してくれるのです。
そのためランニングコストがとても安いのです。
しかし先ほどもお伝えしたとおり、水温が低く、起動するのにも時間がかかるので、きちんとヒートポンプ式床暖房を使うための土台を整える必要があります。
では、その土台とはなんなのかというと、それが断熱性能と気密性能になります。
蓄電池
最後に『蓄電池』です。
蓄電池はできれば入れてください。
よく住宅営業マンは「蓄電池の価格が落ち着くまで待ちましょう!その方がお得です。」というような営業トークをしてくるのですが、その考え方自体が古いです。
その理由は2つあります。
- 後付けしようと思うと工事だけで200万円くらいかかる
- リン酸型の蓄電池は30年はもつ
以上の2つになるので、順番に解説していきます。
後付けしようと思うと工事だけで200万円くらいかかる
まず1つ目の『後付けしようと思うと工事だけで200万円くらいかかる』ということに関してですが、これはもうそのままの意味です。
蓄電池を後付けしようとすると、当然、壁を壊して配線を引き直さなければならないので、その分の工事費用として、だいたい200万円くらいかかるのが今の相場です。
さらにそこに蓄電池の値段が追加されるわけですが、だいたい今は蓄電池単体で150万円前後くらいなのです。
つまり蓄電池の価格が下がらず、後付けで蓄電池を入れるとなったら、その時に350万円近く必要になってくるのです。
アホらしいですよね。
また「先行して配線だけやっておこう!」と考える方も多いのですが、こちらに関してはできなくはないのですが、それなりにリスクがあるような状態です。
というのも、蓄電池も毎年グレードアップするので、数年後に出てきた最新の蓄電池がうまくつなげられるかわからないのです。
ですので多くのハウスメーカーは、配線だけやっておくことを拒否します。
これに関してはハウスメーカー側の気持ちもわかるので、仕方ないかなとも思うのですが、こういった理由からも、蓄電池を入れるのであれば、最初から入れてしまった方がいいのです。
リン酸型の蓄電池は30年はもつ
続いて2つ目の『リン酸型の蓄電池は30年はもつ』ということについてです。
そもそも蓄電池は2種類存在します。
三元系の蓄電池
1つ目は、コバルトなどのレアメタルを使ってつくる三元系の蓄電池です。
この電池は電気自動車やスマホにも使われるような電池で、
- 蓄電容量が大きい
- 反応が早くチャージが短時間で済む
といったメリットがあるのです。
ただしデメリットとして、反応が早いため、電池の劣化も早いのです。
例えばスマホの電池は、だいたい1年くらい使うと電池の減りがかなり早くなると思うのですが、要はそれと同じだということです。
リン酸鉄を使った蓄電池
そして2つ目は、リン酸鉄を使った蓄電池です。
こちらの蓄電池は、三元系の蓄電池と比較して
- 反応が遅い
- 蓄電容量が小さいので蓄電池のサイズが大きくなる
- 軽量化できず重い
といったデメリットがあるのですが、反応が遅いこともあって、ゆっくりと使うことができるのです。
そしてこのゆっくりさが住宅用の蓄電池とベストマッチしていて、三元系の蓄電池の倍、だいたい30年近くもつといわれています。
ですので、蓄電池は入れられるのであれば入れた方が圧倒的に得なのです。
住宅営業マンが説明するほど寿命の短いものではありません。
ということで、
- 後付けしようと思うと工事だけで200万円くらいかかる
- リン酸型の蓄電池は30年はもつ
これら2つの理由があって、蓄電池は入れましょうという話でした。
またさらに、蓄電池には特定負荷型と、全負荷型という2種類が存在します。
特定負荷型は『特定』というだけあって、指定した特定の部屋や家電製品のみに電気を供給できる蓄電池です。
災害や台風などで停電が起きても長く電気を利用できるというのが特徴で、停電が起きても長く電気を使い続けたいという方向けの蓄電池です。
一方で全負荷型は『全負荷』というだけあって、家中の電気をカバーできます。
ですので、台風や地震などで停電が起きた際にも、日常生活と変わらず電気を使うことができます。
基本的には全負荷型一択なのですが、例えばこれを知らないで特定負荷型の蓄電池を入れてしまい、その後、全負荷型の蓄電池を入れようと思っても、それは物が違うのでできないわけです。
こういった諸々のこともあるので「なんでもいいから蓄電池を入れればいいや。」ではなく、蓄電池の種類は絶対に気にしてください。
高気密高断熱で性能が高い住宅を建てるポイント10選のまとめ
『高気密高断熱で性能が高い住宅を建てるポイント10選』ということで、これから家づくりを始める方が絶対に知らなければならないポイントを10選を一連の流れでお伝えしました。
- 家づくりの本質とは?
- 建物における頑丈さとは?
- 鉄骨造と木造どっちが良いか?
- 健康でいられる住まいとは?
- 建物の断熱性能
- 窓の断熱性能
- 建物の気密性能
- 建物の換気性能
- 空調設計
- その他重要な設備仕様に対する考え方
ぜひとも参考にしてみてください。
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