今回は『ハウスメーカーの大幅値引きのからくりと価格が高い理由』というテーマでお話をします。
注文住宅を購入する上で、業界の基本構造を把握することはものすごく大切です。
なぜなら、この業界の基本構造を知らないと、ゲームのルールを知らないでサッカーや野球をするようなものだからです。
サッカーや野球は、誰でもなんとなくのルールは知っていると思いますが、きちんとやるとなると、ポジションごとの役割は何なのか、どういう戦略で対戦をしていくものなのかなどをしっかり把握しなければなりません。
注文住宅も全く同じ構造です。

なんとなくわかったようなわからないような状態であっても家づくりはできてしまいますし、ハウスメーカー、工務店、設計事務所選びもできてしまうわけです。
ただ、それですとまぐれで成功することはあっても、確実に成功するのは至難の業です。
なぜなら、この業界は思っているよりも複雑だからです。
そのため、実際によくあることとして、例えばどこかのハウスメーカーと契約した後にネットで家づくりの情報に触れ、自分の家づくりが思っていたのとは違う間違った方向での家づくりになっていたことに気がつく、打ち合わせをしている最中は全く問題ないと思って自信をもって進めていたものの、家が着工した後になってから「え、こんなこともできたの?」「これを知っていたらこんな選択はしなかったのに」と思うことも多いのです。

「そんなこと言って不安を煽ってるだけなんでしょ?」と思う人もいるかもしれませんが、実際これは決して大げさな話ではなく、誰にでもよくあることです。
住宅は基本的に一生に一度の買い物です。
一度建ててしまったらやり変えるのも難しい商材になります。
ですので、後悔のない選択をするためにも、後々になってから「こっちの選択をしておけばよかった」「もう契約していてハウスメーカーや工務店、設計事務所と解約することはできないし、どうしよう」といった思いをしないためにも、ぜひとも業界全体のルールを把握していただき、家づくりの参考にしてもらえればと思います。
ハウスメーカー、工務店、設計事務所の違い
まずは注文住宅業界の全体像を把握するためにも、ハウスメーカー、工務店、設計事務所、これらの違いについて説明します。
多くの方がこの辺の違いについて理解をしていないまま、雰囲気で進めていると思います。
ただ、ここの違いを的確に捉えておかなければ、全然違う地図を渡されて道を進むことになります。
ですので、必ず理解するようにしてください。
ハウスメーカー、工務店、設計事務所を区別するためのポイントは、
- 仕組みで分類する
- 年間着工棟数で分類する
という2つが存在します。
それぞれ順番に説明をしていきます。
仕組みで分類する
そもそもの話として、この業界は基本的に大工さんに業務委託をして家を建ててもらうというのが主流となっています。

なぜなら、業務委託で仕事をお願いした方が固定費がかかりにくいですし、施工エリアを拡大することも簡単にできるからです。
どういうことかというと、例えば小規模でやっている建築会社が正社員で大工を雇おうとします。
その状態で仕事が絶えず入ってくればいいのですが、仕事がない時、大工はすることがなくなります。
固定費が無駄にかかるだけで、会社としては相当な負担になるわけです。
特に企業規模が小さければ小さいほど、その負担は重くのしかかります。
だったら業務委託で安く、その場限りで仕事を発注した方が、建築会社的にはありがたいわけです。
また、企業規模を拡大して建築エリアを広げようと思った時に、当然そのエリアにも大工が必要になります。
具体的に言うと、例えば今まで東京で建築業をしていたけれど、大阪でも同様に建築業をすることになったとします。
冷静に考えればわかるのですが、東京の大工をいちいち大阪まで派遣するなんてやってられません。
大工仕事は1日2日で終わるものではないですし、家をつくるとなると、大体半年はかかります。
その間、東京の大工を大阪に寝泊まりさせるのかといった問題も発生してくるので、東京から大阪に大工を派遣することは、あまりにも非合理的な動き方になってくるわけです。
大阪は大阪で大工が必要になってきます。
そのため、どうしても企業規模の拡大と建築エリアの拡大をすると、そのエリアで活動できる大工を引き入れなければならないのです。
ただ、その引き入れる方法が正社員ですと、拡大していったエリアごとにものすごい量の大工を正社員で雇い続けなければいけなくなります。
そうなると自然と建築会社の負担が増えるので、結局大工に業務委託をして家を建ててもらった方がいいのです。
このような理由から、この業界は、基本的に大工に業務委託をして家を建ててもらうというのが主流になっています。
ただし、このような「大工に業務委託をして家を建ててもらう」という流れは、これから家を建てる側(施主側)にとって、実は致命的なデメリットがあるのです。
それは「施工の質が安定しない」ということです。

というのも、やはり業務委託なので、会社に対する思い入れや、やっている仕事に対しての責任感などが、どうしても希薄になるのです。
また、業務委託という形式である都合上、数をこなした方が当然利益に繋がるわけです。
そのため、数をこなすことが優先となり、余計に施工の質が安定しなくなるのです。
正直、家なんて壁で隠してしまえば中身がどうであろうとわかりません。
これが、大工に業務委託をして家を建ててもらう場合の、施主側の致命的なデメリットです。
このような仕組みの上に成り立っている都合上、全国展開をしている有名なハウスメーカーは「大工に業務委託をして家を建ててもらう」という仕組みになっています。
しかし一方で、企業規模を拡大せずに地域密着でそのエリアに特化した家づくりをやっていて、さらにある程度の会社規模があれば、正社員として自社大工を抱えることができます。

また、仮に業務委託であったとしても、専属のお抱え大工にすることができます。
仕事で業務委託の経験がある人なら理解できると思いますが、いろいろな企業と細々と仕事をするより、大口の取引先がメインで、あとは小さい仕事がポツポツ来るくらいの方が楽ですし自由です。
安定して高い収入を確保しつつ、正社員としてのしがらみもないからです。
それと同じで、大工も技術に見合った、またはそれ以上の報酬がもらえるのであれば、業務委託で専属化するという形になっても悪い条件ではないのです。
こういった専属化の動きの方が会社に対する思い入れも増しますし、やっている仕事に対しての責任感を感じやすくなるので、これから家を建てる施主側からすると、業務委託がデメリットではなくなるわけです。
むしろ、安心して家づくりを進められるわけです。
ただ、どうしても地域密着系になるので、企業的にはマイナーになってしまいます。
このような感じで、業務委託で施工を行っているのか、それとも自社大工もしくは専属の大工を抱えて施工を行っているのかで建設会社のスタンスが変わってくるというのは、ご理解いただけたと思います。
そして世間では、業務委託で家づくりを行っているのが「ハウスメーカー」、自社大工もしくは専属を抱えているのが「工務店」と分類されます。
つまり「仕組みで分類分けされている」ということになるわけです。
そのため、
- 積水ハウス
- 住友林業
- ダイワハウス
- ヘーベルハウス
- パナソニックホームズ
- ミサワホーム
- 三井ホーム
- セキスイハイム
- トヨタホーム
- 一条工務店
- アイ工務店
- 住友不動産ハウジング
- ヒノキヤ住宅
- アキュラホーム
- ウィズダム建築設計
- ヤマト住建
- 三菱地所ホーム

など、仮に会社名に「工務店」という文字が入っていたとしても、これらのハウスメーカーは大工に業務委託をして家づくりを行っているため「ハウスメーカー」という分類になってくるわけです。
一方で、東京のみの展開ですが、小嶋工務店やウェルネストホームなどは、自社大工もしくは専属の大工を抱えているので「工務店」という分類になってきます。

このように
- 業務委託の大工→ハウスメーカー
- 自社大工or専属大工→工務店
といった感じで分類分けをすると、非常にわかりやすくなってきます。
ただし、ここで「ハウスメーカーと工務店は仕組みで分けることができるというのはわかったけれど、設計事務所はどうなの?」という疑問をもたれる方もいるかと思います。
実は、設計事務所には
- 業務委託メインのハウスメーカー系設計事務所
- 自社大工or専属大工を抱えている工務店系設計事務所
の両方が存在します。

ハウスメーカー系の設計事務所は、ただ図面を書くだけのことが多く、最近ではフリーランスの延長などで設計事務所を開いている方も増えています。

ただ、それでしたら、普通にハウスメーカーに頼ってしまった方がいいのではないかと思います。
結局はハウスメーカーと同様の動き方になるだけです。
一方、工務店系の設計事務所、こちらは検討する価値があると思います。
例えば「スムトコ」、「テラジマアーキテクツ」、この辺は工務店系の設計事務所としてかなり有名です。
このように、仕組みで分類分けすることで、ハウスメーカー、工務店、設計事務所、それぞれの違いが明確になってきます。
年間着工棟数で分類する
こちらは複雑な話は抜きで、非常にシンプルです。
あくまで目安にはなるものの、
- 年間10棟前後→設計事務所
- 年間20~100棟未満→工務店
- 年間500棟前後→ビルダー
- 年間1,000棟以上→ハウスメーカー
になります。
こちらに関しては年間の着工棟数で分類しているだけなので、非常にわかりやすいかと思います。
ただ、新しく「ビルダー」という言葉が出てきたので「何だビルダーって?」と思った方もいると思いますが、要は「工務店からハウスメーカーに進化する途中の状態」くらいに思ってもらえるといいと思います。
というのも、設計事務所からハウスメーカーに向かうにつれて、徐々に年間の着工棟数が増えます。
設計事務所の規模が大きくなると工務店になって、工務店の規模が大きくなるとビルダーになって、ビルダーが大きくなるとハウスメーカーになるのです。
もう少しわかりやすくお伝えをすると、
- 設計事務所→市
- 工務店→県
- ビルダー→地方
- ハウスメーカー→全国
というイメージです。
よほど明確な理由がない限り、基本的にどの企業も最終的にはハウスメーカー化していくことになります。
なぜなら、ボリュームディスカウントを取りに行こうとするからです。
ボリュームディスカウント
ボリュームディスカウントというのは、量をつくることで単価を下げようとすることを言います。
例えば、洋服でユニクロやGUも、量をつくることで、質の高いものを安く大量に世に供給できています。

そのイメージと同じで、ものづくりにおいて量をつくることは何よりも重要なのです。
量をつくるから人が動いて、人が動くから工場が動き、単価が下がるのです。
そして、住宅もこの仕組みは同じです。
ただ、この時にあることに気がつくはずです。
本来なら、年間1,000棟以上やっているハウスメーカーが、一番ボリュームディスカウントが効いて、一番安く家を売っているはずです。
しかし、年間7,000棟以上やっている積水ハウスは、建物のみの坪単価で現在155万円~スタートとなっています。

今現在、ハウスメーカーの中で、ぶっちぎりで金額が高いです。
住友林業も積水ハウスと同様で、年間7,000棟以上やっていますが、建物のみの坪単価で現在135万円~くらいとなっています。

同じくダイワハウスやヘーベルハウスも年間で3,000棟以上の建築を行っていますが、住友林業と同じくらいの価格帯となっています。

一方で、なんとなくのイメージで「金額的にハウスメーカーで建てられない人が工務店で家を建てる」といった印象があるかもしれません。
これまたなんとなくですが「ハウスメーカーよりも工務店の方が安い」という印象があると思います。
ただよく考えると、年間で20~100棟未満が工務店です。
かたやハウスメーカーは年間1,000棟以上です。
どう考えてもボリュームディスカウントが効いて、ハウスメーカーの方が安くなるに決まっています。
ではなぜハウスメーカーの方が金額が高いんだというと、要はそれが「ブランド料」と呼ばれるものの正体だからです。
そもそも住宅という商材は、世の中に出ているいろいろな建材の寄せ集めなのです。

そのため、ハウスメーカーであろうと工務店であろうと設計事務所であろうと、どこで家を建てても窓ガラスは大体
- LIXIL
- YKKAP
- 三協アルミ
外壁は、
- LIXIL
- ケイミュー
- ニチハ
屋根材は、
- LIXIL
- ケイミュー
から仕入れることがほとんどです。
となると、仕入れ先が同じなのに価格差が出るわけありません。
この業界は、元々価格差が出にくい業界なのです。
どのハウスメーカー、どの工務店、どの設計事務所であろうと、建物のみの坪単価で90~100万円かかってしまうというのが、今の注文住宅の相場感になってくるわけです。
価格競争
どのように価格競争をやればいいのかというと、方法は2つだけです。
いろいろな制限をかける
1つ目は、いろいろな制限をかけることで、最短最速で家づくりを行い、コストを削るということです。
要は規格住宅などをつくって、最初から形や仕様が決まっているものをベースに家づくりをする方法です。
これであれば打ち合わせ期間を短縮できて、なおかつ為替の影響も受けにくくなるので、その分コストを下げることができるわけです。

ただし当然のことながら、縛りが厳しくなればなるほど安くはなりますが、自由度はなくなります。
そして、その自由度がなくなった最終的に行き着く先というのが、建売になるわけです。

建売に自由度はありません。
しかし安いです。
このように、いろいろな制限をかけることで最短最速で家づくりを行い、コストを削るという方法が1つ目になります。
ボリュームディスカウントを効かせる
2つ目は、ボリュームディスカウントを効かせることです。
住宅業界において価格競争をするのであれば、とにかく量を取りに行かなければなりません。
ただ、本来一番安くできるはずである大手系のハウスメーカー各社は、ボリュームディスカウント分を利益にしています。
もっと言えば、例えば100万円で売られているキッチンを、ボリュームディスカウントで70万円で仕入れることができたとします。

本来でしたら、70万円に少し利益を乗せてお客さんに見積もりを出すわけですが、大手系のハウスメーカーは、通常の100万円の状態で見積もり計上して、さらにそこに30~50%の利益を乗せてお客さんに見積もりを出しているのです。
ですので、最終的に130万円、150万円という価格でお客さんにキッチンの金額を出しています。
それが様々な建材で行われていて、チリツモでものすごい利益になっているわけです。
そのため、月末値引きや決算値引きといった大幅な値引きが可能になっているのです。
普通に考えて「月末値引きです」と言って、300万、500万値引いて企業がもつかと言われたらもちません。
300万、500万値引いても企業がもつだけの利益がまだ残っているわけです。
しかも、大手系のハウスメーカー各社は変にブランド化していたり、いろいろな住宅系インフルエンサーが「ハイブランド、ハイブランド」と言っていたりするのもあり、そういう大幅な値引きを見せられると、本来手の届かなかったはずのハイブランドがお得に手に入ると思ってしまうのです。

大手系ハウスメーカー各社の値引きにやられる人が続出してしまっているわけです。
そんな中、真っ当にボリュームディスカウントを取って、お得な価格帯で住宅を提供しているハウスメーカーがあります。
それがミドルコスト帯のハウスメーカーです。
具体的には、
- アイ工務店
- ヤマダホームズ
- アキュラホーム
- 桧家住宅
- 住友不動産ハウジング

など、このあたりのハウスメーカーです。
これらのハウスメーカーは、大体住宅設備系の会社と協業して「キャンペーン月」というのをつくっています。
例えば1年のうち1月と8月は「キッチンがワンランク無料でグレードアップできるキャンペーン」があったり、食洗機が無料でついてきたり、あとはグレードアップしてMieleが無料で入ったり、そういうキャンペーンがあります。
それに加えて、メーカー独自のものも組み合わさり、大手系ハウスメーカーではできない非常にお得な施策を打ち出しているのです。
おもしろいのはヤマダホームズです。

ヤマダホームズはヤマダデンキがやっているハウスメーカーなのですが、ヤマダデンキという家電量販店の仕入れ数でボリュームディスカウントが取れるのです。
ですので、太陽光、蓄電池、エアコンなど、普通の住宅メーカーでは実現不可能な価格で設備機器を購入できるのです。
これは家電量販店の数があるからこそできる圧倒的なボリュームディスカウントなのです。
ですので、ミドルコスト帯のメーカーは、通常のハウスメーカー選びに加えて
- どこの住宅設備系のメーカーと仲が良いのか
- どんなキャンペーンをいつやっているのか
- メーカー独自のキャンペーンとしてどんなことをやっているのか
大手系ハウスメーカーとは違う角度でのメーカー選びの仕方が入ってきます。
ただ、そういったミドルコスト帯のハウスメーカー各社に年間20~100棟未満の工務店が価格で勝てません。
なぜなら、圧倒的にボリューム不足だからです。
そのため工務店は何をしているのかというと、社長の熱意と使う部材を一極集中させることによって、ハウスメーカーと近しい単価まで価格を下げに行って対抗しているのです。
ただ裏を返せば、使う部材を一極集中させているので、通常使わない部材を使った途端、価格が跳ね上がります。
特注のような扱いとなり、一点ものをつくるのと変わらなくなるからです。
ただ、中にはものすごく優しい企業もあり、例えばシームレス建具で有名なKAMIYAさんは、量が取れなくても工務店には大特価で建具を提供しています。
そのような感じで、工務店は工務店で必死になって価格の調整をしつつ、ハウスメーカーよりも質の高いものをつくろうとしているのです。
ただ、使う部材を一極集中させていることもあり、
- デザインに偏りがある
- 建売のようなデザインの家しかつくれない
といった課題があるのも事実です。
また、ハウスメーカーと違ってたくさんの設計士を抱えているわけではないので、外注設計を使っていることが多いというのも工務店の弱点です。
ですので、余計にデザイン性に統一感がないのです。
そして、これまでお話してきたボリュームディスカウントと全く関係ない世界線で生きているのが設計事務所です。
そもそも設計事務所は年間で10棟前後しかやらず、さらには素材からこだわって全てを1からつくります。
ですので、建物のみの坪単価で200万円以上の物件ばかりつくっているのです。

関東で抜群に評価の高い設計事務所である「スムトコ」や「テラジマアーキテクツ」など、この辺がまさにそれでして、これらの設計事務所は超富裕層しか相手にしません。

そのため、ボリュームディスカウントとは無縁の存在なのですが、やはり規模を大きくしようと思うと、富裕層ばかりを相手にはしていられないので、数を取るためにある程度の所得の人たちをターゲットにする必要が出てきます。
その規模が大きくなってくると、設計事務所から工務店に、工務店からビルダーに、ビルダーからハウスメーカーにといった感じで進化をしていくわけです。
ちなみにビルダーに関しては、立ち位置が一番中途半端な状態です。
工務店の機能もありながらハウスメーカーとしての機能もある、非常に不安定で仕組みを紐解くといろいろなボロも出てきやすい企業規模なので、検討する際は注意が必要です。
ハウスメーカーの大幅値引きのからくり
各メーカーの大まかな特徴を掘り下げてお話をします。
ハウスメーカーの特徴
まずはハウスメーカーについてです。
今現在、注文住宅の相場である、建物のみの坪単価で90~100万円、ここを基準にして、建物のみの坪単価90~100万円以上のハウスメーカーを「ハイコスト系ハウスメーカー」、建物のみの坪単価90~100万円未満のハウスメーカーを「ミドルコスト系ハウスメーカー」と定義して、それぞれの特徴を説明していきます。
ハイコスト系ハウスメーカー
建物のみの坪単価で90~100万円以上のハイコスト系ハウスメーカーについてです。
この辺の価格帯のハウスメーカーは、誰もが一度は聞いたことがある超有名大手のハウスメーカーであることが多く、具体的には
- 積水ハウス
- 住友林業
- ダイワハウス
- パナソニックホームズ
- セキスイハイム
- 三井ホーム
- ミサワホーム
- トヨタホーム
これらの戦後に発足したハウスメーカーが該当してきます。
戦後系の大手ハウスメーカーは、ボリュームディスカウントをあまり効かせていないことが多く、ディスカウント分が利益になっているケースが結構多いです。
また、ディスカウント前の通常価格に対して30~50%の利益が乗っているケースも結構あり、それでいて質に関してもミドルコスト帯のハウスメーカーと変わらない、もしくはミドルコスト帯のハウスメーカーに劣るケースも出てきていて、全体的に割高感が目立ってきているというのが最近の傾向です。
このようなこともあって、新興系のハウスメーカーである一条工務店が今現在日本で一番売れているハウスメーカーとなっています。

また直近では、積水ハウスや住友林業を抜いて、アイ工務店が全国2位のポジションになるまで成長してきており、おそらくこのまま行くと、近いうちに全国2位のハウスメーカーとしてアイ工務店が堂々と君臨することになるかと思います。

戦後系の大手ハウスメーカーはよくないのかと言われれば、もちろんそんなことはありません。
価格が高い分、最初から設計士が出てきて間取りを描いてくれますし、間取りの提案力やパースなどのプレゼンのクオリティも、戦後系大手ハウスメーカーの方が圧倒的に上です。
戦後系の大手ハウスメーカーは一応ブランド力がありますし、「有名どころのハウスメーカーで建てた」というトロフィー感もあり、気持ちが満たされるというところもあるかと思います。
また、契約後の打ち合わせの回数制限もないので、心ゆくまでじっくりと打ち合わせを重ねることが可能で、所得の高い方が好んで戦後系の大手ハウスメーカーを選ぶということもあり、高額提案慣れしているというのも特徴です。
これは非常に重要なことで、日頃3,000万円の家しか売っていない営業マンは、3,000万円というキャパの中でしか考えられないのと、3,000万円の価値観しか持ち合わせていないので、急に建物のみの金額で6,000万円、1億円の提案はできないのです。

特に建物のみの価格で3億円を超えてくると、提案するもののレベルが一気に上がる傾向にあります。
この辺は経験がものを言う世界になってくるので、やはり所得が高めの人は、元々価格設定が高めで、高額提案慣れしている戦後系大手ハウスメーカーを選んだ方が、何かとストレスはないような気がします。
質に関しては、戦後系の大手のハウスメーカーとミドルコスト帯のハウスメーカーを比較しても変わらない、もしくはミドルコスト帯のハウスメーカーの方が勝っているケースも出てきているというのは事実ですが、お金さえかけてカスタマイズをすれば、ミドルコスト帯のハウスメーカーと似たような性能、もしくはそれ以上の性能まで引き上げることも十分に可能です。
何にせよ、戦後系の大手ハウスメーカーは割高傾向ではあるものの、
- 最初から設計士が間取りを描いてくれる
- 間取りの提案力やパースプレゼンが高クオリティ
- 契約後の打ち合わせの回数制限がない
- 営業マンが高額提案慣れしている
- お金さえあれば性能のカスタマイズができるメーカーもある
といった特徴があります。
そしてそれとは別のハイコスト系ハウスメーカーとして、三菱地所ホームやベルクハウスといったハウスメーカーがあります。

これらのメーカーは、完全に高額案件に特化したようなハウスメーカーで、芸能人やスポーツ選手など、有名人がこぞって建築するメーカーとなっています。
これらのメーカーは割高という感じではなく、ただただ高額提案ばかりしているようなハウスメーカーなので、戦後系の大手ハウスメーカーとは根本から違います。
実際に住宅メーカーで
- Minotti
- B&B Itali
- Poltrona Frau
- Poliform
- FLEXFORM
など、超高級家具、超高級キッチンを提案しているのは三菱地所ホームやベルクハウスくらいです。
この領域では、さすがの積水ハウスも住友林業も手も足も出ません。
三菱地所ホームやベルクハウスの独壇場といった感じです。
また別枠として、メインはミドルコスト帯なのですが、高所得者をターゲットにした商品を別枠で用意しているハウスメーカーも存在します。
例えば
- AQレジデンス(アキュラホーム)
- 小堀住研(ヤマダホームズ)
などがそれに該当してきます。
AQレジデンスは完全に積水ハウスや住友林業のパイを取りにきている商品で、小堀住研は積水ハウスや住友林業以上、三菱地所ホームやベルクハウス未満くらいの層の提案が多いイメージです。
このように建物のみの坪単価で90~100万円以上のハイコスト系ハウスメーカーの中でも、戦後系の大手ハウスメーカーもあれば、

純粋に富裕層のみに向けて商品展開をしているハウスメーカーもありますし、

メインはミドルコスト帯なのだけれど、高所得者をターゲットにした商品を別枠で用意しているハウスメーカーもあります。

そのため、自分たちはどこのハウスメーカーが適しているのか、冷静に考えた上で判断することをおすすめします。
ミドルコスト系ハウスメーカー
建物のみの坪単価で90~100万円未満のミドルコスト系ハウスメーカーについてです。
具体的には
- 一条工務店
- アイ工務店
- 桧家住宅
- ヤマダホームズ
- アキュラホーム
- 住友不動産ハウジング
- ヤマト住建

などのメーカーになります。
この辺のハウスメーカーは
- 自社商品の開発に力を入れている
- ボリュームディスカウントを効かせている
- 住宅設備系メーカーとのコラボキャンペーンを行っている
- 建物のスペックは戦後系大手ハウスメーカーと差はない、むしろ高い傾向にある
といった特徴があります。
自社商品の開発に力を入れている
例えば一条工務店はフィリピンに自社工場をもっていて、そこで全ての建材を自社でつくっているのです。

ですので、中間マージンが発生せず、圧倒的な価格の安さで高品質な住宅を世に供給できているわけです。
一条工務店は完全に住宅版ユニクロになっている状況です。
桧家住宅も断熱材や全館空調を自社でつくっているので、それもあって他よりも価格を安く提供できる仕組みが整っています。

ボリュームディスカウントを効かせている
ボリュームディスカウントについてですが、実はどこのハウスメーカーも仲のいい住宅設備メーカーというのがあり、そこの商品を標準仕様にしようとしていることが多いです。
そうすることで1つ、あるいは複数のメーカーにのみ数を集中させて、より単価を下げる工夫をしているのです。
ですので、ミドルコスト帯か、もしくはそれ以下の価格のハウスメーカーになればなるほど「標準仕様」という概念が色濃く登場してきます。
また、ボリュームディスカウントという概念を意識すると、そのハウスメーカーが行っていることの裏側がなんとなく予想がつくようになります。
どういうことかというと、例えばヤマダホームズは家電量販店が親会社です。

ですので、家電量販店から出る数込みで国内外の工場に対して価格交渉が可能になるのです。
普通に考えて、ものすごく強いです。
あとは住友不動産に関しては、マンションをやっています。

だからこそ数が取れるのです。
ただしヤマダホームズと違って、一部の部材に対して継続的な発注にならないというのが弱点かもしれません。
というのも、マンションによって使う内装材も設備仕様も全然違います。
そのため、まとまった数になりにくく、しかも継続的な発注というよりかは瞬間風速的にしかならないというのがあるわけです。
ですので、安定的に安く入れられる建材や設備仕様は、実は限られているのです。
それもあって、住友不動産ハウジングは自社オリジナルの内装材をつくり、それを安く販売しています。
マンションでボリュームディスカウントを効かせて安く内装材を仕入れてお客さんに提供しているという側面ももちろんあるにはあるのですが、どちらかというと、安定供給という意味で自社オリジナルのものをつくり、そちらで安く建築部材をお客さんに提供しているという側面が強いような気がします。
ただ何にせよ、他のハウスメーカーよりも安く入れられるのは間違いないので、お得ではあります。
このような感じで、ボリュームディスカウントという概念を意識すると、そのハウスメーカーが行っていることの裏側がなんとなく予想がつきます。
住宅設備系メーカーとのコラボキャンペーンを行っている
住宅設備系メーカーとコラボしてキャンペーンを行っているというのは、先ほども説明したので説明は割愛します。
建物のスペックは戦後系大手ハウスメーカーと差はない、むしろ高い傾向にある
そもそもの話として、日本の経済を背負っている名だたる有名企業が、ミドルコスト帯のあまり名前が知られていないメーカーの家より劣っているなんてことあるの?と思っている方も多いと思いますが、明確に劣ってきています。
なぜなら、戦後系の大手のハウスメーカー各社は、型式適合認定というものを取得していて、これがあることを理由に身動きを取らなかったからです。
具体的に説明をすると、そもそもハウスメーカーという業態は、戦後家のなかった時代に、同じ質の家を大量生産するという名目でできた企業です。

ただし、本来住宅は大量生産に向かない商材なのです。
家づくりは、その土地の大きさや法規制に合わせて間取りをつくって、お客さんと打ち合わせを重ねます。
ようやく間取りが決まったら、今度は構造計算をして役所に申請し、役所から受理されたらようやく着工になるわけですが、そこから家が完成するまでに大体1年くらいかかります。
つまり手間と時間と労力とお金がかかるのが住宅という商材であって、大量生産向きではないわけです。
ただし戦後ということもあったので、国は型式適合認定という制度をつくりました。
この制度は、国が認めた構造躯体であれば、構造計算などの一部の申請手順を省くことができるという制度です。
これを活用することで、戦後系の大手ハウスメーカー各社は、住宅の量産化に成功しました。
ただし、この型式適合認定という制度は、その時認められた構造躯体であれば申請手順を省いてもいいですよという枕言葉がつくのです。
つまり建物のグレードアップをしようと思ったら、型式適合認定の再取得が必要になるのですが、それには膨大な資料や根拠が必要になるので、実験にかかる費用や人的リソース、さらには社内の生産ラインの変更からマニュアルの作り直しなどなど、とにかくとんでもない労力が必要になってきます。
ですので、戦後系の大手ハウスメーカー各社は、基本的に型式適合認定の再取得はしたくないのです。
こういった背景があり、戦後系大手ハウスメーカーのスペックは止まったままになってしまったのです。
そしてその間に新興系のハウスメーカーがどんどん出てきて、今や一条工務店やアイ工務店に負けてしまう、そんな時代になったのです。
特にアイ工務店が全国2位のポジションになってきているのは大事でして、それがなぜかというと、戦後系の大手ハウスメーカーのような特殊な構造躯体は必要なく、普通の軸組工法でも世の中の人は十分満足してくれるということを証明してしまったからです。
今まで戦後系の大手ハウスメーカーは、オリジナルの構法のシャーウッド構法、

ビッグフレーム構法、

グランウッド構法、

木質パネル接着構法、MOCX THERMO構法というように、自分たちのオリジナルの構法こそが最強で、だからこそ地震に強いという話をしていたわけですが、アイ工務店は言ってしまえば、どこの工務店でもつくることができる普通の軸組工法で、特殊性はないのです。

それが全国2位になってしまったわけなので、これまで戦後系の大手ハウスメーカーが一生懸命訴求してきたことは何だったのか、根底から覆された大事件、時代の変革期が今まさに起きたのです。
それでもいまだにかたくなに動かない戦後系の大手ハウスメーカーもあります。
一方で、動きは遅くても頑張っている戦後系の大手ハウスメーカーもあり、ダイワハウスは本社の人たちはすごく頑張っていますし、

セキスイハイムも断熱等級7の商品を出すなど時代に追従すべく頑張っています。

ただ、住宅市場全体を俯瞰して分析をすると、やや辛辣に語らざるを得ない状況となってきています。
そのような状況なので、正直な話、戦後系大手ハウスメーカーもミドルコスト系のハウスメーカーも性能に大きな差はなく、場合によってはミドルコスト系のハウスメーカーの方が性能がいいという時代に突入してきています。
ミドルコスト系ハウスメーカーの弱点
もちろん、ミドルコスト系ハウスメーカーにも弱点はあります。
具体的に言うと、
- 営業マンが間取りをつくることが多い
- 設計士の間取りの提案力が弱い傾向にある
- 打ち合わせの回数制限がある場合がある
- 高価格帯の提案ができない
- 営業マンが安売りマインドになっている
- 標準仕様以外を使うと結局高額になる
これらが弱点になります。
ミドルコスト系ハウスメーカーは、なるべく価格を抑える想定で仕組みをつくっているので、どうしても効率重視、コストパフォーマンス重視の家になりがちなのです。
そのため、じっくりゆっくり打ち合わせをして家のクオリティを高めようと思ってもなかなかうまくいかないということもありますし、せっかく一点集中でボリュームディスカウントを取るために標準仕様を決めているのに、それ以外のものばかりを選んでいたら、金額も大手並みに高くなってきてしまいます。
やっていることが設計事務所と変わらなくなってきます。
そんなことをするなら「結局大手の方がよかった」「設計事務所でもいいんじゃない?」となってしまうわけです。
ミドルコスト系ハウスメーカーは、決められた範囲内で動くからお得になるのです。
これを忘れてはいけません。
事実営業マンのお金に対するキャパの問題で、普段から販売している価格以上の家の販売、提案というのは難しいですし、自分のキャパを超えた金額になってくると、必ずどこかで金額を下げたくなるという病を発症します。
当たり前ですが、3,000万円の家と3億円の家では同じ家でも全然違うものです。
ですので、ミドルコスト系ハウスメーカーにも弱点はあり、やはり仕組み的に高所得者向きではありません。
これらはミドルコスト系ハウスメーカーで絶対に知っておかなければならない弱点なので、是非覚えておいてください。
工務店の特徴
工務店は、設計事務所のように超高単価の家だけをやっていくという以外、基本はボリュームディスカウントを取れるように仕様を調整し、価格を下げる交渉を行い、家づくりを行っていきます。
というのも、工務店も建築部材の仕入れ先はハウスメーカーと一緒です。
そのた、家を建てるとなったら、建物のみの坪単価で90~100万円はしてしまうわけです。
これは相場なので仕方ありません。
ここから価格を下げようと思ったら、ハウスメーカーと同様に、規格住宅のような形で手間を短縮した分価格を下げる、もしくは仕様を極限まで絞って標準仕様を設定し、単価を下げるという方法しかないのです。
工務店であっても普段やらないようなことをすると、建物のみの坪単価で130~150万円、170万円までいってしまいます。
そうなると「工務店で建てる意味ないじゃん!」「大手ハウスメーカーの方がいいんじゃない?」となってくると思います。
ただ、 実は工務店の方が、ハウスメーカー各社が使っている構造材よりも圧倒的に質がいいものを使っている傾向にあります。
つまりは、工務店で建物のみの坪単価で130~150万円、170万円になったとしても、ハウスメーカーと比較した時に圧倒的に質がいい構造材を使っているので、価格相応のきちんとした質の高い家になっていることが多いです。
イメージしてみてください。
例えば、金属の金、ゴールドはなぜ価値があるのかというと、数が少ないからです。

一方で、同じ金属のアルミがありますが、これの希少価値は高くありません。
むしろ低いです。
なぜアルミの希少価値が低いのかというと、量がたくさんあるからです。
それを前提に、量を供給するとなったらアルミを選びます。
金は限られた人の手元にしか来ません。
木材もアルミと同じで、希少価値が低いですし、素材の質自体の品質もある程度は担保されてはいますが、ものすごくいいというわけではありません。

一方で、金のような木材は希少性が高くて素材自体の質も高いのです。
ここにハウスメーカーと工務店の大きな違いがあり、元々の住宅着工棟数が少ない工務店だからこそ、つまりは金のような希少な構造材を使って家づくりができるのです。
もちろん全ての工務店が構造材にこだわっているわけではないので、そこは注意が必要です。
工務店の中にもハウスメーカーと価格競争をするためにゴリゴリ仕様を下げて販売しているところもあります。
構造材にこだわりがない工務店はハウスメーカーもどきだと思うので、検討する価値は正直ないと思います。
ハウスメーカーと同じことをしているのであれば、ハウスメーカーで家を建てた方がボリュームディスカウントが効いて安いですし、規模的にも安心です。
「構造材にこだわったからって何が変わるの?」「結局壁の中に入っているわけだから、わからないじゃん」と思われる人もいると思います。

構造材にこだわることで一体どのような影響があるのかというと、実は巡り巡って建物の性能にいろいろな影響を及ぼしてくるのです。
この辺りの話を詳しく説明をしてしまうと話がどんどん脱線していくので、別の機会に詳しく説明をしようと思います。
とにかく工務店も、建築部材の仕入れ先はハウスメーカーと一緒です。
そのため、家を建てるとなったら、建物のみの坪単価で90~100万円はかかってしまいます。
そこから価格を下げようと思ったら、ハウスメーカーと同様に、規格住宅のような形で手間を短縮した分価格を下げる、もしくは仕様を極限まで絞って標準仕様を設定し単価を下げるしか方法はありません。
逆に工務店が普段やらないような仕様を入れると一点もの扱いになり、建物のみの坪単価で130~170万円という金額も普通に出てくるということは覚えておいてください。
そしてハウスメーカーと工務店との大きな違いは構造材の質で、ここにこそ工務店の価値があるという話でした。
設計事務所の特徴
設計事務所は特に仕組みなどはなく、全てが一点もの、お金があれば全て解決という感じになります。
特に複雑な説明もないので、設計事務所はそういうものだと思ってください。
ハウスメーカーの大幅値引きのからくりと価格が高い理由のまとめ
今回は『ハウスメーカーの大幅値引きのからくりと価格が高い理由』というテーマで、業界の全体像を構造的にお話しました。
ハウスメーカー、工務店、設計事務所を区別し、それぞれの特徴を把握できれば、ハウスメーカーの大幅値引きのからくり、そして価格が高い理由が理解できると思います。
家づくりで後悔しないために、今回解説したことはあらかじめ知っておいてください。
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